光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

アトラス彗星(C/2019 Y4)

撮影日時 2020年3月21日
撮影機材 ビクセン ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3
ガイド鏡 ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 ISO100、1200秒×8コマ
備考 IDAS/SEO LPS-P2-FFフィルター使用

アトラス彗星(C/2019 Y4)は、2019年12月28日、 ハワイのATLAS (Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System, 小惑星地球衝突最終警報システム)によって発見された彗星です。

発見された当初は太陽から2.5天文単位以上離れていたのですが、これほど遠方にあるにもかかわらず非常に活発な活動を見せ、光度もものすごい勢いで上がっていきました。1月末に16~17等だった彗星は、2月末には11~12等、3月半ばには早くも8~9等に達しました。この頃から光度の上昇速度は鈍り始めましたが、そもそも揮発する物質が二酸化炭素など低温で揮発するものから水に切り替わるタイミングで、この変化は織り込み済み。5月末の近日点通過前後にはマイナス等級に達するかという予報も出ていました。

ところが、3月末には光度の伸びが鈍るどころか停滞し、ついには減光に転じました。コマの形もいびつになり、どうも核が崩壊したらしいとささやかれ始める始末。結局、4月6日に分裂した核が確認され、彗星が崩壊してしまったことが確実となりました。もはや肉眼彗星となることは望めず、一般の人が楽しめる彗星としては、残念ながら事実上「終わって」しまいました。

アトラス彗星(C/2019 Y4)の光度曲線
3月中旬ごろから光度の伸びが明らかに鈍化し、3月末をピークに明るさは逆にどんどん暗くなっていきました。しかし、分裂した核はしぶとく生き残り、5月ごろには太陽接近に伴ってわずかとはいえ増光すら見せました。(データはComet Observation Databaseより)

上の写真は、光度の伸びが停滞し始めた直後、3月21日に撮影したものです。彗星は恒星とは違った動きをするため、普通に恒星時で追尾すると流れてしまいます。しかし今回は、ガイドソフトであるPHD2に装備されている彗星追尾機能を用いて彗星の追尾を行いました。あらかじめステラナビゲータ等で、1時間当たりの彗星の運動を調べて入力しておく必要がありますが、きっちりと彗星を追尾できていることが分かります。安心して長時間の露出をかけられるので、都心での撮影にもかかわらず、青緑色が結構きれいに出てくれました。ごく短いですが、右上→左下に向かう尾も見えています。

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