光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

クエスチョンマーク星雲(散光星雲、ケフェウス座~カシオペヤ座)

撮影日時 2019年10月4日
撮影機材 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3
ガイド鏡 ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 ISO100, 露出900秒×8コマ
備考 IDAS NebulaBooster NB1フィルター使用

ケフェウス座~カシオペヤ座にかけて広がる、非常に大きな散光星雲です。全天で最も北側にある散光星雲の1つで、愛称の通り、クエスチョンマークのような非常に特徴的な姿をしています。しかし大変淡く、肉眼では残念ながらその姿を見ることはできません。

クエスチョンマーク星雲の位置
クエスチョンマーク星雲の位置の位置(ステラナビゲータ10を用いて作成)

星雲が大きいこともあり、この天体には下の図に示すように複数のカタログ番号が付けられています。このような水素ガスやチリの豊富な領域は星が誕生する場ともなっていて、中央にあるBarkley59という散開星団は、まさにこの場で生まれた若い星の集団です。

各星雲・星団のカタログ番号
各星雲・星団のカタログ番号(クリックで拡大)
赤が散光星雲、紫が散開星団を示します。ちなみに"Ced"は"Cederblad Catalog"の略で、1946年にSven Cederbladが論文で発表したもの、"Sh2"は"Sharpless catalog"のことで、1959年にStewart Sharplessが発表したもの、"King"はIvan R. Kingが1949年に論文で発表した散開星団のカタログを指します。また、"Berkeley"は、カリフォルニア大学バークレー校のGosta LyngaとJiri Alterが1958年に発表したカタログに収載されているものです。

さてこの写真ですが、撮影地である自宅近くの公園は北側に渋谷・新宿を控えているため北天の光害が特にひどく、一方でこの星雲は非常に淡いので、通常の光害カットフィルターでは力不足と思われました。そこで、酸素原子や水素原子由来の輝線のみを通すNebulaBooster NB1フィルターを利用してみました。このフィルターは「セミナローバンドフィルター」とでも言うべき特性を持っていて、透過する波長域が非常に限られているのが特徴です。その性質上、連続光で輝く系外銀河や、チリやガスが星の光を反射しているだけの反射星雲相手にはそれほど有効ではありませんが、ガス自体が高エネルギー状態となって輝いている惑星状星雲や散光星雲には絶大な威力を発揮します。

ここでも威力はいかんなく発揮され、3等星すら怪しい北天であっても、淡い星雲の姿を予想以上にハッキリと浮かび上がらせることができました。ちょっと前ではとても考えられなかった結果です。

オリジナル画像

コンポジット&処理前の画像です。処理前の段階でも、うっすらとクエスチョンマークの形が確認できます。星雲の淡さを考えると驚異的な結果です。

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