光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

天体観望・写真の小技集

ここでは、各セクションでまとめきれなかった、天体観望、天体写真に関する小技を紹介します。何かのヒントになれば幸いです。

機材の保管・運搬方法

個別の機材の保管・運搬

自宅のすぐ前であったり、庭やベランダに望遠鏡を展開できる環境ならいいですが、近所の公園などに機材一式を移動させなければならない環境では、どうやって機材を運ぶかが大きな問題になってきます。

また、保管・運搬時に機材をどうやってしまっておくかも大きな問題です。望遠鏡は精密機械なのであまりぞんざいに扱いたくないですし、そもそも赤道儀のような不定形のものだと、転がしておくにも体裁が悪すぎます。機種によっては、純正品でケースやキャリングバッグの類が用意されていることもありますが、概して高いことが多いですし……。

そこで、なるべく汎用品を利用します。まず、望遠鏡や三脚といった「長物」ですが、これにはカメラ用品として売られている三脚ケースや、照明スタンド、アンブレラなどのスタジオ撮影用機材を収納するためのケースが利用できます。

私がED103Sを収納するのに使っているのは、エツミの「ハードスタンドケース100」です。

エツミ ハードスタンドケース100

これはそれこそスタジオ撮影用機材を収納・運搬するためのケースですが、しっかりしたウレタンのクッションが入っていて、中身の保護はバッチリ。しかも長さが100cmあり、直径も十分大きくて、ED103Sがフリップミラーやファインダーを装着したままスッポリ入ります。元々が重い機材を入れて運ぶためのケースなので作りも上々です。

この製品自体は残念ながら販売が終わってしまっているようですが、似たようなケースはカメラ量販店のスタジオ撮影用品売り場にありますので、探してみるとよいでしょう。

一方、三脚(SXG-HAL130)を入れているのはリーベックの「RC-30」という三脚ケースです。

リーベック RC-30

同社のRT30Bというビデオカメラ用三脚のケースなのですが、これが内寸180mm×160mm×850mmと、SXG-HAL130三脚のサイズ(直径150mm 長さ840mm)にジャストフィット。クッションこそ弱いものの、こちらも大型三脚用のバッグだけに作りは比較的しっかりしています。さらに、バッグはファスナーをすべて展開するとシート状に広げることができて、野外での物置にも使えるというオマケつきです。

赤道儀については、スタジオ撮影用のストロボシステムなどを扱っているコメットというメーカーの「布ケース CB用」を使っています。

布ケース CB用

このケースは本来、ストロボ電源とストロボヘッドを入れるためのケースです。目的外使用もいいところですが、内寸は355×590×200mmと絶妙の大きさ。精密機器を入れる関係上、底板や側板は頑丈で、クッションも入っています。それでいて布製なので重量はたったの2.5kgしかなく、純正のハードケースなどと比べるとはるかに軽量です。元々が業務用ストロボ電源のような重量物のためのバッグですから、強度も問題なし。

布ケース CB用 内部

サイズとしては、赤道儀とコントローラ、ウェイト、ハーフピラーが一度に入ります。ここまで入れてしまうと持ち上げるのは重量的に大変ですが、短距離の移動ならなんとかなります。

これらはいずれも、大概の純正品や天文ショップオリジナルのケースより安いのですからなかなかお買い得。スタジオ撮影用品のケースは案外狙い目です。

なお、これら布製のケースを保管に使う場合、カビには十分注意してください。布やクッションは湿気を呼び込みやすいので、乾燥剤や防カビ剤でしっかり手当をしておきましょう。

機材全体の運搬

個別の機材については上記のようなケースを用意することで保管、移動が可能になりますが、そのほかの機材も含めて少し遠く(徒歩圏内)まで移動しようとすると、とても持ちきれません。

そこで、私はこの目的に手押し台車を利用しています。

手押し台車

使っているのは、中部産業扱いのゲル注入タイヤ仕様のもの(CSPLA300DX-HP-AFG)で、これにウツヰの集配ボックスを組み合わせています。台車は天板が600mm×900mmと大きく、タイヤもしっかりしているために自重がかなりありますが(約21kg)、衝撃緩衝能力はそこらのホームセンターで売っているような安価な台車とは段違いです。実際、シュミットカセグレン系のEdgHD800を1km以上運んでも、光軸はほとんどずれません。ゲル注入タイヤなのでパンクの心配はありませんし、舗装路を走る限り、性能的にはこれで全く問題ないと思います。

一方、集配ボックスも自重7kgとそれなりの重さですが、それだけに強度も十分でしっかりした作りです。ボックスの固定はマジックテープで行いますが、側面をハンドル部分に固定するだけでなく、底面を台車の天板に固定できるので、荷崩れの心配がほとんどありません。また、ボックスの一辺は手前に半分に倒せる構造になっているため、重量物の荷揚げ、荷下ろしも比較的簡単です。

この組み合わせで、赤道儀や鏡筒、三脚、バッテリー、カメラ、机、椅子など、観測・撮影に必要な機材を一気に運ぶことができます。総重量としては、おそらく台車の自重を含めて最大80~90kg程度ではないでしょうか。

完全に業務用の台車で、それなりに高価ですが、なにしろ運ぶのが精密器械ですから性能(特に衝撃緩衝能)には妥協しない方がいいでしょう。人力で運ぶ手段としては、このほかリヤカーなども考えられますね。

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