光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

はくちょう座ループ(超新星残骸、はくちょう座)

撮影日時 2023年7月16日
撮影機材 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 0℃, Gain=100, 露出180秒×14コマ(カラー)+Gain=300, 300秒×37コマ(ナロー)
備考 IDAS LPS-D1 & Optolong L-Ultimate使用

一般に「網状星雲」として知られる、はくちょう座にある有名な超新星残骸です。1~2万年前に、太陽の12~20倍程度の質量を持つ天体の超新星爆発によって飛び散ったガスが輝いているもので、見かけの大きさにして3度ほど、実サイズにして直径約50~65光年にわたってフィラメント状の淡いガスが広がっています。その全体を指して「はくちう座ループ」(Cygnus Loop)という呼び名がついています。広がりが大きいだけに、下図に示すように、ガスの濃い部分を中心に複数のカタログナンバーが振られています。

はくちょう座ループ(Wikimedia commonsより)
NASAの人工衛星Galaxy Evolution Explorerにより、紫外線域で撮影されたはくちょう座ループです。淡いガスが薄く大きく広がっているのが分かります。

この領域は過去にも撮影したことがありますが、当時の撮影機材はデジカメで、淡いガスを表現するには能力が不足していました。今回は冷却CMOSの使用とともに、L-Ultimateフィルターを用いてHαおよびOIIIを効果的に抽出することを狙いました。また、L-Ultimateのようなナローバンド系フィルターを用いると恒星の色や表現がおかしくなりがちなので、別途、一般的な光害カットフィルターであるLPS-D1を用いて撮影した画像を用意し、これと合成しています。

結果として、東京都心から撮影したとは信じがたい程度にはガスを浮き立たせることができたかと思います。特に中央の「ピッカリングの三角形」付近は水素(Hα, ピンク色)と酸素(OIII, 青緑)とがもつれるように絡み合って、美しい眺めです。

また、ちょっと変わったところでは、天の川の近くにもかかわらず小さな系外銀河が写りこんでいます。上の写真に示したNGC7013がそれで、明るさ11.5等、大きさ4分角×1.4分角の小さな銀河です。地球からの距離は約4000万光年。口径5cmちょっとの小さい望遠鏡なので、構造など詳しい様子は分かりませんが、銀河系の腕を超えてこんなものが写りこんでいるあたり、なかなか面白いものです。

オリジナル画像

LPS-D1フィルターを用いて撮影した、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。そもそもの目的が恒星像メインなので星雲の写りは淡いですが、網状星雲の左側は十分に確認できます。

L-Ultimateフィルターを用いて撮影した、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。超新星残骸のようにHαおよびOIIIのみで輝いているような天体に対してL-Ultimateフィルターは特効で、1コマ撮りでも星雲の存在がハッキリ分かります。

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