光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

しし座のトリオ M65, M66, NGC3628(系外銀河、しし座)

撮影日時 2025年2月24日
撮影機材 ビクセン ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 -20℃, Gain=100, 露出300秒×88コマ
備考 IDAS LPS-D1フィルター使用

しし座の後ろ足の部分にある3つの銀河の集団で、西側(右下)がM65、東側(中央下)がM66、北側(中央上)がNGC3628です。地球から約3500万光年の位置にあるこれらの銀河は実際の位置も近く、「M66銀河群」という小集団を形成しています。

「3つの銀河が近接している」というと、しし座にはもう1つ、M95, M96, M105のトリオもありますが、このM65, M66, NGC3628のトリオの方が明るく、またより近接していて同時に捉えやすいことから人気があるようです。また、M65は比較的整った形の渦巻銀河、M66は他の銀河からの重力の影響で形が歪み、NGC3628は渦巻銀河を真横から見た形……と、3つの銀河の形がそれぞれ異なるので、写真に撮ると面白い対象です。

この領域は2013年2017年と撮影しているのですが、2013年は露出の加減が分かっておらず、宵のうちの光害の酷さもあってかなり残念な感じに。2017年はデジカメでの撮影において有効な「低感度・長時間露出」を試みた結果、銀河の写り自体はまずまずなものの、ダイナミックレンジの狭さが祟ってほとんど白く飛んでしまいました。

そこで今回は、冷却カメラを用いてたっぷりひと晩、露出を与えることにしました。結果として、ソフトウェアの進化も大きいものの、M66(中央下)の淡く乱れた腕、さらには(淡くて見づらいですが)NGC3628(中央上)の左上に伸びる潮汐尾まで確認でき、東京都心で撮影したにしてはおおよそ満足の行くレベルに仕上がったかと思います。

M65は、地球から約3500万光年の距離にある中型の渦巻銀河です。渦巻銀河といっても腕はあまり目立たず、色合いからも分かるように年老いた星が多くて比較的不活発な銀河です。

とはいえ、中心部を取り巻く塵の帯が目立ちますし、銀河の周縁部に歪みが見られることから、比較的最近にM66やNGC3628と相互作用したとも言われています。しかし、それにしては上述のように星形成が不活発なので、そもそも相互作用がなかったか、あったとしても弱かったのだろうと考えられています。

一方のM66は、一見して激しい相互作用の痕跡が残る渦巻銀河です。相互作用の相手はNGC3628。両者の衝突ないし接近によって腕は歪み、その中では激しい星形成が起こっていて、散光星雲と若くて青い星の群れが多数見られます。また、潮汐力によって銀河本体から引き剥がされた星が、淡い腕となって取り巻いているのも分かります。

そして、M66と相互作用した相手のNGC3628。渦巻銀河を真横から見ている姿をしていて、その中央を塵の帯が走る姿から「ハンバーガー銀河」という愛称があります。M65やM66のすぐ近くにあることから、メシエが見逃したのが不思議な気がしますが、M65やM66と比べると一段暗く、当時メシエが観測に使用していた機材では見えなかったのでしょう。

こちらも相互作用の痕跡がハッキリしている銀河で、円盤がX字状に歪んでいるのに加え、その左上に、銀河から星が相互作用で引き剥がされてできた、ごく淡い潮汐尾が伸びています。空の暗いところで撮影すると、銀河の直径の3倍ほども伸びているとのことで、いつかは捉えてみたいものです。

オリジナル画像

コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。M65やM66は集光が比較的しっかりしているのでレベル調整後は姿がハッキリ分かりますが、NGC3628とは明るさにかなり差があるのが分かります。これではメシエも見逃すはずです。

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