光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

準大接近の火星

撮影日時 2020年10月13日
撮影機材 セレストロン EdgeHD800+Meade 3x TeleXtender(D203mm, f6096mm)、ビクセンSXP赤道儀
使用カメラ モノクロ:ZWO ASI290MM
カラー:ZWO ASI290MC
露出時間 モノクロ・カラー:約90秒, 約30fps
その他 OPTOLONG NightSky H-Alphaフィルター(L画像)およびOPTOLONG UV/IRカットフィルター(RGB画像)使用
モノクロ:約1500フレームをAutostakkert!3でスタック後、Registax6でウェーブレット処理し、ステライメージ7で最大エントロピー法による画像復元処理
カラー:約1500フレームをAutostakkert!3でスタック後、Registax6でウェーブレット処理
得られたモノクロ、カラーの画像をステライメージ7でLRGB合成

2020年10月13日に撮影した、いわゆる「準大接近」後の火星です。

地球のすぐ外側を回っている火星は、太陽の周りを687日かけて回ります。地球は365日で一周しますから、つまり地球は常に火星に追いつき、追い越すということを繰り返しているわけです。この、地球が火星を追い越すとき……つまり火星と地球、太陽が一直線に並ぶときには、火星と地球との距離が近づくため、観望の絶好のチャンスとなります。このような現象は約780日=約2年2ヶ月ごとに起こります。

ところが火星の場合、惑星としてはかなりつぶれた楕円軌道を描いて公転しているため、地球が軌道上のどこで火星を追い抜くかによって、最接近時の距離が大きく変わってきます。もし、火星が最も太陽に近づいたあたりで追い抜きが起これば、火星と地球の距離は最も近づくことになります(火星の大接近)。このようなパターンの接近は15年ないし17年ごとに起こります。

逆に火星が太陽から最も離れているときに追い抜きが起こると、火星と地球の距離はそれほど小さくなりません(火星の小接近)。大接近の場合、火星と地球の距離は5600万kmほどにまでなりますが、小接近の時には1億km以上も距離があります。そのため、「接近」といっても見かけの大きさが2倍ほども違うことがあります。

2020年の接近は「大接近寄りの中接近」……「準大接近」とでもいったところで、最も接近した10月6日の火星-地球間の距離は6207万km。2018年の大接近の時と比べても視直径は90%以上(2018年:24.3秒 2020年:22.6秒)、南中時の高度も約60度と2018年の倍ほどもあり、観測条件としてはむしろ2018年よりも良好でした。また、2018年は火星の全面を覆うほどの大規模なダストストームが発生していて、表面の観測にはまったく向きませんでした。

火星の見かけの大きさの比較
火星の見かけの大きさの比較
2014年以降の接近時の写真を同スケールで並べてみました。視直径は2014年の撮影時が15.2秒、2016年が18.6秒、2018年が24.3秒、2020年が22.4秒となっています。

この日は薄雲の隙間からの撮影で、火星の前をたびたび雲の濃い部分が横切る最悪の撮影条件でした。しかし、比較的写りの良いコマを選んでスタッキングした結果、思いのほか細かいところまでよく写ってくれました。なお、今回はスタッキング後のウェーブレット処理に加え、最大エントロピー法による画像復元処理も行っています。注意して使わないと偽模様が出現しかねませんが、パラメータをうまく調整して使えばなかなか効果的です。

中央の黒い模様は「オーロラ湾」。そこから右へ太陽系最大級の峡谷である「マリネリス峡谷」が伸びています。その上の、明るい部分に囲まれた楕円形の模様は「太陽湖」です。一方、左端には「子午線の湾」(アリンの爪)が見えています。また、オーロラ湾の左下にある暗い模様は「アキダリアの海」。その右側にある「”」みたいな形の模様は「ニロケラス」で、卓状台地と渓谷から成ります。名前だけはアニメ「アルドノア・ゼロ」ですっかり有名になりました。

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