光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

NGC2264周辺(いっかくじゅう座)

撮影日時 2017年12月23日
撮影機材 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3
ガイド鏡 ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 ISO100, 露出900秒×12コマ
備考 IDAS/SEO LPS-P2-FFフィルター使用

いっかくじゅう座は、きらびやかな「冬の大三角」の中にある星座ですが、一番明るい星でも3.8等と、暗い星ばかりで見栄えのしない星座です。しかし、有名な「ばら星雲」をはじめとして、大小の散光星雲や暗黒星雲、散開星団が入り乱れ、写真の被写体には事欠きません。

この写真に写っているNGC2264周辺も、被写体として人気の領域です。

NGC2264の位置
NGC2264の位置(ステラナビゲータ10を用いて作成)
NGC2264はオリオン座の1等星ベテルギウスの東、「ばら星雲」の北側に位置します。

この領域にある天体として有名なのは「コーン星雲」と「クリスマスツリー星団」で、この両者を合わせてNGC2264というカタログナンバーがついています。

「コーン星雲」は、写真中央の三角形状の散光星雲の南側の頂点付近、散光星雲に塔のように突き出した暗黒星雲を指します。円錐形に見えることから「コーン星雲」(Cone nebula)の愛称がつきました。一時期、日本では「とうもろこし星雲」という訳も出回ったそうですが、「とうもろこし」の綴りは"Corn"なので明らかな誤訳です。まぁ、ベビーコーンのように見えなくもないですが……(^^;

暗黒星雲は恒星の原材料となるガスや塵が豊富なところですが、このコーン星雲付近も例外ではなく、このあたりでは新しい星が活発に生み出されつつあります。

コーン星雲
コーン星雲

「クリスマスツリー星団」は、コーン星雲の北側にある星団を指していて、星の並びがまるでクリスマスツリーのように見えることからこの名があります。上の写真では暗い星まで強調されているのでかえって分かりづらいですが、以下の強調前画像を見るとまさにクリスマスツリー状に星が並んでいるのがよく分かります。

背景の散光星雲まで強調した上の写真だと、三角形状の散光星雲自体がクリスマスツリー、星団の星々がオーナメントにも見え、「クリスマスツリー星団」という名前がダブルミーニングのように感じられるのも面白いところです。

クリスマスツリー星団
クリスマスツリー星団
クリスマスツリーの形が分かりやすいよう、この写真のみ180度回転させて南を上にしています。ひときわ明るく見えるのが「いっかくじゅう座 S星」で、クリスマスツリーの幹ないし台座に当たります。

また、コーン星雲の南西(写真右下方向)には「ハッブルの変光星雲」として知られるNGC2261が見えています。宇宙が膨張していることを示す「赤方偏移」を発見し、宇宙望遠鏡の名前にもなっているアメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが、この星雲の形と明るさが短時間で不規則に変化することを発見したことから、「ハッブルの変光星雲」と呼ばれるようになりました。

この星雲は、その内部にある「いっかくじゅう座 R星」の光を反射して輝いていますが、このR星は生まれたばかりの星で周囲には塵が大量に漂っています。この濃密な塵がR星からの光をさえぎるなどすることで、星雲の輝き方が短時間で不規則に変化すると考えられています。

輝き方の変化はこちらのサイトなどで見ることができますが、数日というごく短期間のうちに刻々と輝き方が変わっているのが分かります。

ハッブルの変光星雲
ハッブルの変光星雲

このほかにも、このあたりは大小の散光星雲、散開星団が入り混じっていて、大変賑やかな領域です。なお、写真全体に広がっている赤い散光星雲にはSh2-273(シャープレス2-273)という名前が付けられています。

写野内の天体
写野内の天体
NGC2259, Tr5(トランプラー5)は散開星団です。"Tr"はリック天文台のRobert Julius Trumplerが作成した散開星団のカタログのナンバーです。

しかし、色とりどりの天体で彩られているはずのこの領域も、東京都心の激烈な光害の中では、その片鱗すらうかがうのは容易ではありません。処理前の段階では、散光星雲が最も明るく輝いているはずのコーン星雲付近ですら全く何も見えません。以前撮った「ハート星雲&胎児星雲」「勾玉星雲」よりさらに淡いようです。

階調を極端に切り詰めるとようやく存在が分かるようになりましたが、今度は背景のカブリやカメラのミラーによるケラレが無視できないレベルに。結局、写野周辺部はどうにも補正のしようがなく、やむなくバッサリとトリミングしました。

かなり強引な処理をしたので色が濁ってますし、ディテールも荒れてしまっていますが、そもそもが被写体としてかなりの難物ですから、3等星がやっとの東京都心からそれなりの鮮やかさで撮れた時点で満足すべきかもしれません。周辺のさらに淡いガスまできれいに浮き立たせようと思えば、Hαでのナローバンド画像をブレンドするなどの工夫が必要になってきそうです。

オリジナル画像

コンポジット&処理前の画像です。上でも書きましたが、この段階では星雲の類は本当に全く見えません。なので星の配置を手掛かりに構図を決めているのですが、撮影前にはどの程度まで星雲を炙り出せるのかも分からないので、結果を推測しながらバランスが良くなるように構図を追い込むのは大変です。

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