光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

北アメリカ星雲 NGC7000とペリカン星雲 IC5067, 5070(散光星雲、はくちょう座)

撮影日時 2025年10月17日
撮影機材 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 32mm F4ガイドスコープ
オートガイダー ZWO ASI290MM
感度・露出時間 -10℃, Gain=300, 露出300秒×8コマ
備考 Svbony SV220 H-Alpha & OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]使用

はくちょう座の1等星デネブのすぐ近くにある散光星雲で、NGC7000はその姿が北アメリカ大陸に似ていることから、右側に見える「ペリカン星雲」も、その名の通りペリカンのような形をしていることから名づけられました。一見、別々の星雲のように見えますが、実際はひとつながりの星雲で、手前にある暗黒星雲によって一部が隠されてこのように見えているものです。

これらの散光星雲は主にHα線という、電離した水素に由来する波長656.28nmの光で輝いているのですが、人間の眼はこの赤い光に対する感度が非常に低いため、肉眼ではほとんど見えません。しかしHα線に感度のあるカメラなら良く写り、昔から夏の人気の被写体になっています。

かつて、膨張宇宙の発見で有名なエドウィン・ハッブルは、これらの星雲はデネブからの光によって照らされているのではないかと提唱しましたが、デネブの表面温度は水素を電離させるには低すぎる(約8500℃)ことが分かり、この説は否定されました。その後、2000年代になってから、中央の暗黒星雲の中……「フロリダ半島沖」にある「2MASS J20555125+4352246」という星が、ガスを電離させていることが明らかとなりました。その表面温度は4万℃以上にも達します。暗黒星雲の濃いガスの中にあるため見かけの明るさは13等程度しかありませんが、もしガスがなければ3.6等と、はくちょう座の頭で輝くアルビレオと同等の明るさで見えるだろうと考えられています。

2MASS J20555125+4352246(中央のマーク)

過去、この領域は2014年2016年2019年2022年と撮影してきていますが、最初の3回はデジカメを用いていた上、星雲自体が比較的淡いのと都心の光害のせいとで写りは今一つ。2022年は冷却カメラを用いたもののフィルターがそれほど強力なものではなく、物足りなさが残りました。今回はちょうど、Svbony Japanから新製品フィルターのレビューを依頼されたこともあり、冷却カメラに酸素原子由来のOIII線(波長500.7nm)、水素原子由来のHα線(波長656.3nm)のみを選択的に透過するこのフィルターを組み合わせての撮影です。フィルター自体がデュアルナローバンドフィルターとしては半値幅3nmときわめて強力なのもあり、わずか40分の露出時間しかなかったにもかかわらず、非常によく写ってくれました。

撮影日時 2025年10月17日
撮影機材 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 32mm F4ガイドスコープ
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 -10℃, Gain=300, 露出300秒×8コマ
備考 Svbony SV220 OIII & SII デュアルナローバンドフィルター [7nm]使用

こちらは、同被写体をOIII線(波長500.7nm)およびSII線(波長671.6nm)のみを透過するフィルターで撮影したものです。上のHα & OIIIで撮影したものと比べると様子がまったく異なります。

まず青緑色のOIIIですが、星雲のほぼ全域に広がっています。冒頭のHα & OIIIで撮影した写真において星雲本体が真っ赤ではなくやや白っぽく写っていますが、これは赤いHαに青緑色のOIIIが重なっていたためです。一方、SIIは星雲の縁の部分に多く存在しているのが分かります。SIIは一階電離硫黄(電子が1個剥ぎ取られた硫黄原子)由来の光ですが、高エネルギーの「2MASS J20555125+4352246」のような星によって照らされる散光星雲内では、硫黄はさらなる電離を容易に起こして二階電離硫黄(電子が2個剥ぎ取られた硫黄原子)になってしまいます。結果、一階電離硫黄は中性水素から電子を受け取れる星雲外縁部にしか残らないわけです。

オリジナル画像

Hα & OIIIで撮影したものについて、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。強調前からその姿がハッキリ分かり、強調すると周辺の淡いガスまで浮かび上がってきます。

同じくOIII & SIIで撮影したものについて、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。Hα & OIIIのフィルターに比べて半値幅が広い(7nm)ため、光害の光が混ざりこんでコントラストが低くなっています。また、そもそもOIIIやSIIの強度がHαに比べて低いため、星雲自体の姿も目立ちません。

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