光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

ハート星雲 Sh2-190 & 胎児星雲 Sh2-199(散光星雲、カシオペヤ座)

撮影日時 2025年10月17日
撮影機材 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 32mm F4ガイドスコープ
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 -10℃, Gain=300, 露出300秒×24コマ
備考 Svbony SV220 H-Alpha & OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]使用

カシオペヤ座にある大型の散光星雲です。西側(写真右側)にあるのがSh2-190、東側にあるのがSh2-199で、その形からそれぞれ「ハート星雲」、「胎児星雲」という愛称がつけられています。ちなみに海外では、Sh2-190の方は「Heart nebula」と同じですが、Sh2-199はHeartと対になる意味で「Soul nebula」と呼ばれています(2つ合わせて「Heart & Sowl nebulae」)。

これらの星雲はしばしばIC1805およびIC1848として知られていますが、正確には、これらのナンバーは各星雲の中心に存在する散開星団に与えられたものです(下図参照)。

ハート星雲 & 胎児星雲周辺の星雲・星団
ピンクが散光星雲、紫が散開星団を表します。「Cr」はコリンダーカタログに収録されている散開星団です。Maffei 1, 2およびWeBo 1については後述。

これらの散光星雲はいずれも、散開星団にある若く高温の星(O型主系列星)からの強烈な紫外線により、ガスが電離されて輝いています。ハート星雲の場合はIC 1805、胎児星雲の場合はIC 1848およびCollinder 33, 34に属する星が輝きの原因となっています。

ちなみに、この領域にある散開星団としてはNGC 1027が目立ちますが、7500光年ほど彼方にあるハート星雲&胎児星雲に対し、我々から3100光年ほどとはるかに近い位置にあり、両星雲とは物理的な関係は全くありません。遠近感が感じられて面白いところです。

また、この写野内には他にも興味深い天体がいくつか写っています。

まずは「マフェイ 1」(Maffei 1)という系外銀河です。私たちの銀河系が属している「局部銀河群」から最も近い銀河群である「マフェイ銀河群」に属している巨大な楕円銀河で、地球からの距離は約1000万光年ほどと見積もられています。

この系外銀河は1967年、イタリアの天文学者パオロ・マフェイによって、赤外線フィルムを用いて発見されたもので、意外と最近のことです。というのも、この銀河の位置が、ちょうど銀河系内でチリの密度が最も濃い天の川と重なっていたため、チリによって明るさが大きく減じていた上、色も赤みがかっていて*7、当時星図作成によく使われていた青色に感度の高いフィルムにはほとんど写らなかったのです。

この減光のため、マフェイ 1の明るさは4.7等も暗くなっている上、視直径も小さく見えてしまっています。もしチリによって隠されていなければ、少なくとも北天で10本の指に入る程度には大きく見える系外銀河だったはずです。

そして写真左手の「マフェイ 2」(Maffei 2)。マフェイ 1と同じく「マフェイ銀河群」に属する渦巻銀河です。地球からの距離はマフェイ 1と同程度。この銀河も、銀河系内のチリによって可視光の実に99.5%が遮断されていて、可視光ではほとんど検出されませんでした。

ちなみに、マフェイ 1、2ともに、シャープレスによって「銀河系内のHII領域」と誤解され、それぞれSh2-191、Sh2-197とナンバーが振られていたりします。

そしてもう1つ、ハート星雲の「お尻」のあたりにあるのが惑星状星雲「WeBo 1」です。「PN G135.6+01.0」としても知られるこの天体が見つかったのは、なんと1996年と本当につい最近のことです。B等級で16.25等、V等級で14.45等と決して明るくない上に小さいのは確かなのですが、有名な宙域にある割に、ずっと見落とされていたのは意外な感じがします。地球からの距離は約5200光年ほど。中心星を取り巻くように広がる薄いリング状のガスを、斜めから見下ろすような形になっています。こういうのをアップで狙ってみるのも面白いかもしれません。

さて、今回の被写体は2023年にもデュアルナローバンドフィルターであるL-Ultimateを用いて撮影していますが、今回はちょうどSvbony Japanから新製品フィルターのレビューを依頼されたタイミングでもあり、同社の「SV220 H-Alpha & OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]」を用いて撮影しています。性能としてはL-Ultimateとほぼ同等ですが、今回は画像処理にPixInsightを用いたこともあり、以前よりも淡い部分をしっかり炙り出せたかと思います。

撮影日時 2025年10月17日
撮影機材 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 32mm F4ガイドスコープ
オートガイダー ZWO ASI290MM
感度・露出時間 -10℃, Gain=300, 露出300秒×24コマ
備考 Svbony SV220 OIII & SII デュアルナローバンドフィルター [7nm]使用

こちらは、同被写体をOIII線(波長500.7nm)およびSII線(波長671.6nm)のみを透過するフィルターで撮影したものです。OIIIが青緑、SIIが赤で写っていますが、特にSIIが星雲の縁の部分に集中しているのがよく分かります。

硫黄は電離しやすく、Sh2-190やSh2-199のような星形成領域……すなわち高エネルギーの環境下ではたやすくS++(二階電離硫黄)になってしまいますが、逆に星雲外縁部では中性水素から電子を受け取ってS+(一階電離硫黄)となります。このS+の放つ光がいわゆるSII線で、星雲外縁部で多く見られる理由です。

オリジナル画像

Hα & OIIIで撮影したものについて、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。軽く強調しただけで、星雲の特徴的な姿が分かるようになってきました。

同じくOIII & SIIで撮影したものについて、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。Hα & OIIIのフィルターに比べて半値幅が広く(7nm)、光害の光が混ざりこみやすい上、そもそもOIIIやSIIの強度がHαに比べて低いため、星雲の姿が目立ちません。

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