M77とNGC1055(系外銀河、くじら座)
撮影日時 | 2017年12月9日 |
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撮影機材 | ビクセン ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセン SXP赤道儀 |
使用カメラ | Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3 |
ガイド鏡 | ペンシルボーグ(D25mm, f175mm) |
オートガイダー | ZWO ASI120MM |
感度・露出時間 | ISO100、1200秒×8コマ+300秒×8コマ |
備考 | IDAS/SEO LPS-P2-FFフィルター使用 |
どちらも、くじら座にある系外銀河です。左下にあるのがM77ですが、くじら座は全天4番目の広さを誇る大きな星座(1位:うみへび座(1303平方度) 2位:おとめ座(1294平方度) 3位:おおぐま座(1280平方度) 4位:くじら座(1231平方度))ですが、メシエ天体は意外なことにこの1つだけです。
M77は、実際の直径が約17万光年もあるメシエ天体中最大級の天体です。私たちの住む銀河系が直径約10万光年と言われていますから、その倍近い大きさです。地球からの距離も6000万光年以上あり、こちらもメシエ天体中最遠の部類です。
これほど遠くにあるにもかかわらず明るさは8~9等もありますが、このM77の中心核が大変活動的で、すさまじく明るく輝いているため。M77の中心には太陽の1000万倍以上の質量をもつ超巨大ブラックホールがあり、ここに物質が落ち込む際、その物質が加熱されて膨大なエネルギーを生み出しているものと考えられています。このような銀河は、提唱者の名前を取って「セイファート銀河」と呼ばれています。
一方のNGC1055は、ちょうどおとめ座のM104(ソンブレロ銀河)と同じような姿をしています。M77とおおよそ同じくらいの距離にある形の整った美しい銀河ですが、11等と暗いため、メシエらの使っていた小望遠鏡では見つけられなかったようです。発見したのはかのウィリアム・ハーシェルで、1783年のことです。
M77は銀河本体が明るい一方、周囲を取り巻く淡い腕が特徴的な天体です。そこで、中心核近くの渦巻きと周囲の腕の両方を生かすため、今回はオリオン大星雲の場合と同じく多段階露出を行っています。その甲斐あってか、どうにか中心部をつぶさずに表現することができました。
なお、くじら座付近はおとめ座付近と同じく天の川から最も離れた方向にあり、数多くの系外銀河が見られる領域です。この写真の中にもM77とNGC1055以外にたくさんの銀河が写りこんでいます。比較的目立つのは、写真中央左側に紡錘形に見えているNGC1072ですが、この他にも下でプロットしたように暗くて小さい銀河がたくさん見えます。この写真では、どうやら17等台後半の銀河まで写っているようです。
これらのうち、NGC1072はM77やNGC1055より5倍ほども遠い約3億4000万光年の彼方にある天体で、さらにPGC10354(正式名称:MCG +00-08-002)やPGC10146(正式名称:MCG+00-07-079)は約6億光年、PGC1145106(正式名称:2MASX J02430393-0022045)に至っては、地球から実に約10億光年も離れた位置にある天体です。
3億4000万年前は石炭紀で、シダ植物や巨大昆虫が栄えていた頃、6億年前は先カンブリア時代のエディアカラ紀で、最古の多細胞生物として知られる「エディアカラ生物群」(ディッキンソニアやスプリッギナなどが有名)が出現した頃、10億年前ともなると、シアノバクテリア(藍藻)が繁栄してようやく地球の大気中に酸素が増えてきた頃になります。
そんな大昔に出発した光が、現代の東京都心からわずか口径10cmの望遠鏡で捉えられて、今こうして見られるというのは、なんとも不思議な気がします。
オリジナル画像
コンポジット&処理前の画像です。M77の中心部は大変明るいので、この段階でも存在がハッキリわかります。ただ、ここから周囲の淡い腕をあぶり出すのはなかなか大変です。