光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

EdgeHD800のカスタマイズ

概要

EdgeHD800は、レビュー記事の方でも書いたとおり、基本性能の優れた使いやすい鏡筒です。しかし、それでも使い勝手や性能改善のために手を入れた方がよさそうなところが何か所かあります。

一方、セレストロンはアメリカを中心に全世界的に展開していることもあり、サードパーティー製の強化パーツが豊富に存在します。個人輸入の手間さえ惜しまなければ、これらのパーツを取り寄せることで簡単に性能強化を図ることができます。

この項では、実際に私が使用している強化パーツ類について紹介するとともに、個人輸入の方法や注意点についても軽く触れたいと思います。

ドブテイルバー(CGE)C8用

セレストロンのシュミットカセグレン系の鏡筒にはアリガタレール(海外ではドブテイルバー(Dovetail bar)と呼びます)が装着されていますが、国内で販売されているC8やEdgeHD800といった口径20cmクラスの鏡筒にはいわゆる「ビクセン規格」……セレストロンで言うところの「CG5規格」のバーが装着されていることがほとんどです。この規格は世界標準ともいえるもので、様々なメーカーの架台に容易に載せることができ大変便利なものです。

しかし、この鏡筒で直焦点撮影を行おうと思った場合、バー自体がゆがむ可能性のほか、これをキャッチする架台側のアリミゾがえてして固定力不足気味なのもあって、ガイドが流れがちです。

そこで、このバーを幅の広い「ドブテイルバー(CGE)C8用」に交換しました。バーの規格としては、セレストロンでは「CGE規格」と呼んでいますが、一般には「ロスマンディ規格」と呼んだ方が通りがいいかもしれません(ロスマンディ(Losmandy)はアメリカの天文機器メーカー)。

CG5規格のバーと並べてみるとその違いは一目瞭然。CGE規格のバーは「バー」というよりはほとんど「板」で、強度は段違いです。併せて、架台側のアリミゾを「★コスモ工房」製のダブルクランプ仕様のものに交換したので、固定強度の不安は一切なくなりました。

しかし一方で、頑丈なだけにバーだけでも900g近くあり、アリミゾの強化も含めるとそれなりの重量増になります。システムによっては、強化するつもりが重量増によってかえって不安定に……などということにもなりかねないので、トータルバランスには十分注意する必要があります。

ドブテイルバーの交換手順

さて、一見簡単そうなドブテイルバーの交換ですが、実はいくつか罠がありますので、その方法を紹介しておきます。おそらくC8も方法としては同じだろうと思います。

上の写真がビクセン規格(CG5規格)のドブテイルバーの固定状況です。筒先側で1本、主鏡側で2本の六角穴付ボルトでバーが固定されています。罠の1つはこのボルトの規格で、これらを回すには、前者はインチ規格で3/16の六角レンチが、後者はISO規格で3.5mm径の六角レンチが必要になります。しかもドブテイルバーを買ってもレンチはついてきませんので、別途自分で用意する必要があります。ミリメートルが基準のISO規格とインチ規格とが混在しているあたり、いかにもアメリカ企業の製品ですが、どうにも困ったものです。

インチ規格のレンチはもちろん、ISO規格のレンチも「3.5mm」というサイズは国内では割と珍しいので、大きめのホームセンターか、通販を利用してレンチを入手してください。

上記のネジを回してバーを外したら、あとはCGE規格のバーに交換……と行きたいところですが、ここにも罠があります。

上の写真はビクセン規格(CG5規格)のドブテイルバーとCGE規格のドブテイルバーを並べたものですが、バーの幅の違いに応じて、固定用のネジ穴の位置が異なるのが分かると思います。つまり、そのままでは鏡筒に取り付けられません。

鏡筒をよく見ると、ビクセン規格(CG5規格)ドブテイルバーの外側にイモネジがはまっているのが分かります。ここがCGE規格ドブテイルバーを留めるためのネジ穴。イモネジで目隠しされているわけです。

このイモネジは2mm径の六角レンチで外すことができますが、ロック剤が塗ってあって非常に固いです。思いっきり力を入れて回してください(回す方向を間違えないように)。イモネジが外れたら、なくさないようにビクセン規格(CG5規格)側のネジ穴に軽くねじ込んでおくとよいでしょう。

ここまで来たら、あとは元と同じように取り付けるだけです。

Astrozap Aluminum Dew Shield

各望遠鏡メーカーの鏡筒に対応したフードを多数取り揃えている、米Astrozap社のアルミニウム製フードです。

筒先に補正板があるシュミットカセグレン系の望遠鏡では、迷光を防ぐためにフードは必須です。しかしレビューで書いたように、EdgeHD800は筒先が絞られたような形状になっていること、またアリガタが筒先まで伸びていてフードに切欠きが必要なことから、「かぶせ型」や「巻きつけ型」のフードをしっかり固定しにくいという問題があります。

