光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

クエスチョンマーク星雲(散光星雲、ケフェウス座~カシオペヤ座)

撮影日時 2023年9月17日
撮影機材 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 0℃, Gain=100, 露出180秒×37コマ(カラー)+Gain=300, 300秒×65コマ(ナロー)
備考 IDAS LPS-D1 & Optolong L-Ultimate使用

ケフェウス座~カシオペヤ座にかけて広がる、非常に大きな散光星雲です。全天で最も北側にある散光星雲の1つで、愛称の通り、クエスチョンマークのような非常に特徴的な姿をしています。しかし大変淡く、肉眼では残念ながらその姿を見ることはできません。

クエスチョンマーク星雲の位置
クエスチョンマーク星雲の位置の位置(ステラナビゲータ10を用いて作成)

星雲が大きいこともあり、この天体には下の図に示すように複数のカタログ番号が付けられています。

各星雲・星団のカタログ番号
各星雲・星団のカタログ番号
左が散光星雲、右が散開星団についてのものです。

まずは散光星雲について。「?」を描く星雲全体にはシャープレスカタログにおいて、Sh2-170, 171のナンバーが振られています。Sh2-170は、小さく丸っこい姿と、中心付近に暗黒星雲が走る姿から、いっかくじゅう座の「ばら星雲」に対して"Little Rosette Nebula"(小ばら星雲)という愛称があります。しかし、この写真だと暗黒星雲が今一つはっきりしません。こちらにフォーカスを当てるなら、もう少し口径の大きな望遠鏡で、クローズアップで狙うべきでしょう。

Sh2-171の中央、最も明るい部分にはCed 214というナンバーが振られています。この"Ced"というのは"Cederblad Catalog"の略で、スウェーデンの天文学者Sven Cederbladが1946年に論文で発表したものです。

また、Sh2-171の上部にはNGC 7822というナンバーが振られていますが、NGCカタログをまとめたハーシェルやドライヤーが眼視でこの淡い星雲を捉えられたかというとやや疑問の残るところ。実際に見たのはCed 214や後述のBarkeley 59で、カタログ記載時に赤緯の数値を間違えたのでは?という説もあります。

一方の散開星団。クエスチョンマークの右肩にはNGC 7762があり、そのさらに右上には古い散開星団であるKing 11があります。Sh2-170に重なるようにStock 18があり、そしてCed 214の中心部にあるのがBarkeley 59です。このBarkeley 59は年齢がせいぜい200万年のごく若い散開星団で、高エネルギーを放つ大質量星がいくつも存在しています。

BD+66 1673

なかでも、上の写真で緑色の印をつけた「BD+66 1673」という星は別格です。Sh2-171のちょうどほぼ中央にあるこの星は、O型主系列星とB型主系列星との連星で、O型主系列星の方は表面温度45000度、明るさが太陽の10万倍という、まさにモンスターです。地球から3000光年以内で最も明るい星とも言われています。この星からの強烈な紫外線は、星雲に含まれる水素や酸素を電離させて輝かせ、恒星風は周囲のチリやガスを吹き払っています。その様子は上の写真で矢印で示した通りで、BD+66 1673を中心に衝撃波が発生したり、矢印に沿って暗黒星雲が流されたりとなかなかの凄まじさです。また、チリやガスがこうした圧力を受けることで寄り集まり、新たな恒星が誕生する元ともなっています。

なお、これほど青く明るい星が星雲の中で目立たないのは、まさに周囲を濃密なチリやガスに覆われているためです。そう考えると、この星雲自体もそれなりの奥行きがあるのだろうなというのが実感できます。

さて今回の写真ですが、ここ最近の撮影と同様「ワンショットナローバンドフィルター+光害カットフィルター」の組み合わせで撮影しています。さすがに効果は絶大で、クエスチョンマーク星雲自体、「クエスチョンマーク」というよりはボクシンググローブみたいになっています(笑) 背景にはごく淡いHII領域も浮かび上がってきています。

また、縦横に走る暗黒星雲の表現も気を使ったところで、どことなく奥行きを感じるような迫力が出てくれたと思います。

オリジナル画像

LPS-D1フィルターを用いて撮影した、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。星雲本体はかなり淡く、強調してもかろうじて見えるかどうかという程度です。

こちらはL-Ultimateフィルターを用いて撮影した、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。星雲の存在は分かりますが、それでも1コマだけではお世辞にもいい写りとは言えません。恒星の存在感も、光害カットフィルターで撮ったものと比べて控えめです。

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