光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

街なかで楽しむ天体写真

様々な天体を見ているうちに「これを写真に収められたら……」と思う人は少なくないはずです。特に誰もがネットにつながっている今、ブログやSNSで写真を見せたいという人もいるでしょう。あるいは、ガイドブックや雑誌でよく見る美しい写真を自分も撮れるなら撮ってみたい、という人もいるかもしれません。

しかし天体写真というとなんだか難しいイメージ。特別なカメラや技術が必要な気がします。たしかに、撮影対象によっては撮影が非常に難しいものもありますが、逆にかなりお手軽に撮れるものもあります。普通の写真でも、日常的なスナップからプロが撮影する報道写真、芸術写真のようなものまで、様々なジャンル、難易度の写真があるのと同じことです。

ただ、いくら簡単なものがあるとはいえ、基本は押さえておかないといけません。アナログですが、ここでも本が役に立ちます。ネットでも情報収集はできますが、どうしても断片的になりがちで基礎が身につきません。興味を持って天体写真を始めてみたものの、ネットの情報に踊らされて散々無駄な回り道をした挙句に飽きてやめてしまう、という例を個人のブログなどでしばしば見かけますが、実に惜しいと思います。そうしたことを避けるためにも、まずは何冊か本に目を通してみてください。

具体的な書物名を挙げるとキリがないので、ここでは挙げませんが、誠文堂新光社地人書館など、昔から天文関連の書籍を扱っているところの本なら間違いは少ないでしょう。逆に、最近よく見かける、カメラ雑誌の出版社などから出ている本やムックは、出自の関係でどうしても基礎がおろそかになっている感が強く、基本を身につけるうえではお勧めできません。

様々な「天体写真」

さて、「天体写真にも様々なジャンルがある」と書きましたが、ジャンル分けの方法として「撮影対象」によって分けるやり方、「星の日周運動を追尾するか/しないか」によって分けるやり方、「撮影に使う光学系」によって分けるやり方があります。

まず「撮影対象」について分けると、だいたい「太陽」、「月」、「惑星」、「彗星」、「流星」、「恒星(星座)」、「星雲・星団」といった具合になるでしょうか。それぞれの対象について、それぞれ適した撮影方法、撮影機材、テクニックが必要になってきます。難易度も様々で、ほとんど何も考えなくても撮れるものから、かなりの技術を必要とするものまであります。

次に「星の日周運動を追尾するか/しないか」ですが、これはカメラを三脚などに固定して撮影するか(固定撮影)、赤道儀で日周運動を追いかけながら撮影するか(追尾撮影)の違いです。

星は24時間で約360度、すなわち1分間に約0.25度ずつ動きます。そのため、カメラを固定したままで長時間のシャッターを切ると、星が線を引いて写ります。通常の写真でいうところの「被写体ブレ」に相当するものです。もし星を点に写そうと思えば、赤道儀などを用いて日周運動を追尾してやる必要があります。

なお、原理的には赤道儀を使えば天体を正しく追尾できるはずですが、実際には設置誤差や機械の精度など様々な理由で追尾のズレが発生します。このズレを別途望遠鏡で監視し、赤道儀の動作に修正を加えて追尾精度を上げる撮影方法を「ガイド撮影」といいます。昔は監視用の望遠鏡(ガイド鏡といいます)を人間が覗き、手動で修正を行っていましたが、現在ではCCDカメラを用いて修正操作を自動化した「オートガイド」が主流です。

