光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

街なかで楽しむ天体観望

「星を見るには暗い空が何より重要」とはよく言われます。新月期の週末になるたびに機材を車に満載して、光害の少ない山奥へ天体観測や写真を撮りに行くという人も少なくないですし、さらに熱心なマニアになると、より暗い空を求めて海外遠征まで……。

しかし、そこそこ近郊に暗い空がある人ならともかく、東京都心のようなところに住んでいると遠征だけで一苦労。かなりの気合いが必要になって、せっかくの機材の稼働率が低下しがちになります。稼働率が低ければいつまでたっても使い方に慣れませんし、そのうち面倒になって、機材一式、押入れの奥へ……なんてことになりかねません。

第一、だれもが車を持っているわけでもなければ、毎度遠征する余裕があるわけでもないですしね。

そこで、都会の住人なりに、星空の楽しみ方を見つけましょう。光害がひどくても楽しめる天体は意外とあるのです。

街なかで天体観望する場合、最も邪魔になるのが街灯をはじめとする周囲の明かりです。暗い天体を見たり、惑星の淡い模様を捉えるには目を暗闇に慣らす必要があるのですが、こうした明かりが目に入ると、目がいつまでたっても暗闇に慣れません。

なるべく光源の少ないところを選べればいいですが、難しいようなら明かりを遮る工夫をしましょう。てっとり早いのは、遮光性のある布を頭からすっぽりかぶってしまうことです。写真の分野で使われる「冠布」や、ホームシアター向けに販売されている遮光布が役に立つでしょう。

ハイミロン
遮光布の例
暗幕用の素材などとして販売されている「ハイミロン」という起毛生地です。ハイミロンにもいくつか種類がありますが、これは遮光性のあるタイプで、これを頭からかぶれば外からの光はほぼ完全にシャットアウトできます。1メートルあたり千数百円で買えるので、コストパフォーマンスも抜群です。

まずは何と言っても、定番の「月」です。月は初心者向けの小望遠鏡でもよく見えますし、光害も関係ないので都会で見るにはうってつけです。

「お月見」といえば満月ですが、初めて月を望遠鏡で見る場合、まずは欠けている時……できれば半月くらいの時を狙ってください。満月のときは真正面から光が当たっているため、地形の影ができず、クレータなどがほとんど見えなくなってしまうからです。

逆に、半月くらいの時に欠け際を望遠鏡で見ると、たくさんのクレーターに山や谷…あまりの光景に絶句すること間違いなしです。倍率を上げてみれば、宇宙船から月面を眺めているような気分にさえなるでしょう。

ただ、倍率を上げると、像が川底の石みたいにユラユラ揺れるのが気になる場合もあると思います。これは上空の大気の揺らぎのためで、地上から観測している限り避けられないものです。特に冬場、からっ風が吹いて星が激しく瞬いているような時は最悪で、いくら空気が澄んでいても月の観望には向きません。逆に、夏の太平洋高気圧に広く覆われた時などは気流が落ち着いていて、時にハッとするような光景を見せてくれることもあります(ただ、夏場の宵のうちなどは、昼間に熱せられた建物や道路から立ち上る熱気のため、気圧配置の割に気流が悪いことがしばしばあります)。

シーイングによる月面のゆらぎ
冬場に撮影した月面です。冬にしては比較的マシなシーイングで、このくらい揺らいで見えることは季節によらずしばしばあります。

同じことは月の高度についても言えます。月の高度が低いときは、高いときに比べて光がより長く大気の中を通過してくることになるため、大気の揺らぎの影響を受けやすくなります。

なお、月の満ち具合や望遠鏡の口径、倍率によっては、月がまぶしく感じられることがあります。その場合は、アイピースに取り付ける「ムーングラス」を使うとよいでしょう。光を弱め、見やすくしてくれます。

月の地形は起伏が多く、ぼんやり見ていても飽きないものですが、クレーターなどの名前を知っているとより深く楽しむことができます。地名が書かれているものとしては月面図がありますが、ほかにも写真付きで地形や月の名所をを紹介している本などもあるので、揃えておくとよいでしょう。

惑星

望遠鏡で何を見たいか聞いたとき、真っ先に挙がるものの1つが土星の輪でしょう。この土星をはじめとした惑星も、都会で観測するのに向いた天体です。なにしろ、天王星以遠の惑星を除けば、明るさ的には都心でも楽に肉眼で見える天体ですから。

