光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

NGC2264周辺(いっかくじゅう座)

撮影日時 2023年1月20日
撮影機材 ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG(D60mm, f298mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 -20℃, Gain=100, 露出300秒×30コマ(カラー)+Gain=300, 300秒×48コマ(ナロー)
備考 IDAS LPS-D1 & Optolong L-Ultimate使用

いっかくじゅう座は、きらびやかな「冬の大三角」の中にある星座ですが、一番明るい星でも3.8等と、暗い星ばかりで見栄えのしない星座です。しかし、有名な「ばら星雲」をはじめとして、大小の散光星雲や暗黒星雲、散開星団が入り乱れ、写真の被写体には事欠きません。

この写真に写っているNGC2264周辺も、被写体として人気の領域です。

NGC2264の位置
NGC2264の位置
NGC2264はオリオン座の1等星ベテルギウスの東、「ばら星雲」の北側に位置します。

この領域にある天体として有名なのは「コーン星雲」と「クリスマスツリー星団」で、これらや海外で"Fox Fur Nebula"(キツネの毛皮星雲)と呼ばれる反射星雲などを合わせてNGC2264というカタログナンバーがついています。

「コーン星雲」は、写真中央の三角形状の散光星雲の南側の頂点付近、散光星雲に塔のように突き出した暗黒星雲を指します。円錐形に見えることから「コーン星雲」(Cone nebula)の愛称がつきました。一時期、日本では「とうもろこし星雲」という訳も出回ったそうですが、「とうもろこし」の綴りは"Corn"なので明らかな誤訳です。

暗黒星雲は恒星の原材料となるガスや塵が豊富なところですが、このコーン星雲付近も例外ではなく、このあたりでは新しい星が活発に生み出されつつあります。

コーン星雲
コーン星雲
濃密なチリやガスが、赤く輝く散光星雲を背景に浮かび上がっているもので、わし星雲 M16の「創造の柱」やIC1396にある「象の鼻星雲」と同様の構造です。

「クリスマスツリー星団」は、コーン星雲の北側にある星団を指していて、星の並びがまるでクリスマスツリーのように見えることからこの名があります。上の写真では暗い星まで強調されているのでかえって分かりづらいですが、以下の強調前画像を見るとまさにクリスマスツリー状に星が並んでいるのがよく分かります。

背景の散光星雲まで強調した上の写真だと、三角形状の散光星雲自体がクリスマスツリー、星団の星々がオーナメントにも見え、「クリスマスツリー星団」という名前がダブルミーニングのように感じられるのも面白いところです。

クリスマスツリー星団
クリスマスツリーの形が分かりやすいよう、この写真のみ180度回転させて南を上にしています。ひときわ明るく見えるのが「いっかくじゅう座 S星」で、クリスマスツリーの幹ないし台座に当たります(マウスオーバーで画像が切り替わります)。

また、コーン星雲の南西(写真右下方向)には「ハッブルの変光星雲」として知られるNGC2261が見えています。宇宙が膨張していることを示す「赤方偏移」を発見し、宇宙望遠鏡の名前にもなっているアメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが、この星雲の形と明るさが短時間で不規則に変化することを発見したことから、「ハッブルの変光星雲」と呼ばれるようになりました。

この星雲は、その内部にある「いっかくじゅう座 R星」の光を反射して輝いていますが、このR星は生まれたばかりの星で周囲には塵が大量に漂っています。この濃密な塵がR星からの光をさえぎるなどすることで、星雲の輝き方が短時間で不規則に変化すると考えられています。

輝き方の変化はこちらのサイトなどで見ることができますが、ごく短期間のうちに刻々と輝き方が変わっているのが分かります。

ハッブルの変光星雲
ハッブルの変光星雲

このほかにも、このあたりは大小の散光星雲、散開星団が入り混じっていて、大変賑やかな領域です。なお、写真全体に広がっている赤い散光星雲にはSh2-273(シャープレス2-273)という名前が付けられています。

写野内の天体
NGC2259, Tr5(トランプラー5)は散開星団です。Tr5はCr105(コリンダー105)とも呼ばれます。図中の"Tr"や"Cr"、"B"、"LBN"、"LDN"といったカタログについてはブログのこちらの記事をご覧ください。

この領域は2017年末、天文改造デジカメと通常の光害カットフィルターのみを用いて撮影を試みたことがあります。当時としてはかなり頑張った方だと思うのですが、都心の強烈な光害と比べるといかんせん淡く、強引な処理によって色が濁ったりディテールが荒れたりと副作用がそれなりにありました。

そこで今回は、カメラとして冷却CMOSを用いるとともに、デュアルナローバンドフィルターであるOptolongのL-Ultimateを用いることとしました。このフィルターはOIIIおよびHα由来の光のみを高効率で透過するもので、カラーカメラにおける淡い散光星雲の描写に無類の強さを発揮します。

しかし一方で、この手のナローバンドフィルターは恒星や反射星雲の写りが悪いという弱点があります。例えば下図は、通常の光害カットフィルターであるLPS-D1またはL-Ultimateフィルターを用いて撮影したコーン星雲~Fox Fur Nebulaにかけての領域ですが、L-Ultimateを用いた方ではFox Fur Nebukaがほとんど写っていないこと、また恒星の数が明らかに少ないことが分かります。

光害カットフィルターとナローバンドフィルターの写りの違い
左のLPS-D1に対し、右のL-Ultimateは反射星雲や恒星の写りが明らかに悪く、いわゆる「ナローバンド臭い」絵になってしまっています。色彩も単調です。

この問題の解決策として、別途LPS-D1を用いた撮影も行い、これと合成することとしました。具体的には、両者を同程度にレベル調整したのち、StarNet V2で星雲と星とを分離。星雲についてはL-UltimateのものとLPS-D1のものとを比較明でブレンドし、星についてはLPS-D1のものを星の色に気を付けて処理したのち、前記のブレンド後画像と合成しています。

Fox Fur Nebula周辺の色がピンクに転んでしまったのがやや不満ですが、東京都心で撮ったことを思えば写りとしては総じて上々ではないでしょうか。

ちょっと面白いのは写真の右上にOIIIの豊富そうな領域が見えること。最初はフラットのしそこないかと思いましたが、構造もあるようですし、他のナローバンド作品を見ると写っているので、これは正しいのでしょう。

オリジナル画像

LPS-D1フィルターを用いて撮影した、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。レベル調整後の画像でようやく、うっすらと星雲らしき光芒があるのが分かりますが、かなり頼りない写りです。一方で、写っている恒星の数はL-Ultimateで撮ったものに比べて明らかに多いです。

こちらはL-Ultimateフィルターを用いて撮影した、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。さすがに高性能のナローバンドフィルターだけあって、レベル調整のみ行った段階ですでにコーン星雲や周辺の散光星雲が確認できます。。

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