中接近の火星
撮影日時 | 2014年4月13日 |
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撮影機材 | セレストロン EdgeHD800+Meade 3x TeleXtender(D203mm, f6096mm)、ビクセンSXP赤道儀 |
使用カメラ | モノクロ:ZWO ASI120MM カラー:ZWO ASI120MC |
露出時間 | モノクロ・カラー:約90秒, 約40fps |
その他 | モノクロ:約3300フレームをAutostakkert!2でスタック後、Registax6でウェーブレット処理、ステライメージ7で最大エントロピー法による画像復元 カラー:約3500フレームをAutostakkert!2でスタック 得られたモノクロ、カラーの画像をステライメージ7でLRGB合成 |
2014年4月13日に撮影した、いわゆる「中接近」のときの火星です。
地球のすぐ外側を回っている火星は、太陽の周りを687日かけて回ります。地球は365日で一周しますから、つまり地球は常に火星に追いつき、追い越すということを繰り返しているわけです。この、地球が火星を追い越すとき……つまり火星と地球、太陽が一直線に並ぶときには、火星と地球との距離が近づくため、観望の絶好のチャンスとなります。このような現象は約780日=約2年2ヶ月ごとに起こります。
ところが火星の場合、惑星としてはかなりつぶれた楕円軌道を描いて公転しているため、地球が軌道上のどこで火星を追い抜くかによって、最接近時の距離が大きく変わってきます。もし、火星が最も太陽に近づいたあたりで追い抜きが起これば、火星と地球の距離は最も近づくことになります(火星の大接近)。このようなパターンの接近は15年ないし17年ごとに起こります。
逆に火星が太陽から最も離れているときに追い抜きが起こると、火星と地球の距離はそれほど小さくなりません(火星の小接近)。大接近の場合、火星と地球の距離は5600万kmほどにまでなりますが、小接近の時には1億km以上も距離があります。そのため、「接近」といっても見かけの大きさが2倍ほども違うことがあります。
2014年の接近は「小接近寄りの中接近」……「準中接近」とでもいったところで、最も接近した4月14日の火星-地球間の距離は9239万kmでした。
この日は移動性高気圧の圏内とはいえ、南岸に前線が近づいていたせいかシーイングは悪く、時折薄雲が天体の前を横切るなど、条件はあまりいいとは言えない状態でした。しかし週間予報を見る限り、当分晴れ間は期待できなさそうだったので、撮影を試みました。
ちょうど火星で最も目立つ模様である「大シルチス」が中央右寄りに見えていて、その上には「ヘラス盆地」にかかる白雲(あるいは霜?)が見えています。北極(下側)に見えている極冠よりも目立つため、どちらが極か分からなくなりそうです。
中央左側にも明るい部分が見えますが、これは「エリシウム山」という山の頂にかかっている雲です。ちなみにこのエリシウム山、標高が13862mもあります。それでもオリンポス山(標高21171km)やタルシス三山(アスクレウス山:標高18209m、アルシア山:標高17779m、パヴォニス山:標高14037m)と比べるとまだ低く、火星の山のスケールには驚かされるばかりです。
撮影条件としてはあまりよくなかったですが、にぎやかな火星面でなかなか楽しめました。
本ページ中の惑星図は(株)アストロアーツ「ステラナビゲータ10」を用いて作成しました。