惑星の場合も、月を見る場合と同様……あるいはそれ以上に気流の状態が大事です。高度もなるべく高くなった時を狙いましょう。

ただ、注意すべき点が1つだけ。天体望遠鏡を使うと、探査機から見たような惑星の姿が視野いっぱいに広がると思っている人が意外と多いのですが、個人が持つような望遠鏡では、そんなに大きくは見えません。

倍率100倍で惑星を見た時のイメージ
円は見かけ視界50度のアイピースを用いた時の視野を表しています。月はこの円とほぼ同じ大きさなので、それと比べると惑星がいかに小さいか分かるでしょう。

でもがっかりすることはありません。小さいながらも土星の輪や木星の表面の模様は小望遠鏡でもしっかり見えますし、衛星が日々位置を変えるのも分かります。目が鍛えられてくれば火星表面の淡い模様なども分かるようになってくるでしょう。大切なのは腰を据えてじっくりと、またできるだけ何度も観察することです。そのうち、最初は分からなかったような模様が判別できるようになってきます。

土星

土星

小望遠鏡で輪が見える唯一の惑星である土星は、最も人気のある天体の1つでしょう。望遠鏡を初めて手に入れた時、もし土星が昇っているシーズンであればぜひ真っ先に見てみてください。そのインパクトのある姿が目の前にあることに感動を覚えるはずです。

輪の存在は口径数cm、数十倍の倍率でも確認できますが、口径10cm以上になってくると輪が溝を隔てて分かれている様子など、その詳細が見えてきます。なお、土星は約26.7度傾いた状態を保ったまま太陽の周りを回っているため、地球から見える環の傾きは年によって異なり、土星をあるときは上から、またあるときは下から眺めることになります。そして、そのちょうど境目の時期に地球は土星を真横から見ることになり、土星の環が見えなくなるという現象が起こります。土星は太陽の周りを約30年かけて一周するので、環の消失が起こるのは約15年に1度ということになります。環のない土星というのはなんとも締まらないものですが、珍しい現象ではあるので注目してみてください。次に環の消失が起こるのは2024年になります。

土星の公転と環の傾き
土星の公転と環の傾き
土星は約26.7度傾いた状態のまま太陽の周りを回っているので、地球がどちら側から土星を見ているかによって環の傾きが変化します。

土星の本体には縞模様がありますが、後述の木星のものと違ってかなり淡く、大きめの口径の望遠鏡を使っても慣れてこないと見づらいかもしれません。

木星

木星

太陽系最大の惑星だけに見掛けの大きさも大きく、小望遠鏡でも観察しやすい対象です。口径6cm程度でも、本体の2本の縞ははっきり分かるはず。また、木星の「トレードマーク」ともいえる大赤斑も、タイミングが合えば興味深く眺められるはずです。「タイミング」と書いたのは、木星が約10時間という短い時間で自転しているためで、時間帯によっては大赤斑は裏側に回ってしまって見ることができません。逆に言えばそれだけ模様の変化が速く、時間をおいて注意深く見ると模様が変化しているのが分かります。

また、大赤斑の色や大きさ、縞の色、太さなども常に変化しているので、日常的に観察し続けていると、そうした変化に気づけるかもしれません。

さらに、木星には「ガリレオ衛星」と呼ばれる特に明るい4つの衛星があって、小望遠鏡どころか双眼鏡でもその存在を確認できます。これの動きを追いかけるのも面白いもの。うまくすれば、衛星が木星に影を落としたり、逆に木星の陰に衛星が入ったり…といった光景を見ることができます。毎年の衛星の食の予報は「天文年鑑」に掲載されているので、興味のある方は参照してみてください。

火星

火星

不気味なほどに赤く輝く火星は、昔から「運河がある」とか「火星人がいる」とか言われて熱心な観測の対象となってきました。しかし火星の見掛けの大きさが小さいため、人気がある割に観測は意外と厄介です。

火星は約2年2か月ごとに地球に接近するので、このときが観測のチャンスなのですが、火星の軌道はかなりつぶれた楕円のため、軌道のどこで地球と接近したかによって地球との距離が大きく変わります。いわゆる「大接近」と呼ばれるような接近の時は地球に5600万km程度まで近づくのに対し、「小接近」では1億km以上も離れていて、見掛けの大きさは2倍ほども違います。

