光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

オリオン大星雲 M42(散光星雲、オリオン座)

撮影日時 2017年11月25日
撮影機材 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー1.08×DG(D60mm, f378mm)、ビクセン SXD赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3
ガイド鏡 ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 ISO100、1200秒×8コマ+75秒×8コマ+20秒×8コマ
備考 IDAS/SEO LPS-P2-FFフィルター使用

オリオン大星雲は、撮るだけなら都心からでも簡単に写る冬の定番だけに、私も望遠鏡購入直後からたびたび撮っている被写体です(2011年2012年2015年)。好きな天体だからということもあるのですが、定期的に撮ることで、自分の撮影技術、画像処理技術がどこまで上がったかのベンチマークになっています。前回撮影時以降、都心で淡い天体を撮影・処理する上での経験、ノウハウもたまってきていますので、今回はそうした技術も盛り込んで、東京都心でオリオン大星雲周辺部の淡い領域をどこまで表現できるかに注力してみました。

オリオン大星雲の周辺……というか、オリオン座周辺には星の材料となるガスやチリが大量に漂っています。このようなガスやちりの集まりを「分子雲」と呼びます。分子雲が星の光を受けて高いエネルギー状態になると、自分自身で輝きだして「輝線星雲」として見えるようになりますが、それ以外は、星の光をさえぎる「暗黒星雲」として、あるいは星の光を反射した「反射星雲」としてしか存在を確できません。馬頭星雲やM78のように部分的に目立つものは別ですが、通常、分子雲から届く光は極めて淡いもので、空の条件の良いところでないと捉えるのはかなり困難です。

しかし今回、低感度設定で1コマあたり最大20分の露出を与えるとともに、三色分解した各プレーンに対してNik Collectionの「Silver Efex Pro 2」で淡い部分を持ち上げる処理を併用した結果、M42周辺に漂う淡い分子雲を確認することができるようになりました(背景の色ムラのようなものがそうです)。東京都心で、しかも非冷却のカメラを使ってここまで撮った例は、あまりないのではないかと思います。

淡い部分を持ち上げることで犠牲になりがちな星雲中心部は、短時間露出のコマを加算コンポジットすることである程度カバー。ガスの奥底で生まれたばかりの星が輝き、周囲のガスを吹き払っている様子がよく分かるのではないかと思います。

オリジナル画像

1200秒露出の処理前画像です。ここ最近、「撮って出し」では影も形も見えないような淡い天体ばかり撮っていたので、処理前の段階で目的天体が見えると、なにかものすごい違和感を感じます(笑) M42、M43の上方には青っぽいNGC1977、通称「ランニングマン星雲」もうっすらと見えています。

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