ダーク&フラット補正
ダークフレームとフラットフレームの用意が終わったら、撮影した各画像(ライトフレーム)に対して補正を実行します。基本的に、この操作は原則として、現像前のRAW画像に対して行ってください。特にダーク補正に関しては、RAWで処理を行わないとノイズがうまく消えてくれません。
ダーク補正、フラット補正でのトラブル
「ダーク補正、フラット補正をやっても背景が均一にならない」というのは、よくある話です。こうなる原因で一番多いのは、ライトフレームとフラットフレームの不一致です。
まず、ライトフレームには地上からの光害成分などが混じっている一方、フラットフレームには当然そうしたものはありませんので、たとえ完璧にフラット補正が決まったとしても、光害由来のカブリは残ってしまいます。これについては、原理的なものなのでどうしようもありません。ステライメージの「カブリ補正」を用いるなどして、事後的に対処をしましょう。
また、空からの光はほぼ完全な平行光線ですが、フラットフレーム作成時にトレーシングペーパーなどで筒先で光を拡散させたり、ELフラットなど近接した光源を用いた場合、入射光は平行光線だけにはなりません。このため、フラットフレームの光分布がライトフレームのそれとは若干異なるものとなり、補正が決まらないことがあります。これも根本的な解決はなかなか難しいところ。ステライメージ7で搭載された「ガンマフラット」機能を使えば救えることも少なくないですが、あまりにひどい場合には事後処理にゆだねたり、ずれの大きい端の部分をトリミングしてしまった方が速いのは確かです。
フラットフレームが明るすぎたり暗すぎたりするのもトラブルの元です。実はデジカメでは、白飛びが簡単に起こらないよう、またノイズが目立たないよう、黒や白に近い部分のトーンカーブを曲げて記録しています。このため、ライトフレームやフラットフレームの明るさによっては、対象の明るさとシグナルの強さの間に直線関係が成立せず、フラット補正を行った時に過剰補正や補正不足が発生することがあります。この場合は、露出時間を調整するなどしてフラットフレームの明るさをなるべくライトフレームのものに合わせるようにします。それでもなお合わないことも多いですが、上記のケースと同様、「ガンマフラット」で救済できる場合も少なくありません。
なお、うまくフラット補正が決まらない場合、こちらで紹介するような「裏ワザ」が有効な場合もあります。手間はかかりますが効果は大きいので、試してみてもよいでしょう。
ただ、フラット補正に関しては、画面の隅から隅まで完璧に補正することを目指すと大変な苦労を伴います。時には諦めも必要。手間と効果の見極めが肝心です。
見落としがちですが、背景がフラットにならない原因として、ダークフレームに問題がある場合もあります。ダークフレームは外からの光が完全に入らない状態で撮影しますが、ファインダー側から迷光が入ったり、レンズ側のキャップのしまりが甘くて光が漏れたりすると、ダークフレームの背景にムラが生じます。こんなものを使ってダーク補正を行ったら、おかしなことになるのは当然です。確実を期すのであれば、ダークフレーム撮影時にはカメラを望遠鏡から外してマウントにキャップをした上(カメラレンズや望遠鏡のキャップは密閉度が低いので、光が漏れる可能性がある)、一眼レフの場合はできればファインダー側も遮光しておきましょう。カメラによっては、メーカーがファインダー用のキャップ(シャッター)を用意していることもあります。
このほか、よくあるのはフラットフレーム撮影時までにセンサー上のゴミが移動してしまい、ライトフレームからうまくゴミの影を消せない上に、補正後にゴミの影が別のところに白斑として現れるケースです。フラットフレーム上にゴミの影のような暗い部分があると、補正後のライトフレーム上の相当する位置はその分明るくなります。ライトフレームの同じ位置にゴミの影があればOKなのですが、そうでないとこのようなことが起こってしまいます。
これを防ぐためには、まずフラットフレームを天体撮影終了後のなるべく早い時期に撮影すること。時間がたつと、それだけゴミが移動したり増えたりする可能性が高まります。このような消せないゴミの影や白斑が現れてしまった場合ですが、これはもうどうしようもありません。フォトレタッチソフトで事後的に消すしかないでしょう。あえてフラット補正をしないという選択もあり得ますが、これはデメリットが大きすぎます。