光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

キャッツアイ星雲 NGC6543(惑星状星雲、りゅう座)

撮影日時 2021年6月10日
撮影機材 セレストロン EdgeHD800(D203mm, f2032mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
感度・露出時間 0℃, Gain=450, 露出2秒×320コマ
備考 IDAS NebulaBooster NB1フィルター使用
ガイドなし
中心部をトリミング

りゅう座にある惑星状星雲です。見かけの大きさが非常に小さい天体ですが、一方で、非常に複雑な構造を持つことで知られていて、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた美しい写真を見たことがある人も多いことでしょう。

1786年にウィリアム・ハーシェルによって発見された天体で、1864年には惑星状星雲として初めてスペクトル観測が行われています。その後も盛んに研究が行われてきていますが、なぜこのような複雑な構造が形成されるのに至ったのかなど、まだまだ分からないことの多い天体です。

一般的な惑星状星雲と同様、この星雲も小さいながらも意外とよく見え、よく写る天体です。カタログ上の明るさは9等程度ですが、惑星状星雲は単位面積当たりの明るさが明るいので、都心でも比較的容易に観望、撮影ができます。逆に言えば、撮影時に普通の星雲と同じような感覚で長時間露出すると、あっという間に露出オーバーで真っ白に飛んでしまいます。そこで、この写真では1コマあたりの露出を2秒に抑えて多数枚撮影し、これをコンポジットした後にRegistax6でウェーブレット処理。さらに最大エントロピー法で画像復元をするという、惑星写真と同じ処理方法を取っています。

その結果、楕円が組み合わさったような、複雑なガスの微細構造が予想以上によく出てくれました。極方向にあるひげ状のガスも見えています。ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された写真と見比べると、解像度がかなわないのは当然ながら、形の特徴がしっかり出ているのが分かります。

ハッブル宇宙望遠鏡による写真(右)との比較
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)で撮られた写真を、向きがおおよそ同じになるように並べてみました。なお、HSTの写真は水素原子由来のHα線(λ=656.3nm)を赤、電離窒素由来の線(λ=658.4nm)を緑、酸素原子由来の線(λ=630.0nm)を青として表現しているものです。ここから、今回の写真で赤く見えている星雲の両端部分には窒素も含まれていることが分かります。

惜しいのは、光軸が若干狂っていたのか、星が微妙に尾を引いてしまっている点。惑星状星雲の場合、視直径が小さい分、どうしてもトリミングすることになりますが、そのために光軸の狂い等による星像の乱れもハッキリ分かってしまいます。なかなか厳しいものです。

オリジナル画像

カメラで撮ったままの画像です。この星雲は単位面積当たりの明るさが大きいので、わずか2秒の露出でも容易に写りました。ただ、見かけの大きさが小さいため、焦点距離2000mmの望遠鏡で撮影してもこんなサイズでしか写りません。

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