白昼の金星
撮影日時 | 2016年2月19日 |
---|---|
撮影機材 | ビクセン ED103S+NLV10mm(D103mm, 合成f3180mm)、ビクセンSXP赤道儀 |
使用カメラ | ZWO ASI120MC |
露出時間 | 約60秒, 約30fps |
その他 | 約900フレームをAutostakkert!2によりスタッキング後、Registax6でウェーブレット処理 |
2016年2月17日に金星が最大光輝を迎えましたが、その2日後の19日、青空の中の金星を捉えました。
地球よりも太陽の内側にある水星や金星は地球からの見かけ上、太陽からある角度以上離れることはありません。その最大値を「最大離角」といい、太陽の東側にもっとも離れる「東方最大離角」と西側にもっとも離れる「西方最大離角」とがあります。そして、「太陽-金星-地球」の順に並んだときが「内合」で、「金星-太陽-地球」の順に並んだときが「外合」です。
金星が最も明るく輝く「最大光輝」は内合前後の36日頃に訪れ、その時の明るさは実に最大-4.7等にも達します。これだけ明るいと、昼間の青空の中でも肉眼でその姿を捉えることができるほどです。下の図は、下側が地球と金星の軌道を上から眺めたもの、上側がそれぞれの位置での地球からの見え方を示したものですが、最大光輝の時の地球と惑星の位置関係、そして地球からの見え方がよく分かると思います。最大光輝の時は三日月状に欠けているため一見暗くなりそうに思えますが、地球との距離が近いために輝いている部分の面積が大きく見え、明るく見えるのです。
以前、東方最大離角のときの金星を同じ光学系で撮っていますが、それと比べると見かけの大きさが大きくなっているのがハッキリします。
この日は快晴に恵まれ、場所さえわかれば肉眼でその姿を確認することができました。下の写真は、上の写真を撮ったついでにアイピース(NLV 20mm)にコンパクトデジカメ(PowerShot S120)を押し当てて「簡易コリメート法」で撮ったものですが、青空の中で輝いている様子がよく分かるかと思います。
ただ、太陽光に照らされる日中だけに、いざ金星に望遠鏡を向けてみるとシーイングは最悪で、三日月状の形すら崩れるほど。実際、上のコリメート法で撮った写真でも形がいびつに写っています。それでも動画のスタッキングでちゃんと形になるのですから、今の画像処理技術は大したものです。
なお、写真は伝統的な惑星写真の流儀に従い、南を上にしています。ただ、このあたりは観測者によっても混乱があるようで、特に内惑星の場合は、太陽との位置関係を考えたときに不自然にならないよう北を上にする場合も多いようです。現在は国内外、撮影者の公私問わず混在している状況で、いずれどちらかに収束していくにしても、かなりの時間がかかりそうです。