そこで、いいものがないかと海外のサイトを回っていて見つけたのがこのフード。

材質はその名の通りアルミニウムで、内側には厚めのパイル地の生地が貼られています(湿度の高いところでは、おそらくこの生地がある程度吸湿の役目も果たすのでしょう)。塗装は鏡筒のものに近く、フードを付けても違和感はありません。フードの直径は鏡筒の直径より一回り大きくなっていて、フードの根元にはフードを鏡筒に固定するためのプラスチック製ネジが4本あります。フードを筒先からかぶせたのち、このネジで鏡筒を四方から押さえるわけです。ネジはプラスチック製なので、鏡筒を傷つける心配はありません。

フードには2対4か所の切欠きがあって、CG5規格(=ビクセン規格)、CGM規格(=ロスマンディ規格)のどちらのアリガタがついていても対応可能になっています。さらに、CGM規格の切欠きがついている側には、Fastarを使用した際にカメラからのケーブルを逃がすためのスリットも設けられています。

価格は125ドル(当時)と、ただのフードにしてはかなりいい値段がしますが、撮影中にフードがずり落ちたり、口径がケラれたりする心配をしなくて済むのは、精神衛生上助かります。

Bob’s Knobs

Bob’s Knobsは手回しの光軸調整ネジの製造・販売で有名です。セレストロンに限らず、多くの望遠鏡に対応した製品を取り扱っています。

EdgeHDの光軸調整ネジはプラスネジで、ドライバーがないと回すことができず不便です。そこで、ネジをこれに交換しました。価格は20ドルちょっと(当時)。EdgeHDの光軸調整ネジはM3のミリネジなので、手頃な手回しネジを見つけることができれば代用可能ですが、副鏡ユニットの固定リングやつまみ、鏡筒のふたなどと干渉せず、かつ長さの適当なネジを見繕おうとするとなにかと大変でしょう(特に副鏡ユニット固定リングやつまみとのクリアランスは結構シビアな感じです)。うっかり副鏡を固定しそこなって破損でもしたら目も当てられませんので、安心料と考えれば納得できる範囲かと思います。

工具を使わずに光軸調整ができるのはやはり便利で、特に頻回の光軸調整が必須なシュミットカセグレン系では作業効率向上の効果は大きいです。

Deep Space Products TEMP-est

完全な密閉鏡筒であるEdgeHDでは、温度順応を促進するためにリアセルに換気用のチューブベントが設けられています。しかしこの換気孔はかなり小さく、しかも積極的に吸排気するような機構は備えていないので、効果としては「気休め」に近いものがあります。

そこで、アメリカのDeep Space Productsから、このチューブベントと交換で取り付けるファンユニット”TEMP-est”を取り寄せました。価格は165ドル(当時)。ちなみに”TEMP-est”は”TEMPerature Equilibration System for Telescopes”の略だとか。

ファンユニットは2つ1組。これらと両者をつなぐケーブルとがセットになっています。ファンユニットは一方が吸入で、もう一方が吐出。これで主鏡背面に一定の空気の流れを作り出し、温度順応を速めます。

2つのファンユニットはどちらにもDCジャックが設けられていますが、最終的に2つのユニットは電源ケーブルでつなぐことになるので、どちらか片方に電源をつなげば2つともファンは回ります。

使われているファンはSUNONのGM0517PDV3-8。17mm角・8mm厚の小型ファンです。軸受けが磁気浮上式(MagLev)になっていて、回転に伴う振動が少ないのが特徴らしく、海外誌のTEMP-estのレビューを見ても、運転しっぱなしでも観測や撮影に影響を与えないことが評価されています。

実際、使っていても振動を感じることは一切ありませんし、深夜に向けて温度が低下していっても温度順応が確実に行われているという安心感は大きいです。

作りとしては、チューブベントカバーに小型DCファンとDCジャックを付けたようなものですので、ある程度の工作技術があれば、同じようなシステムを自作できると思います。

説明書等は一切ありませんが、単純なものだけに取り付けは簡単。鏡筒についているチューブベントのカバーを外したら、代わりにTEMP-estのファンユニットを取り付けます。ファンユニット同士を接続するケーブルは、写真のように鏡筒内部を通して反対側に引き出し、もう一方のユニットと接続します。なお、この作業のとき、主鏡は目いっぱい後退させておいた方が良いです。主鏡バッフルや主鏡を支えるシャフトはグリスまみれなので、こうしてグリスの付いた面が露出しないようにしておかないと、ケーブルがグリスでひどく汚れるばかりか、ケーブルとグリスが粘着して、ケーブルを通すのが難しくなってしまいます。