そして「撮影に使う光学系」(撮影方法)によって分けると以下のようになります。

1. カメラレンズを用いた撮影(通常撮影)
普通の風景写真などと同様、カメラレンズを使って撮影する方法です。対象にもよりますが、単に「星を撮る」だけなら最低限カメラ一式があればすぐに始められるので、最も敷居が低い方法の1つといってよいでしょう。一方で、凝り始めるとF値の明るいレンズが欲しくなったり、超広角レンズが欲しくなったりで、意外と奥の深い世界でもあります。
2. コリメート法
望遠鏡のアイピースを目で覗く代わりにカメラに覗かせ、望遠鏡の視野に写っているものをそのまま撮影する方法です。使うカメラはコンパクトデジカメや、携帯電話・スマートフォンについているカメラでOK。むしろ一眼レフでは、アイピースに比べてカメラ側レンズの口径が大きすぎるため、アイピース外の余計なものまで写ってしまってきれいに撮れません。この方法で撮影できるのは、基本的に月や惑星など明るい天体に限られますが、非常にお手軽な方法です。
3. 直焦点撮影
望遠鏡にカメラを直接取り付け、望遠鏡をカメラレンズ代わりにして撮影する方法です。よく図鑑やガイドブック、雑誌等で見る星雲・星団の写真はほとんどがこの撮影方法によるもので、天体写真の花形といっていいでしょう。ただし、この撮影方法の対象となる天体は月を除けば総じて暗いため、比較的長時間の露出が必要です。焦点距離の長い望遠鏡で長時間露出をするとなると、星の日周運動を精度よく追尾しなくてはならず、それなりの装備や機材の運用ノウハウが必要となってきます。また、撮影後の画像処理が必要な場合も多く、その方面の知識もある程度必要です。
4. 拡大撮影法
望遠鏡で捉えた像をアイピースやバローレンズでさらに拡大し、これをカメラで撮影する方法です。文章だけ見るとコリメート法と似ていますが、カメラ側のレンズを使わないのが特徴です。拡大率を高く取れる一方、光路上のレンズ枚数がコリメート法に比べて少ないためにシャープさやコントラストの面で有利なので、月の地形の拡大や、惑星のような小さな天体を撮影するのに主に使われます。最近は普通のカメラで静止画を撮るのではなく、カメラの動画機能、もしくは動画カメラで動画を撮ったのち、これを画像処理することで高精細な静止画を得る手法が主流になっています。拡大率の高さに由来する視野の狭さ、ピントの合わせにくさなど特有の難しさがあり、また高精細の画像を得るためには機材の構成や運用に細心の注意が必要。さらに画像処理のノウハウも要求されるので、これはこれで直焦点撮影とはまた違った難しさ、奥深さがあります。

光害カットフィルターは必需品

街なかから天体写真を撮ろうと思った場合、悩まされるのはやはり、街灯りによって夜空が明るく照らされる「光害」です。

月や惑星の撮影では関係ありませんが、その他多くの被写体では、かすかな星の光を捉えるために長時間の露出が必要になります。しかし光害の激しい場所では、背景の空が明るく写り、星の光をかき消してしまいます。そこで必要になるのが俗に「光害カットフィルター」と呼ばれるフィルターです。IDASの「LPS-D1」や「LPS-P2」、ケンコー・トキナーの「ASTRO LPR Filter」、サイトロンの「LPR-N」など、いくつかのメーカーから発売されています。

光害カットフィルターの例
光害カットフィルターの例

これらのフィルターは原理はほぼ同じで、光害の主な原因である水銀灯やナトリウムランプ、蛍光灯などから出る波長の光をなるべくカットしつつ、星や星雲が出す波長の光は素通しするようにできています。光害が和らぐ分、露出を伸ばすことができて星や星雲が写りやすくなるという仕組みです。街なかで天体撮影をする場合はほぼ必須と言っていいでしょう(近年、LED照明の普及で効果が怪しくなってきているという指摘はありますが……)。

ただし、光害カットフィルターにも弱点はあります。1つはフィルターの仕組み上、広角レンズでは使いづらいという点です。光害カットフィルターは垂直に入ってくる光に対しては正しく働きますが、斜め方向から入ってきた光に対しては特性が変化し、カットする光の波長がずれてしまいます。そのため、広角レンズの前面にフィルターを置くと、どうしても色むらが発生してしまうのです。

そしてもう1つは比較的高価な点。安価なものでも1枚で2~3万円もします。もしフィルター径の違うレンズごとに買い揃えたりしたらえらいことになるので、ステップアップリングなどを使って節約に努めましょう。

なお、カメラのメーカーや機種にもよりますが、マウント内部に装着できるタイプのフィルターが売られている場合があります。これを使えばフィルター径などは気にしなくてよくなるのでお勧めです。望遠鏡での直焦点撮影に使う分にはこちらの方が便利でしょう。また、フィルターがこの位置にあれば、極端に明るいレンズを除き、フィルターにはほぼ垂直に光が入ってくるので、前記の問題は起こらず広角レンズでも使用可能になります。

マウント内に設置できる光害カットフィルターの例
マウント内に設置できる光害カットフィルターの例

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