光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

トミーテック ミニボーグ60EDレビュー

概要

ミニボーグ60EDは口径60mmのEDアポクロマート屈折です。同社の小型組み立て式望遠鏡「ミニボーグ」シリーズにおいてミドルハイに位置する機種で、2005年5月に発売になったモデルです。同社の製品は価格の割に光学性能が高いことで有名ですが、この鏡筒もEDガラスを含む2群2枚(「1群2枚」でないことに注意)という凝った光学系を持っています。購入価格は2014年3月当時、鏡筒のみで税込約56000円でした。しかし残念ながら、本機種は2015年に生産中止となってしまいました。

外観など

鏡筒自体のスペックは口径60mm、焦点距離350mm(F5.8)、鏡筒長262〜307mm、外径60mm、重量510gとなっています。他のボーグ、ミニボーグもそうですが、口径の割に非常に軽量です。

同社の望遠鏡は、鏡筒のみでは基本的に何もできず(接眼部すらありません)、自分の使用スタイルに合わせて必要なパーツを組み合わせ、望遠鏡を「作って」いくことになります。ここが面白くも難しいところで、膨大な種類のパーツの中から適切なパーツを選び出し組み立てていくには、それなりの知識とハッキリした目的が必要になります。

私の場合、主にガイド鏡 兼 撮影鏡としての利用を考えていたので、筒外焦点と各パーツの光路長とをにらみながら、以下のパーツを同時に揃えました。

  • 【7757】M57ヘリコイドS
  • 【7602】M57/60延長筒S
  • 【7604】M57/60延長筒L
  • 【7522】M57→M36.4AD
  • 【7317】31.7ミリアイピースホルダー
  • 【7000】カメラマウントホルダーM
  • 【5005】カメラマウント キヤノンEOS用
  • 【7885】レデューサー0.85×DG

その後、実際に本格運用を開始してから【7108】マルチフラットナー1.08×DGや他の延長筒などを買い足しています。ここがボーグのもう1つ厄介なところで、なんだかんだとパーツを買い揃えていくと、気づいた時には合計金額が結構なことになっていたりします。中古品やB級品セール、量販店のポイントなども利用しつつ、うまく総費用を抑えていきたいところです。

こうして組み上げた望遠鏡ですが、上でも書いたように非常に軽量なので、システム総重量を抑えたいガイド鏡には最適。また、標準で三脚座がついているので、カメラ三脚にちょっと載せて観望……というのも手軽にできます。

フードの先端には62mmのフィルターネジがついていて、カメラ用の様々なフィルターを取り付けることができるようになっています。レンズは丁寧なマルチコートが施されていて、よく見えそうです。ED103Sのように錫箔が目立つようなこともありません(おそらくスペーサーリングのようなもので2枚のレンズの間隔を固定しているものと思われます)。

ピントは鏡筒のドローチューブを抜き差しすることで大まかに合わせることができますが、微調整にはヘリコイドがあった方が便利です。ヘリコイドも大きなものから小さなものまで色々と揃っており、予算や好み、使用目的に応じて選ぶことができます。私が現在使用しているのは、調節幅が狭いかわりに軽量・安価な「M57ヘリコイドS」。動きにカメラレンズほどの「粘り」はありませんが十分な精度で、使用中にピントがずれてくるようなこともありません。

性能

口径60mmと入門機並みの口径の望遠鏡ですが、噂にたがわぬ高性能で非常によく見えます。2枚玉の望遠鏡なので周辺部はどうしても像面湾曲と非点収差の影響を受けますが、中心部の星像はきっちり点になっており、色収差はほとんど感じません。その印象は写真でも同様で、輝星の周囲でも目立ったハロや不自然な回折像は発生せず、非常にシャープな星像を結びます。ただしED103Sと同様、画像強調の度合いによっては赤ハロが見られることも。もっともこれは屈折式の原理上、ある程度仕方のない部分ではあります。

【7885】レデューサー0.85×DG使用時の星像(左:中央, 右:右上隅, EOS KissX5使用)

【7885】レデューサー0.85×DGを使った場合、周辺像がすごく良くなるという感じはありませんが、逆に悪化する様子もなく、比較的素直に焦点距離短縮、F値減少の恩恵を受けられます。このレデューサーはレンズがカメラマウント側に飛び出しており、マウント内部に光害カットフィルターなどをセットしていた場合の物理的干渉やゴーストの発生が心配になりますが、使ってみて特に問題はありませんでした。

【7108】マルチフラットナー1.08×DG使用時の星像(左:中央, 右:右上隅, EOS KissX5使用)

【7108】マルチフラットナー1.08×DGを使った場合、像面湾曲が改善されて周辺像もほぼ点像になります。周辺減光も減少し、フラット補正もやりやすくなるので、画像処理まで考えるとかなり扱いやすくなります。フラットナーを使用しない場合と比較してF値が5.8から6.3へと若干暗くなりますが、被写体が画角内に収まるのであれば、使った方が満足のいく結果を得られるように思います。

まとめ

「小型・軽量でもよく見えるし写る」というのがボーグシリーズ全般に共通する利点と言えるでしょう。パーツの組合せによって鏡筒の性格を大きく変えられるのも魅力で、ガイド鏡から撮影鏡、気軽な眼視観測、はたまた鳥見用のスポッティングスコープとしても使えるという応用範囲の広さは特筆ものです。また、単純に「あれこれパーツを組み替えたり、構成を考えたりするのが楽しい」ということもあります。

ただし、1個1個のパーツは大した金額ではなくても、総額では決して安いとは言い切れない点には注意が必要。ガイド鏡としては最近中国製の60mm鏡筒が(精度はともかく)安価に出回っていますし、眼視用・写真用としてはビクセンのED70SSやタカハシのFS-60CBが近い価格帯にあります。自分の使用スタイルをよく考えた上での選択が必要です。

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