光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

管理人について

HIROPON

東京都内……それも新宿、渋谷といった日本一の歓楽街から10kmと離れていない都心部に住んでいるただの星好きのおっさん。90年代末からネット上で「HIROPON」の名前で活動してきました(ただし天文に本格復帰したのは割と最近)。ちなみにバイオ系の研究者で、天文は完全に自分の趣味です。

星は小学校に入る前からずっと好きで、親に買ってもらった図鑑を繰り返し眺めたり、親の買い物についていくたびに近所の眼鏡屋の店頭に展示されてた天体望遠鏡を覗いたり(電柱の碍子しか見えませんでしたが)、当時渋谷にあった「五島プラネタリウム」に毎月通ったりしているような子供でした。自分が住んでいるところは、光害のせいで今も昔も3等星すら見えるかどうか怪しいような明るい空ですが、どうしてこんな環境で星好きに育ったのか、我ながらまったくもって謎です。

初めて手に入れた光学系は、小学校低学年くらいに五島プラネタリウムの売店で親に買ってもらったミザールの地上望遠鏡だったと記憶しています。たしか口径30mm、倍率30~40倍くらいだったでしょうか。倍率が高いくせに三脚には固定できず、ピントも鏡筒の伸び縮みで調節するという今から見れば極悪そのものの仕様でしたが、それでも喜んで月などを眺めていたのを思い出します。その後は、これまた格安で販売されていたノーブランドの双眼鏡(幸い、安いなりに作りはまともでした)で月や星を眺めていました。

スーパーミラー R-125S

中学生の頃はちょうど「ハレー彗星ブーム」で(ここで大体の歳がバレる)、自分もそれまでためてきたお小遣い&お年玉をほぼ全額はたいてビクセン製の反射望遠鏡(口径125mm, 焦点距離720mm)とスーパーポラリス赤道儀のセット(今は亡き天体望遠鏡専門店「アトム」のオリジナルセット「スーパーミラー R-125S」)、口径60 mmのガイド鏡、当時最新鋭の自動導入装置「マイコンスカイセンサー」などを購入。今から見れば、環境や自分の腕を省みない厨二病全開のチョイスですが、なんだかんだで大学生のころまでは観望に写真にとそれなりに活躍してくれました。

しかし、以降は忙しくなったことや家の事情もあって望遠鏡の使用回数も激減し、天文趣味自体からもしばらく離れることになります。

この焼けぼっくいに再点火したのが、翌年に金環日食を控えた2011年。なにしろ子供のころから図鑑を見て楽しみにしていた日食ですから、テンションが上がらないわけがありません。この年の夏にビクセンのアポクロマート屈折ED103SとSXD赤道儀を購入し、天文趣味に復帰しました。その後、色々と機材を買い足したり買い替えたりしながら現在に至ります。

都会で星を見る、天体写真を撮るということ

上にも書いたとおり、私の住まいは都心部にあります。そして自動車を所有していないため、望遠鏡を持って空の暗い郊外や山奥に遠征というのもほぼ不可能です。となると、自宅周辺で観測するしかないのですが、なにしろ超一等の光害地。月、惑星以外は望遠鏡で覗いてもほとんど絶望的な状況です。

日本の光害
日本の光害の状況("The night sky in the World"より)

しかし、逆に言えば月、惑星なら都心であっても十二分に楽しめます。また、星雲や星団の類にしても、本来の美しさではないにせよ数百年、数千年の時を経て地上に到達した光を見ていると、その息遣いを感じて何とも言えない神秘的なものを感じてしまうのです。

さらに、こんなひどい光害の中でも、デジタルの力を借りると街の光に埋もれていた本来の星空がわずかながら浮かび上がってきます。昨今のデジタルカメラの性能向上は著しいので、やってみると意外と写るもの。銀塩写真の時代にはとても考えられなかったことです。「あえて悪環境の中、目に見えない対象をいかにしてあぶりだすか」という、いささかマゾヒスティックな楽しみ方ではありますが、光害で見えなくなっていたとしても星は変わらずそこにあるのだ、ということを実感できるのは醍醐味と言えるでしょう。

近年、天文雑誌のフォトコンは常連を中心にどんどん高度化、先鋭化しています。その影響もあるのか、「都心なんかで望遠鏡使ってもムダ」とか、「空の暗いところに遠征しなければ意味がない」とか、「高価な機材を使わないとまともな写真は撮れない」とかいった感じの主張が幅を利かせすぎていて、天文趣味の敷居を無駄に高くしているような印象があります。天文趣味人口の減少がささやかれていますが、この調子ではそれも当たり前です。

誰もが容易に遠征に行けるわけではないですし、百万円単位で機材にポンポン金をつぎ込めるわけでもありません。しかし一方で、誰もがフォトコンを目指す必要もないわけです。他人は他人、自分は自分でマイペースに楽しんでいけばいいのではないかと思います。それを可能にする技術はいまや簡単に手に入るのですから。

↑ PAGE TOP