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ミザールテック K型微動マウント(K型経緯台)レビュー

概要

K型微動マウント(K型経緯台)はミザールテックから販売されている小型経緯台です。ミザールテックの前身であるミザール、さらにその前身である日野金属産業の頃から、マイナーチェンジを行いながら販売され続けていて、2017年で販売開始から35年を迎えるという、大変息の長い製品です。

現在、この経緯台は口径70mmのアクロマート屈折望遠鏡とのセット(MT-70R)などの形で販売されていますが、私が購入したのはカメラ三脚に載せられるようにした仕様違い品で、「K型微動マウント カメラ雲台仕様」として販売されているものです。さらに、これも底面のネジ穴が1/4インチか3/8インチかのバリエーションがあり、私の購入したものはスコープタウンで取り扱いのある3/8インチ仕様のものです。価格は税込15933円でした。

ミザールテックについて

この経緯台を製造販売しているミザールテックという会社ですが、昔ながらの天文ファンはともかく、最近この趣味を始めた方にはなじみがないと思いますので、初めにその沿革や概要を簡単にお話ししておこうと思います。

ミザールテックは、元々は日野金属産業という名前で1952年の創業です。当時は金属材料の卸を行っていましたが、1957年から望遠鏡の製造販売を始めました。なお、「ミザール」というのは同社の光学製品のブランドで、後に社名にもなっています。

1965年に発売された口径10cmのニュートン式反射望遠鏡「H-100型」は、ピント調節機構にヘリコイドを採用したスマートな姿で人気を博し、ミザールの名は一気に広まりました。

その後、口径8cmの屈折赤道儀「カイザー型」、ニュートン式をベースにしたカタディオプトリック光学系を採用した口径15cmの反射赤道儀「CX-150」などヒット商品を連発しました。さらに1978年には、拡張性を重視したいわゆる「システム赤道儀」の先駆けとなる「AR-1赤道儀」を発売します。この赤道儀自体は、精度としてはそれほどでもなかったようなのですが、その拡張性の高さが当時の天文少年の心をくすぐりました。当時小学生だった自分も、買えないながらもカタログを眺めてはあれこれ夢想したものです。

その後も「鏡面精度1/20λ」(λは光の波長で、鏡の形状の誤差がその1/20しかないということ)を謳ったニュートン式反射「120SL-RS20」など魅力的なスペックの製品を市場に送り出し、1970年代後半~80年代前半にかけて絶頂期を迎えます。

一方、80年代半ばごろになるとコンピュータで観測機材を制御しようという動きが出てきました。時期的にいわゆる「ハレー彗星ブーム」と重なったこともありますが、洋の東西を問わず、各社一斉に開発競争に走ることになります。当時、価格帯的にミザールのライバル的な位置にいたビクセンは、1984年、全世界に先駆けてアマチュア向け天体自動導入装置「マイコンスカイセンサー」を発売。ミザールもそれに対抗して「RV-85赤道儀」と光学式エンコーダを備えた高性能コントローラ「CC-01」を開発します。

ところが、肝心のCC-01の発売が、ハレー彗星が過ぎ去った2年後の1988年春と大幅に遅れた上、非常に高価(当時「マイコンスカイセンサー2」が4万円程度で販売されていたのに対し、定価11万8000円もしました)だったため、これらの売れ行きは芳しくなかったようです。ミザールは最大の社勢拡大のチャンスを逃したことになり、ここから一気に凋落が始まります。

RVシリーズは早々に製造中止になり、その後出した製品も、ハレー彗星ブームが去って冷え込んだ市場では注目されることもなく、存在感はみるみるうちに低下していきました。

現在では、初心者向けの低価格望遠鏡を細々と販売している状況で、その販売している望遠鏡も決して良質とはいいがたい……というか率直に言って大半が粗悪品という、実に残念な状況になっています。

そんな中、このK型経緯台はミザールの全盛期から引き続き製造されている、ミザールの最後の良心とも言える存在です。

外観など

水平回転軸の上に垂直回転軸、さらにその上に機材が載る、俗に「トップマウント」とか「シーソー型」と言われる伝統的な経緯台の構造です。黒のハンマートーンで塗装された外観も、いかにも昔ながらの光学関連機器という雰囲気を醸し出しています。全高はおよそ20cmほど、重量は1.5kgほどで、経緯台としては小型と言ってもそれなりに存在感があります。

一般に、シーソー型の構造は単純なために機械的な強度の面では有利な一方、仰角を上げると鏡筒が中心軸から離れるため、バランスが崩れるという弱点があります。これによって望遠鏡が動いてしまうのを防ぐため、このタイプの経緯台には回転軸を固定するクランプが必須です(特に高度軸側)。

この経緯台にもクランプが用意されています。水平軸側(写真上)は普通の手回しネジで、これで回転軸を側面から押さえつける形。高度軸側(写真下)は機材取り付け面との干渉も考えてか、万力などでよく見られるような可動ハンドル付きのボルト……いわゆるトンボネジが使われていて、これで回転軸を締め付けて固定します。最近主流のフリーストップ型経緯台に比べると、クランプ操作が必要という点でひと手間かかりますが、しっかり固定できて不用意に動くことがないので、一長一短です。

微動は水平軸、高度軸ともにウォームネジによる全周微動です。古い経緯台(ビクセン カスタム型経緯台など)だと、安価なタンジェントスクリュー式の部分微動(粗動で望遠鏡を目的物に向けたのち、限られた角度範囲でのみ微動が可能というもの)が使われていることがありますが、使い勝手はやはり全周微動が圧倒的に上回ります。

