光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

わし星雲 M16(散光星雲+散開星団、へび座)

撮影日時 2020年4月30日
撮影機材 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー1.08×DG(D60mm, f378mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3
ガイド鏡 ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 ISO800、900秒×8コマ
備考 IDAS NebulaBooster NB1フィルター使用

へび座にある天体で、散光星雲と散開星団の組合せという珍しいタイプのメシエ天体です。本来、M16という番号は散開星団(NGC6611)の方に対してだけ振られたものでしたが、今では背景の散光星雲もひっくるめてM16と呼ばれています。散光星雲の部分が、羽を広げた鷲のように見えることから「わし星雲」という愛称があります。

ちなみに、冬の星座のいっかくじゅう座にも「わし星雲」と呼ばれる散光星雲(IC2177)がありますが、全くの別物。英語ではそれぞれ“Eagle nebula”(M16)と“Seagull nebula”(IC2177)なので間違える危険性はないのですが、なぜ後者を「かもめ星雲」じゃなくて「わし星雲」と呼ぶようになってしまったのか……。紛らわしいことこの上ないので、人に伝えるときは要注意です。

M16は8年前4年前と撮影していますが、8年前はハードウェアトラブルで撮影が中途半端に、4年前は「低感度・長時間露出」の手法をとる前の撮影だったので、写りに不満がありました。そこで今回は、輝線のみを選択的に通すIDASのNebulaBooster NB1フィルターを用い、「低感度・長時間露出」を行うことでHα領域をコントラスト良く抽出することを目指しました。

ただ、撮影を行った夜は予想通り大気の透明度が最悪で、さそり座で見えるのはアンタレス(1.1等)とジュバ(2.3等)のみ。はくちょう座もデネブ(1.3等)とサドル(2.3等)しか見えないというありさまでした。おそらく最微等級は、天頂付近でも良くて2.5等くらいしかなかったのではないかと思います。高度が下がると空は猛烈に明るくなり、沈みかけの北斗七星など、升の部分を構成するドウベ(1.8等)、メラク(2.3等)、フェクダ(2.4等)でさえほとんど見えなくなってしまいます。どの程度酷い空だったのかは、下の「撮って出し」のオリジナル画像を見れば分かるかと思います。

これほど悪い条件でしたが、仕上げた画像では、ある程度淡いところまでどうにか抽出できました。4年前と比較すると、使っているフィルターが違うとはいえ差は大きく、撮り方含めてさすがに進歩はしたかなと思います。

なお、M16の左下には楕円形の星雲、Sh2-48が見えています。また、M16のすぐ右上には散開星団が見えていて、4年前には正体が分からなかったのですが、調べてみるとこれにはTr 32(Trumpler 32)というカタログナンバーが振られています。スイス生まれのアメリカの天文学者ロバート・トランプラー(Robert Julius Trumpler, 1886~1956)が作成した散開星団のリストに掲載されているものです。

オリジナル画像

カメラで撮ったままの画像です。光害カット効果の大きなNubulaBooster NB1フィルターを用いているにもかかわらず、バックグラウンドは大きく上がってしまっていて、星雲は「創造の柱」周辺の明るいごく中心部しか見えません。

<< 前のページに戻る

↑ PAGE TOP