地球と火星の軌道
地球と火星の軌道
火星の軌道は大きくひしゃげていて、そのため接近時の距離が2倍近くも変動します。下は、各接近時の火星の見かけの大きさを同じスケールで比べたものですが、火星との距離によってかなり見かけの大きさが変わるのが分かります。

ちなみに、大接近の時の火星の見掛けの大きさは木星の半分程度。そう言われてしまうと、「大接近」といってもかなり小さく感じますが、単位面積当たりの明るさが明るいため、かなり高倍率がかけられます。大接近が起こるのは火星が夏場に接近する場合で、この時期は気流が落ち着いていることが多いですから、思い切って口径(mm)の2倍以上の倍率をかけてしまってもいいかもしれません。

しかし、火星の模様は淡いため、目が慣れてこないと意外と分かりづらいものです。大接近の頃であれば、理屈の上では口径6cm程度の望遠鏡でも極冠や大きな模様の存在は分かるはずなのですが、初めて見る人にはまったく分からない、などということがよくあります。こうしたことを補う意味でも、できるだけ大口径の望遠鏡を使いたいところです。

火星の自転周期は地球の自転周期と近いため、同じような時間帯に観測すると火星の同じ面ばかり見ることになります。火星には濃い模様のある面と、目立つ模様の少ない面とがあるので、模様がよく見えないという場合、もしかすると模様の少ない面を見ているのかもしれません。その場合は観測する時間帯を少しずらしてみましょう。火星の自転の様子は「ステラナビゲータ」のようなプラネタリウムソフトで確認することができます。

なお、ときには火星の表面で大規模な砂嵐が発生することがあり、そのようなときには表面の模様の様子が全く変わってしまったり、ひどい時には模様らしい模様がほとんど見えなくなってしまうこともあります。観測に慣れていないと、砂嵐なのか、それとも単に自分が見慣れていないために模様が見えないのかの区別がつけづらいですが、大規模な砂嵐が発生した時には大抵ネット上に情報が上がっていますので、そうした情報も参考にするといいでしょう。

金星

金星

「明けの明星」、「宵の明星」として知られる金星は、全天で最も明るい星です。金星は地球より内側を回っているため、太陽からあまり離れることはなく、明け方の東の空か夕方の西の空にしか見えません。

地球よりも太陽の内側にある水星や金星は地球からの見かけ上、太陽からある角度以上離れることはありません。その最大値を「最大離角」といい、太陽の東側にもっとも離れる「東方最大離角」と西側にもっとも離れる「西方最大離角」とがあります。最大離角の前後はその惑星がもっとも太陽から離れているため、高度が高くなり観望好機となります。

下の図は、下側が地球と金星の軌道を上から眺めたもの、上側がそれぞれの位置での地球からの見え方を示したものですが、最大離角の時の地球と惑星の位置関係、そして地球からの見え方がよく分かると思います。なお、「太陽-金星-地球」の順に並んだときが「内合」で、「金星-太陽-地球」の順に並んだときが「外合」です。そして、最も明るく輝く「最大光輝」は内合前後の36日頃に訪れます。

地球・太陽と金星の位置関係
地球・太陽と金星の位置関係
地球の内側を回る水星と金星は「内惑星」と呼ばれます。これらの惑星は地球から見た時、太陽から一定以上離れることはありません。また、公転に伴い満ち欠けする一方、地球との距離も大きく変化するので、明るさや見かけの大きさが大きく変動します。

金星は表面が厚い雲で覆われているため、望遠鏡でも模様はほとんど見えません。しかしその代わり、公転に伴って見かけの大きさが変わる上、月の満ち欠けのように比較的短期間で形が変化します。これを連続的に追いかけるのも面白いでしょう。

水星

水星
東方最大離角の頃の水星
印の交点に見えるのが水星です。日没後約1時間のこの時点で、高度は10度以下になっています。2016年4月17日撮影

太陽に最も近い軌道をまわる惑星です。常に太陽のすぐそばにいるため、最も太陽から離れた場合でも日出時・日没時の高度が27度を上回ることはなく、しかも公転速度が速いために観望チャンスは長続きしません。さらに、低空までの見晴らしの良さが必要なため、都会だとビルの屋上や河川敷でないと位置を確認することすら難しいかもしれません。こうしたことから、水星を見たことがない、という天文ファンも少なくありません。