底面には、カメラ三脚に取り付けるための3/8インチのネジ穴が開いています。通常仕様だと、ここに変換アダプターがねじ込まれて1/4インチのネジ穴になっているとのこと。買った人の情報によると変換アダプターはロック剤でガッチリ固定されていて取り外し困難らしいので、もし3/8インチ対応の三脚を使おうと考えている場合は、最初から3/8インチ仕様のものを購入した方がよさそうです。

機材の取り付けはアリガタ・アリミゾ式になっています。アリガタには中央に1/4インチネジが取り付けられていて、カメラ等の機材をそのまま固定することができます(ネジは取り外し可能)。1/4インチネジの両側には、1/4インチ、3/8インチの各ネジ穴およびM5ネジ対応のバカ穴があけられていて、これらを用いても機材を固定することが可能です。バカ穴間の距離は75mmとなっています。装着されているカメラネジは特に工夫のないもので、しっかり締めるにはレンチかラジオペンチを使う必要があります。ここは残念なところです。

アリミゾはアリガタと比較するとかなり幅広です。実はアリガタはビクセン規格のものより4mmほど幅が狭い独自仕様で、一方、アリミゾはビクセン規格のアリガタが固定できるだけの広さを持っています。そのためアンバランスに見えるのですが、逆に言えばビクセン規格のアリガタをそのまま利用できる(写真右)ので、応用範囲は大きく広がります。

ただ、アリミゾ自体の精度は決して高くありません。純正のアリガタを装着しても、上の写真のように盛大に隙間ができてしまいます。載せる機材は軽いものが多いでしょうし、実用上の問題はあまりないとは思いますが、固定力に不安があるのは確か。アリガタの落下防止機構が一切ない点も含め、やや注意が必要と思われます。

また、アリミゾ側の押さえネジのノブがアリガタの上面より1cmほど高い位置に来るため、横幅のあるもの(1/4インチネジの中心から3.5cm以上)をアリガタに載せようとした場合、干渉する可能性があります。載せる機材によっては、なんらかの工夫が必要なところです。

ちなみに私の場合、スリックの「DS-30」というアルカスイス互換のクイックシュー&プレートのセットを購入し、アリガタに取り付けました。これにより、高さが稼げて機材とアリミゾ側の押さえネジとの干渉を避けることができるようになりました。

また、このようにアルカスイス互換にすると、現行のミニボーグ鏡筒付属の三脚座(マルチアルカスイス台座N【8992】)を直接固定することができます。利便性が大きく高まるのでお勧めです。

実使用時の印象

今回、経緯台はマンフロットの「190プロアルミニウム三脚 3段」(最大耐荷重7kg)に載せています。簡単な装置とはいえ、経緯台だけで1.5kg、上に載せる機材の重量も考えればトータルで3~4kgくらいにはすぐになってしまいますので、三脚はしっかりしたものを使うことをお勧めします。

さて、望遠鏡を支えるための架台として重要な、機材を支える能力についてですが、これは必要十分と思えるものです。写真だと、経緯台の背が高いために腰高で不安定そうに見えますが、実際には想像以上にガッシリしていて、不快なガタやたわみ、振動とは無縁です。

高度軸側のクランプについては、操作性の悪さがしばしば指摘されます。たしかに、仰角を上げるとハンドルを回すために指を入れるスペースがが窮屈になり、締めづらさを感じます。ただ、それほど頻繁に使うものではないですし、微動で仰角を少し下げれば回しやすくなるので、致命的な問題というほどではないと感じました。

そもそも双眼鏡やミニボーグ60EDくらいの軽量級機材であればクランプをそれほどギチギチに締め上げなくても十分に固定できます。「カックン」と機材が急に動いてダメージがいく可能性があるので積極的にはお勧めしませんが、機材が軽ければ半クランプ状態にしておいて「なんちゃってフリーストップ」のように使うことも可能です。

一方、クランプ解放時の軸の回転はスムーズで、ガタは感じられません。グリスのおかげだと思いますが動きはほどほどの軽さで、固すぎて力を入れないと動かないとか、逆に緩すぎてプラプラになるということもありません。もちろん、クランプ解除時は機材から手を放すことはできませんが、方向を大きく変えるとき以外解除することはありませんから、使い勝手に大きな影響が出るほどではありません。

微動ハンドルは短いものが備わっていて、これらが手前側に来るようにセッティングすれば、双眼鏡や短焦点の望遠鏡を手元で快適に操作することができます。もし焦点距離の長い屈折望遠鏡を使おうとした場合、覗きながらだとハンドルまで手が届きづらいので、スコープタウンで取り扱いのあるフレキシブルハンドルで延長すると便利かもしれません。微動の動きは細かくなめらかで、極端な高倍率で使わない限り、不満を感じることはないと思います。

まとめ

さすがは35年間販売が続けられてきたロングセラーだけあって、経緯台としての基本に忠実な、そつのない作りが印象的です。最近主流のフリーストップ型経緯台ではなく、デザインも古さは否めませんが、このクラスとしては貴重な全周微動を備えている上、安価なフリーストップ経緯台にありがちなルーズな動きとは無縁です。架台自体の強度も想像以上にしっかりしたもの。

経緯台は初心者向けの廉価品に使われることが多いせいか、コストが最重要視されがちでマトモなものがなかなかないのが実情です。しかしこの経緯台は、軽量級機材用の経緯台として中上級者でも十分に満足できるものかと思います。

アリミゾ周りの作りの甘さ、クランプ操作のしづらさなど欠点もありますが、特に「カメラ三脚に載せられる経緯台」ということでいえば、ベストバイの1つと言って差し支えないと思います。ただし、組み合わせるカメラ三脚は十分に頑丈なものにすること。それがこの経緯台を快適に使うための条件になります。

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