光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

「街なか天体写真」の画像処理

デジタル時代の天体写真は、画像処理と不可分です。月や惑星の高解像度写真を得るには動画ファイルの処理が不可欠ですし、街なかから星雲・星団を狙う場合、画像処理技術の助けなしには、まともな写真を得ることはできません。

この章では、これら画像処理の方法について、我流のものも含めながら、基本的なところを解説していこうと思います。

星雲・星団写真の処理の大まかな流れ

天体写真の撮影から画像処理、仕上げに至るまでには、基本的な流れが存在します。人によってテクニック面などで細かい差異はありますが、これは誰が処理を行うにしても必ず押さえておくべき手順です。

おおまかには以下のような手順になります。

  1. 被写体の撮影
  2. ダークフレームの撮影&処理
  3. フラットフレームの撮影&処理
  4. ダーク&フラット補正
  5. ホットピクセル除去
  6. コンポジット
  7. レベル調整(&デジタル現像)
  8. トーンカーブ調整
  9. 各種強調処理
  10. 仕上げ

人による個性が特に強く出るのは8以降の段階ですが、それでも基本的な流れ自体はそう大きくは違わないはずです。

動画ファイル処理の大まかな流れ

一方、月や惑星の高解像度写真を狙うための動画ファイル処理に関しては、手順自体は「良質なフレームを選択してスタッキングし、ウェーブレット処理で細かい模様をあぶりだす」というのが基本で、それほど大きなバリエーションは存在しません。むしろ、使用するソフトの選択や、個々のソフトの使いこなし、パラメータ設定が肝になります。

画像処理に必要なもの

パソコン

当たり前ですが、画像処理にパソコンは必須です。それも、できればデスクトップ型で、なるべく高性能なものが欲しいところです。

現在の画像処理関連のソフトは、そのほとんどがマルチコア対応となっており、CPUのコア数が多いほうが高速動作に有利です。画像処理は一般にかなり「重い」作業であり、CPUの性能の高低がモロに作業効率に直結します。可能な限り上位のCPUが欲しいところです。

画像処理はメモリも大量に消費します。特に、多数枚を一気にコンポジットしたりすると、8GBでもすぐ不足気味になります。作業工程を工夫すればメモリの使用量は節約できますが、これもできれば潤沢に積んでおきたいところです。

ストレージについても、写真が基本的にRAWで撮影・保存されること、動画ファイルも基本的に無圧縮で撮影・保存されることを考えると、容量はいくらあっても困らないというのが正直なところです。SSDかHDDかの選択ですが、可能であればシステムはSSDに、データはHDDに置くような運用が理想です。ノートPCの場合も、内蔵ディスクはSSDにしておいて、外付けHDDをデータ保存用として運用するやり方がスマートではないかと思います。

ビデオカード(GPU(Graphic Processing Unit))に関しては、現在のところそれほどこだわる理由はありませんが、画像処理自体はGPUを計算処理に応用する「GPGPU」(General Purpose GPU)的な使い方が向いているジャンルであり、将来的にはGPUを積極的に利用するようなソフトが増えてくるのではないかと思います。

一方、同じ表示に関係するものでもディスプレイについては気を使ってください。天体写真は非常に微妙な濃淡を取り扱うので、ディスプレイの表示能力が低いと適切な画像処理の加減が見極められません。その意味で、一般的なノートパソコンのディスプレイは向いているとは言い難い部分があります。単体のディスプレイであっても、安価なものは表示能力が低いものがあるので要注意。できれば大手メーカーの製品で、一般に視野角が広く、色の再現性に優れているといわれる「IPS方式」のパネルを採用しているものを選びましょう。少々高価ですが、プロフェッショナル向けや写真処理向けとして売られているものを手に入れられるのなら言うことなしです。

このほか、レタッチ用にペンタブレットがあると非常に便利です。操作に慣れが必要なのが難ですが、フォトレタッチソフトをマウスだけで操作するよりは、はるかに楽だと思います。

参考までに、現在私が画像処理に用いている自作メインPCの構成を示しておきます。

CPUCore i7 3770K(TurboBoost時4.2GHzまでオーバークロックするよう設定)
メモリ32GB(DDR3, PC3-12800, 8GB×4)
システムディスクCrucial MX200(CT500MX200SSD1, 500GB)
データディスクWesternDigital WD Red(WD80EFZX, 8TB)
ビデオカードASUSTeK STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5
ディスプレイNEC MultiSync LCD2490WUXi(24.1型, 1920×1200ドット, H-IPS液晶)
ペンタブレットワコム intuos3 PTZ-630(A5サイズ)

画像処理ソフト

まず、静止画の処理についてですが、これについてはPhotoshopに代表される、いわゆるフォトレタッチソフトの類が利用できます。ただ、これらはあくまでも一般的な写真を処理するためのソフトであり、天体写真を扱う上では機能面で不足を感じる部分もあります。

そこで、天体写真の処理に特化したソフトがあると便利です。日本国内の場合、こうした処理を総合的に行える市販ソフトとしては「ステライメージ」がほぼ唯一の選択肢です。私の場合、ほとんどの処理はステライメージ上で行い、仕上げに近い一部の処理を一般的なフォトレタッチソフトで行っています。以降の説明も、大半がステライメージの使用を前提にしています。

このほか、市販品としては海外製の「MaxIm DL」「PixInsight」、フリーウェアとしては国産では「YIMG」、海外製では「DeepSky Stacker」「IRIS」あたりが比較的有名です。

スタッキングやウェーブレット処理といった動画関連処理についてはもっぱらフリーウェアが有名で、「Registax6」が定番です。このほか「Autostakkert!2」「AviStack」もよく用いられます。

本章についての注意

遅ればせながら、以降の文を読む上での注意を記します。

まず、本稿では天文雑誌に投稿するような写真は目的にはしません。というのも、雑誌のフォトコンは現在、大変に高度化、先鋭化していて、撮影環境や投入する時間、資金などの面で一般人には手の届かないものになりつつあるからです。この方向を目指すのであれば、他のサイトなどでより高度な情報を入手することをお勧めします。

ここでは、デジカメを使い、光害の激しい街なかから「それなり」の写真を得ることを目的にします。このような環境では雑誌の投稿に耐えうるような写真(特に星雲など)はとても無理ですが、それでも機材の性能向上によって、ひと昔、ふた昔前の入選作品程度の写真は得られるものです。

あと、これは人にもよると思いますが、いい意味で「志を低く」持った方が気楽で長続きするような気がします。写真のデキの良さだけを競うようになると気疲れしてしまいます。所詮は街なかでの撮影、そんな大層な写真が撮れるわけでもないのですから「悪環境でもこれだけ撮れたぜ」とニヤニヤしながら、ゆるく楽しむ程度のスタンスがちょうどいいのじゃないかと思います。

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