ネオワイズ彗星(C/2020 F3)
撮影日時 | 2020年7月19日 |
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撮影機材 | ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀 |
使用カメラ | ZWO ASI2600MC Pro |
ガイド鏡 | ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm) |
オートガイダー | ZWO ASI120MM |
感度・露出時間 | 0℃、Gain=450、30秒 |
備考 | IDAS LPS-D1フィルター使用 |
ネオワイズ彗星(C/2020 F3)は、2020年3月27日、 赤外線観測衛星NEOWISE(Near-Earth Objects Wide-field Infrared Survey Explorer, 地球近傍天体 広域赤外線探査衛星)による観測から発見された彗星です。
1997年のヘール・ボップ彗星以来、北半球では長らく、見やすく明るい彗星が現れませんでしたが、2019年末から2020年前半にかけて、非常に明るくなるのではないかと思われる彗星が次々と現れました。まずは2019年末に現れたアトラス彗星(C/2019 Y4)。発見直後から猛烈な勢いで明るくなり、太陽に接近する頃にはとてつもない明るさになるのではないかと期待されました。ところが、太陽へ接近途中の3月末、核が分裂するのが観測され、彗星は急速にその明るさを落としていきました。
次いで2020年3月25日には、太陽観測衛星SOHOに搭載された観測機器「SWAN」によって彗星が発見され、スワン彗星(C/2020 F8)と命名されました。発見直後の増光はおとなしいペースで、最大でも6等前後かと思われたのですが、4月下旬から急に増光の勢いが増大。マイナス等級入りも見えるようになってきました。ところが5月に入って間もなく、増光がぴたりとストップして逆に減光に転じました。この彗星も核が崩壊したようで、結局5月2日ごろに5等前後を記録したのが最大の明るさということになりました。
このような中、発見されたのがネオワイズ彗星(C/2020 F3)です。発見当時の明るさは17等程度でしたが、近日点距離が約0.29天文単位と水星より内側に入り込むことから、近日点通過時には2~3等程度の明るさになるだろうと予想されました。ところが、彗星は近日点通過直前になって予想外の増光を見せ、6月末~7月頭にかけて0~1等にまで達しました。尾も非常に発達し、海外などでは明るく立派な姿が多数撮影されています。
しかし、折あしく日本は記録的な梅雨の真っ最中。特に私の住んでいる東京は、6月末からの連続降雨記録が更新中というありさまで、彗星の姿はおろか、雲の切れ間さえ見えない状況でした。全国的にもほぼ同様の状態で、かろうじて北海道のみ晴天に恵まれ彗星の姿を捉えることができていました。
しかしながら7月19日、ようやく梅雨前線が南に少し離れ、久しぶりに東京に晴れ間が戻ってきました。この機をとらえ、どうにか彗星の姿を捉えたのが上の写真になります。もっとも、薄雲越しのこの写真は構図確認のつもりで撮影したもので、本命の撮影はこの後、複数コマにわたって撮影しています。しかし、本撮影を始めても薄雲は取れず、ついには雲に完全に覆われて彗星そのものが見えなくなってしまいました。結局、テストとして撮影したコマが最も写りがいいという、なんとも不完全燃焼な結果に。とはいえ、記録的な梅雨のさなかに彗星の姿が捉えられただけでも御の字と言えるでしょう。
ヘール・ボップ彗星以来、久しぶりに北半球で0等級程度まで明るくなった彗星でしたが、惜しむらくはあまりに天気が悪すぎました。また、彗星の明るさ等を冷静に比較してみると、過去に「大彗星」と呼ばれた彗星たちと比べるとやや物足りなさを感じるのも事実です。薄雲越しでも姿が捉えられるあたり、間違いなく立派な彗星ではあるのですが……。
昔、天文ガイドの記事かなにかで「事前に情報を知らない一般人が空を見上げて、それと気づくのが大彗星」という話を聞いたことがあります。自分の感覚からしても納得のいく定義ですが、これからしても、やはり「大彗星」と呼ぶにはちょっと足りないかなという印象です。