天体観望・写真の小技集
ここでは、各セクションでまとめきれなかった、天体観望、天体写真に関する小技を紹介します。何かのヒントになれば幸いです。
天体写真の構図
ネット上に上がっている写真を見ていると、意外と無頓着な人も多いようですが、天体写真ではカメラの向きに原則があります。
月や惑星の撮影の場合、まず天体の自転軸を垂直にするのが大原則です。その上で、天体の「北」または「南」を上にします。どちらを上にするかは人や雑誌によって異なりますが、月の場合は「北」を上に、惑星の場合は「南」を上にするのが違和感が少ないのではないかと思います。文字で書くと分かりづらいですが、月は肉眼でも見えるので違和感を感じないように正立像で、惑星は望遠鏡で見たままの倒立像で、ということです。
もっとも惑星に関して言えば、南を上にするのは眼視でスケッチを行っていたころの名残りといえる部分があり、写真の回転が容易な現在では、北を上にする例も増えてきています。
一方、星雲・星団など一般的な天体写真の場合は、作画上の意図がない限り、天の北極の方向を画面の上にします。
これらがきっちり決まった写真は違和感がなく、見ていて気持ちのいいものです。
前者の場合は、実際に天体を視野内にとらえてから調整するか、事後に回転させるかしかありませんが、後者の場合、撮影の前……望遠鏡のセッティングの段階でカメラの向きを決めてしまった方が厳密に向きを合わせることができます。
屈折望遠鏡のように接眼部と視線方向が同じ方向を向いている望遠鏡の場合、望遠鏡をセッティングし、鏡筒が真北を向いている状態(カタログでよく見かけるあの姿)でカメラを装着します。この状態では望遠鏡は左右方向には傾いていないはずですから、水準器を用いてカメラを正しくセットすれば、方向がきっちりと決まるというわけです。
具体的には、縦構図にする場合にはカメラを横位置に、横構図にする場合には縦位置にすればOK。このとき便利なのが、アクセサリシューに装着するタイプの水準器です。もちろん、電子水準器を内蔵しているカメラなら、それを使えばよいでしょう。
なお、ニュートン式の場合は接眼部が90度曲がっているわけですから、鏡筒が真西または真東を向いている状態にしてから同様に調整すればOKです。