ダークフレームの撮影と処理
長時間露出を行った写真には、ポツポツとした輝点ノイズや、カメラの電子回路が発熱することで発生する熱カブリなどが現れることがあります。
これらのノイズやカブリは、撮像素子の温度や露出条件が同じであれば、同じところに同じように発生する傾向があります。そこで、ノイズのみを撮影した画像を別途作成しておき、写真から差し引くことで、これらのノイズや熱カブリを写真から取り除くことができます。この操作をダーク補正(ダーク減算)といい、これに用いる「ノイズのみを記録した画像」のことをダークフレームと言います(対して、天体を撮影した画像は「ライトフレーム」と呼びます)。
ダークフレームの作り方は簡単で、カメラにキャップをして外からの光が入らないようにした上で、目的の写真を撮影したのと同条件で撮影を行うだけです。なお、撮影は天体写真の方と同様、RAWで撮影するようにします。JPEGなどで記録すると、その際にカメラ側で各種の画像処理が行われてしまい、正しくノイズを記録できません。
このとき大事なのは温度です。撮像素子の温度が天体撮影時と異なると、ノイズなどの出方が変わってきてしまいます。そこで、できれば天体撮影を行ったその夜のうちに、すばやくダークフレームを撮影してしまうのが得策です。それが難しければ、せめて天体撮影時の気温を記録しておき、同じような気温の時にダークフレームを撮影しましょう。
ダークフレームの撮影枚数は、天体写真のコンポジット枚数と同じか、それ以上にします。そして撮影したダークフレームをコンポジットし、バックグラウンドノイズの少ない、滑らかなダークフレームを得るようにします。そうしておかないと、バックグラウンドノイズまみれのフレームを使って写真を処理することになり、画像が荒れてしまいます。
ダークフレームのコンポジット
ダークフレームの撮影を終えたら、前述のとおりコンポジットを行います。
ステライメージの場合、ダークフレームのコンポジットはバッチ処理で行います。メニューから「バッチ処理」→「コンポジット」を選び、撮影したダークフレームを選択。「位置合わせ」はせず、合成の設定は「加算平均(σクリッピング)」、「σ=1.1」、「バイリニア」とします。
「加算平均(σクリッピング)」というのは、コンポジット対象の画素の中に、他の写真と比較して飛びぬけてシグナル強度が高かったり低かったりする画素があった場合、これをコンポジット対象から除く操作です。こうすることで、個々のダークフレームで発生した宇宙線の衝突などによる突発的なノイズの影響を取り除き、固定されたノイズ成分だけを抽出することができます。σは、シグナル強度がどの程度飛びぬけていたらコンポジット対象から外すかを決定する係数で、ここでは上記の設定から変更する必要はありません。
σクリッピングを用いてのコンポジットは重い作業で、枚数によっては非常に時間がかかりますが、ここはじっと我慢です。無事コンポジットが終了したら、現像などはせず、出来上がったダークフレームをそのまま、名前を付けてfits形式で保存しておきます。