光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

ハート星雲 IC1805 & 胎児星雲 IC1848(散光星雲、カシオペヤ座)

撮影日時 2017年9月3日
撮影機材 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3
ガイド鏡 ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 ISO100, 露出720秒×8コマ
備考 IDAS/SEO LPS-P2-FFフィルター使用

カシオペヤ座にある大型の散光星雲です。西側(写真右側)にあるのがIC1805、東側にあるのがIC1848で、その形からそれぞれ「ハート星雲」、「胎児星雲」という愛称がつけられています。ちなみに海外では、IC1805の方は「Heart nebula」と同じですが、IC1848はHeartと対になる意味で「Soul nebula」と呼ばれています(2つ合わせて「Heart & Sowl nebulae」)。

なんとも生々しい形をした星雲で、特にIC1848の方は文字通り胎児そっくり。そこはかとない不気味さを感じてしまうのは自分だけでしょうか……(^^;

IC1805, 1848の位置
IC1805, 1848の位置(ステラナビゲータ10を用いて作成)

このあたりは星の形成が活発に行われている場所で、生まれたばかりの恒星の集団である散開星団が複数見られます。加えて、秋の天の川の中にあるので微光星が多く、写真に撮ると非常に賑やかな領域です。星形成領域の常で、これらの星雲はもっぱら水素由来のHα線で輝いていて肉眼ではほとんど見えませんが、赤外線(IR)カットフィルターを外したいわゆる「天文改造カメラ」を使えば比較的よく写るといわれています。

ただ、撮影地である自宅近くの公園は、北側に都内有数の幹線道路が隣接しているうえに、北側10km圏内に渋谷や新宿を控えていて、北天の光害は最悪レベル。しかもこの夜は月没から薄明開始まで時間がなく、コマ当たりの露出時間を十分に取ることができませんでした。

今回は明るい光学系を使っているので、その分なんとかなったとは言えるのですが、できればもう一押し、露出を稼ぎたかったところです(星雲はHα線で輝いているだけに、光害カットフィルターとしてLPS-P2ではなく、カット波長の広いCLS-CCDフィルターを使ってもよかったかもしれません。星の色が犠牲になってしまいそうですが……)。

処理前のオリジナル画像は、下に示したようにほとんど何も写っていないような状態で、構図の決定からしてずいぶんと苦労させられましたが、最終的には何とかそれらしくまとめることができたように思います。しかし、この真っ白な画像からここまで情報が引き出せるとは……デジカメの潜在能力の極限を目の当たりにしている感じです。

オリジナル画像

コンポジット&処理前の画像です。そもそもが都心で光害の激しい場所ですが、北天は特に光害が激しい方向だけに辛うじて散開星団などが見える程度で、遠目にはフラット画像かと見紛うばかりです。

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