M73(星群、みずがめ座)
撮影日時 | 2023年8月19日 |
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撮影機材 | ビクセン ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセン SXP赤道儀 |
使用カメラ | ZWO ASI2600MC Pro |
ガイド鏡 | ペンシルボーグ(D25mm, f175mm) |
オートガイダー | ZWO ASI120MM |
感度・露出時間 | 0℃, Gain=100, 露出30秒×4コマ |
備考 | IDAS LPS-D1使用 |
みずがめ座にあるM73は、メシエ天体としては奇妙な天体です。星雲でないどころか散開星団ですらなく、10~12等の白い4つの恒星が見かけ上Y字状に群れているだけなのです。そのため、星図や星表によっては省略されてしまっていることも少なくありません。とはいえ、メシエ天体のコンプリートを目指すなら、外すことはできない天体です。
メシエカタログに収載されているとはいえ、目立たない天体なので研究者の興味を引くことも少なく、本格的な研究はほとんど行われてきませんでしたが、これが散開星団なのか、見かけ上の「星群」なのかは一定の関心がもたれてきました。しかし、最近の位置観測衛星による観測で「ただの星群である」という可能性が大きく高まっています。例えば、欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた位置観測衛星ガイアが計測したデータによれば、各星の視線速度(天体が地球に近づく、または地球から遠ざかる速度)と地球からの距離は以下の通りです。
視線速度(km/s) | 距離(パーセク) | |
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BD-13 5809 | -26.17 | 706.814 |
BD-13 5808 | -8.46 | 321.43 |
Cl* NGC 6994 BWM 5 | -20.14 | 658.588 |
HD 358033 | -53.07 | 376.194 |
いずれの数字も見事にバラバラです。偶然これらの星が同じ方向に見えているだけと考えた方が自然でしょう。
当時のメシエ本人の観測では"Cluster of three or four small stars, which resembles a nebula at first sight, containing a little nebulosity"(一見すると星雲に似ている、わずかな星雲状物質を含む3つまたは4つの小さな星の集団)と記録しており、星雲状のものを認めているようですが、実際にはそのようなものは存在しません。メシエは数字に対してこだわりが強く、「彗星と紛らわしい天体をリストアップする」というカタログ本来の目的からは無理筋の天体(M40、M45など)を、数字を揃えるためだけにカタログに加えたりしています。しかしM73の場合はそういうわけでもなさそうです。メシエが見たという星雲状のものが、メシエの目の錯覚だったのか、使っていた望遠鏡のせいだったのかは、今となってはよく分かりません。
完全にただの「白い恒星」なので、撮影に際して気を付けたところは特にありません。とはいえ、現代に比べて性能の劣る当時の望遠鏡で「星雲らしきものを見た」というと、ロマンを感じるのも事実です。