水星は太陽系中最小の惑星(月の1.5倍ほどの直径しかありません)で、見掛けの大きさも極小。加えて、常に低空にあって気流の影響を受けやすいこともあり、模様を確認することは極めて困難です。それでも、見かけ上太陽から最も離れる「最大離角」の前後であれば、欠けた姿を確認することはできます。

天王星・海王星

天王星・海王星
左:天王星 右:海王星

太陽系の外縁部を回るこれらの惑星は、地球からの距離があまりに遠いため、模様などを確認するのはほぼ不可能といっていいでしょう。明るさも暗く(天王星:約5.7等 海王星:約7.8等)、望遠鏡で見るためには星図や自動導入装置の助けが必要です。しかし、高倍率をかければ恒星とは違った青緑色の円盤像が確認できます。まるで翡翠のようで、思いのほか美しいものです。

太陽

唯一、昼間に観望できる天体です。これなら光害も何も関係ありません。

ただ、太陽の光はあまりに強烈なので、どうやって減衰させるかが問題です。うっかりそのまま望遠鏡を向けようものなら、瞬時に文字通りの「目玉焼き」が出来上がってしまいます。

昔は、望遠鏡の口径を3cm程度にまで絞ったうえでアイピースに減光フィルター(サングラス)を装着するか、「サンプリズム」(サンダイアゴナルプリズム、ハーシェルプリズムとも)という光の90%以上を望遠鏡の外に逃がす部品とサングラスを併用する方法がポピュラーでした。しかし、これらの方法だと対物レンズで集められた太陽の熱で減光フィルターが割れる危険があり、今ではほとんど使われなくなりました。もしこれらの装置を何かの機会で入手したとしても、絶対に使わないでください。

サンプリズムとサングラス
サンプリズムとサングラス
サンプリズム(左)はガラスの表面反射を利用した装置で、アイピース側にはプリズム表面で反射した光のみが届き、残りの99%以上は背面の開口部から鏡筒外に出されます。さらにアイピースにはサングラス(右)という濃色のガラスフィルターを装着して減光します。サングラスが熱で割れる危険性があること、サンプリズムによって外に排出された太陽光が事故を引き起こしかねないことから、現在ではまず使用されません。

現在主流なのは、望遠鏡の筒先に減光用の金属蒸着フィルターを装着する方法です。この方法なら、太陽光が望遠鏡に入る前に減衰されるため、かなり安全に観察できます。このほか、多人数で観測する場合は太陽投影板を使用するのもおすすめです。

なお、太陽を観察する場合は、望遠鏡のファインダーについても手当てが必要です。望遠鏡本体と同様にフィルターをかけるか、キャップをしておくか、完全に取り外すかしてしまいましょう。つい忘れがちですが、ファインダーも「屈折望遠鏡」には違いありませんから、まともに太陽光が入ると大変なことになります。

金属蒸着フィルターによる減光
金属蒸着フィルターによる減光
望遠鏡の筒先に金属蒸着フィルターを取り付けた例です。これなら光学系に太陽光が直接入らないので安全な上に、熱で機材にダメージが及ぶ可能性も減らすことができます。

上記のような方法をとったうえで太陽を見ると、多くの場合、黒点があるのに気が付くと思います。昼間だと太陽熱のために気流が乱れてシーイングが悪くなりがちなのですが、ちょっと倍率を上げてみると、黒点の微細構造が見えてきて興味深いものです。太陽活動の最盛期には肉眼でも存在を確認できるほどの巨大な黒点が表れることがあります。

また、気流の状態が良いと、太陽表面がざらざらして見えることがあります。これは「粒状斑」といって、太陽内側の熱いガスが湧き上がってきている様子が見えているものです。

ちなみに、太陽の観測には地上が暖まりきる前の午前中に観測した方が、一般に気流が落ち着いていてよいと言われています。

このほか、太陽の水素ガスが発するHα線のみを通すフィルターを備えた専用の望遠鏡を用いると、プロミネンスが噴き上がっているところなど、普通の望遠鏡では見られないダイナミックな太陽の姿を見ることができます。こうした望遠鏡はCoronado(コロナド)やLunt(ラント)といった専門メーカーから発売されていますが、フィルターの製造に高度な技術が必要なため、機材がかなり高額になるのがネックです。