さて、観測中ずっと使用し続けるということで気になるのがTEMP-estの消費電力です。TEMP-estで使われているファンの消費電力は0.4W@DC5Vなので、このときに流れる電流は0.08A。ここからファン1つあたりの抵抗は5/0.08 = 62.5Ωと計算できます。TEMP-estの場合、ファンが2つ直列でつながっているので合成抵抗は125Ω。つまり、12Vかけた時に流れる電流は12/125 = 0.096Aとなります(消費電力は12×0.096でおよそ1.15W)。望遠鏡の駆動に用いるバッテリーの容量は数~数十Ahのものがほとんどですから、ここから電源を取ったとしてもほとんど問題にならないでしょう。

Starizona CoolEdge

上記のTEMP-estは、どちらかというと使用中の温度順応がメインの目的でしたが、こちらは使用前の温度順応時間を短縮するためのアイテムです。製造・販売は米Starizona社で、価格は149ドル(当時)。

Fastarの副鏡取り外し機構を利用して、上の写真のように副鏡の代わりにフィルター付きのファンユニットを装着し、さらにこのファンユニットに取り外した副鏡ユニットを取り付けて光学系全体の温度順応を促進しようというシステム。なかなかよく考えられた仕組みだと思います。

ただし、難点は騒音の大きさで、これは正直誤算でした。使われているファンはSUNONのPMD1204PBB1-A(2).GNというDC12V対応の4cm角ファンなのですが、これが回転数14500rpm、ノイズレベル55dBという爆音ファン。しかも鏡筒で音が反響するのでかなりの騒音です。周囲に他の観測者がいたり、夜の住宅街などではちょっと使うのがためらわれるレベルです。必要な風量と静圧を確保するには仕方ないのだろうと思いますが……。

短時間しか使用しないものなので、我慢してもらうしかありません。

ちなみにこのファンの消費電力ですが、データシートによれば9.4W@DC12Vとのこと。ここから流れる電流は約0.78Aと計算できます。上記のTEMP-estに比べるとだいぶ電気を食いますが、長時間使うものでもないので特に問題にはならないでしょう。

Starlight Instruments Feather Touch Micro Focuser

いわゆるピント微動装置。この手の減速装置は写真目的なら必須の装備です。

当初は、ミラーシフトを避けるために外付けのクレイフォード式接眼部を装備することも考えたのですが……EdgeHDの場合、バックフォーカスが普通のシュミットカセグレンより長く、またレデューサーが専用品のため、その分、接眼部取り付けに使うフランジの厚みに配慮が必要でなにかと厄介。加えて、ただでさえ後方に偏っている重心がさらに後ろに来てしまうので、取り回しに難が出る可能性がありました。そこで、既存のピントノブを置き換えるこの製品を導入することに決定しました。

Starlight Instruments製造のこのフォーカサー、価格は当時259ドルとそれなりに高価でしたが、総金属製のピントノブは、高級感があってなかなかに美しいです。

取り付けは、説明書の通りにやれば特に迷うことはなく。ノブの背が純正のものと比べるとずいぶん高くなるので、カメラなどと干渉しないかとちょっと心配しましたが、実際に取り付けてみると特に問題はありませんでした。

実際に使ってみると、価格だけのことはあって実に快適。特に微動ノブは回転が滑らかで、添えた指を滑らせるだけでで軽く回ります。余分な力がかからないので、ピントを合わせる際に鏡筒に振動が伝わらず、微妙なピント合わせが非常にやりやすいです。高倍率での惑星観測や写真撮影をやるなら、ほぼ必須の装備といっていいでしょう。

個人輸入について

海外メーカーの天文関連パーツには魅力的なものが多い一方、日本国内では手に入りにくいこともしばしばです。これらが欲しいと思ったら、多くの場合「個人輸入」を行うことになります。

といっても、難しいことはほとんどありません。海外への配送に対応している店舗で購入する場合、普通の国内のネット通販を利用するのと全く同様です。場合によっては担当者と直接メールのやり取りをする必要が出てくることもありますが、中学生レベルの英語で十分通じますので、過度に心配することはありません。

ただし、支払い方法には注意が必要。クレジットカードで直接購入するのはなるべく避け、PayPalなどを利用するようにしましょう。というのも、カード情報を引っこ抜く不届きな輩が少なからずいるためで、実際、過去には某大手望遠鏡販売店で利用したカードが不正使用された例などもあったようです。

また、送料や関税にも注意が必要です。油断していると、買ったパーツの値段よりはるかに高額な送料がかかってしまったなどということもありえます。多少の金額の違いには目をつぶって、1か所でまとめて買った方が結果的には安上がりだったということも珍しくありません。さらに、関税は商品の価格ではなく送料や保険料など支払った額全てを含んだものに対して課税されるので、その意味でも気を付ける必要があります。

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