IC1396(散光星雲、ケフェウス座)
撮影日時 | 2017年11月19日 |
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撮影機材 | ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀 |
使用カメラ | Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3 |
ガイド鏡 | ペンシルボーグ(D25mm, f175mm) |
オートガイダー | ZWO ASI120MM |
感度・露出時間 | ISO100, 露出900秒×12コマ |
備考 | IDAS/SEO LPS-P2-FFフィルター使用 |
ケフェウス座にある散光星雲です。角度にして170分×140分ほど……直径で満月5~6個分もの広がりを持つ大型の散光星雲ですが、大変淡く、肉眼でその姿を見ることはできません。秋の天の川の中にある散光星雲は、どれも形は面白いものの、淡いものが多い印象です。
星雲の左上にあるオレンジ色の星はケフェウス座μ星で、3.4等~5.1等の間で周期的に明るさの変わる変光星です。太陽の1000倍ほどもの直径がある赤色超巨星で、肉眼で見える星の中では最も巨大なものの1つです。そのあまりの赤さから、ウィリアム・ハーシェルによって「ガーネットスター」の愛称が与えられました。「ガーネット」はご存知の通り、宝石の「ざくろ石」のこと。IC1396が色といい形といい、ザクロの実っぽく見えるのと妙に一致していて、面白いところです(もちろん、単なる偶然です)。
星雲の方は、内部に暗黒星雲が複雑に入り組んでいるのが分かります。なかでも有名なのは、星雲中央右側に見える、暗黒星雲の縁を明るいS字状のリムが取り囲んでいる構造で、その形から「象の鼻星雲(Elephant's trunk nebula)」という愛称がついています。
星雲の姿は、ちょうど「ばら星雲」をずっと大きくして、うんと淡くしたような感じですが、星が盛んに生まれている場である「ばら星雲」同様、このIC1396でもガスやチリが自身の重力で集まり、星が次々と生み出されています。上記の「象の鼻星雲」のあたりは特にその活動が活発なあたりです。
さてこの写真ですが、撮影地である自宅近くの公園は北天の光害が特にひどく、一方でIC1396は非常に淡いので、使用する光害カットフィルターを普段使っているIDASのLPS-P2からOPTOLONGのCLS-CCDに変更してみました。CLS-CCDは、散光星雲の輝きの元である酸素や水素が発する光の波長付近のみを通すような特性を持っていて、このような天体を撮影するにはうってつけです。
その甲斐もあってか、猛烈な光害の影響でさすがに露出不足の感は否めませんが、悪条件の中、どうにか大きく広がる星雲の姿を炙り出すことができました。それでもかなり淡いのは確かで、このあたりの天体が今の手持ち機材、現在の自分の手技、この場所の空の状態で普通に撮れる限界に近いんじゃないかと思います。
東京都心&非ナローバンド、非冷却カメラで、それなりに姿がとらえられる時点で御の字と言っていいのかもしれません。
オリジナル画像
コンポジット&処理前の画像です。ガーネットスターのオレンジ色が鮮烈ですが、それ以外はほとんど分かりません。この星雲がいかに淡いかよく分かります。