散開星団

生まれて間もない若い星が、狭い範囲に群れ集まっているのが「散開星団」です。全天に散開星団は数多くありますが、メシエ天体を中心に、そのうちのいくつかは都心でもなかなかの見栄えで観望することができます(もちろん、空の暗い所でのそれにはまるで及びませんが)。双眼鏡や望遠鏡でこれらの星団を見ると、都心であっても思いのほか多くの星が見え「こんなに星があったのか!」と驚くこと請け合いです。

これらの天体は月明かりのない、空気の澄んだ時に見るのが一番です。太平洋岸の地域では、冬は絶好の観望シーズンです。

ヒアデス星団

ヒアデス星団

おうし座の頭を形作る散開星団です。5度くらいの領域に100個程度の星が散らばっていて、おうし座の1等星アルデバランを双眼鏡の視野に入れると、自然と視野いっぱいに星が広がります。望遠鏡だと倍率が高すぎて面白くありません。ちなみに、アルデバランは偶然この星団と同じ方向に見えますが星団の一員ではありません。

M45

M45

「プレアデス星団」あるいは「すばる」の呼び名で知られる、おうし座の散開星団M45は最も観望しやすい星団の1つです。大変明るいので、都心でも肉眼で存在を確認することができます。双眼鏡を使えば、ひしゃくの形に並んだ明るい星を中心に、いくつもの星が群れ集まっているのが分かります。望遠鏡を使う場合、なるべく低倍率・広視野のアイピースを使うと、視野いっぱいに星が広がって見事な眺めになります。

M44

M44

「プレセペ星団」の呼び名で知られるかに座の散開星団です。ふたご座としし座とのちょうど中間あたりにありますが、M45に比べるとやや暗いので、都心部だと肉眼では少々厳しいかもしれません。

それでも、ふたご座の1等星ポルックスとしし座の1等星レグルスとを結んだ線の中間あたりに双眼鏡を向けると、たくさんの星がぎっしり群れ集まっているのが分かります。望遠鏡を使う場合、なるべく低倍率・広視野のアイピースを使うと、視野いっぱいに星が広がって見事な眺めになります。

二重星団h-χ(エイチ・カイ)

二重星団h-χ

ペルセウス座にある2つの散開星団。見かけの大きさが満月と同じくらいの2つの散開星団が寄り添うように並んでいます。都心だと肉眼でとらえるのは無理ですが、低倍率の望遠鏡を向けると2つの星の集団が並んでいるのが興味深く眺められます。

その他の星雲・星団

上記の散開星団のほか、球状星団や散光星雲、惑星状星雲、系外銀河などが有名どころの天体として知られています。これらはしばしば鮮やかな写真として本や雑誌を飾るので「望遠鏡を使えばああいうのが見られるのか!」と期待する方が多いのです。

しかし、あれは天体からの弱い光を数十分~数時間もカメラで蓄積した上、画像処理を施しているために色鮮やかに見えるのです。光を貯めておけない人間の目の場合、望遠鏡を使ってもモノクロのボヤッとした光のシミが見えるだけ、ということが多いです。

とはいえ、何千年、何万年も前に天体を発した光がリアルタイムで届いているのだと実感できるのが眼視観望のいいところ。写真では絶対に味わえないライブ感がそこにはあります。

これらの天体は淡いものが多く、光害が激しい街なかでは見ること自体が困難なものが多いですが、「オリオン大星雲」として知られるM42は肉眼でも存在が分かりますし、望遠鏡を使えば中心部にある四重星トラペジウム周辺のガスの濃淡が美しく眺められます。

トラペジウム
M42中心部の四重星トラペジウム

また、ヘルクレス座のM13などの明るく大きな球状星団も、無数の星が群れ集まっている様子が望遠鏡で確認できます。

こと座の「環状星雲」ことM57や、「キャッツアイ星雲」ことNGC6543などの惑星状星雲も街なかで比較的見やすい対象。望遠鏡の視野に捉えることができたら、思い切って倍率を上げてみましょう。写真みたいな色鮮やかさはありませんが、普通の星とは違う姿が分かるはずです。

「アンドロメダ大星雲」として知られるM31は、都心で比較的簡単に見られる最も遠い天体かもしれません。写真で見るような立派な渦巻きを確認するのは困難ですが、中心部の明るい部分だけなら双眼鏡でも存在を確認できます。光害に埋もれて決して見栄えがするものではありませんが、数百万年前に発した光を目にするロマンをぜひ感じてみてください。

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