光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

皆既月食 2025年9月8日

2025年9月8日、2022年11月8日以来およそ3年ぶりとなる皆既月食が全国で見られました。ただ、時間帯が深夜だった上、東に行けば行くほど本影食終了時の月の高度が低く、一般には必ずしも観測しやすいものではありませんでした。

半影食

撮影日時 2025年9月8日1時00分
撮影機材 ビクセンED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセンSXD赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5
感度・露出時間 ISO200、1/1000秒

月が半影に入って30分ほどたったころの月です。

月食が起きるのは地球の影が月に落ちるせいですが、この地球の影には「本影」と「半影」とがあります。本影は地球が太陽の光を完全に遮っている部分で、月面からは皆既日食が見えているはずの部分です。一方の半影は太陽の光が部分的に遮られている部分で、月面からは地球による部分日食が見えているはずの部分になります。

計算上、上の写真では既に月の半分ほどが地球の半影に覆われているはずですが、肉眼ではその様子は全く分かりません。写真でも、左上がやや暗くなっているのがかろうじて分かるのみです。

月食の始まり

撮影日時 2025年9月8日1時30分
撮影機材 ビクセンED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセンSXD赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5
感度・露出時間 ISO200、1/500秒

ちょうど欠け始めの頃の月の写真です。

月食の場合、大気のある地球が月に影を落とすため、大気が光を拡散して影の境目は常にぼやけます。そのため本影と半影の境目もはっきりせず、計算上は本影食が始まってまだ3分ほどしかたっていないはずなのに、大きく欠けているように見えるのです。ちなみにこの理由のため、日食が秒単位で正確に開始時刻、終了時刻が予報できるのに対し、月食では分単位の予報にとどまります。影の境目がハッキリしないうえ、影自体の大きさも大気層の膨張・収縮によって変動するためです。

食の最大

撮影日時 2025年9月8日3時10分
撮影機材 ビクセンED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセンSXD赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5
感度・露出時間 ISO200、15秒

食の開始から1時間半あまりで「食の最大」となりました。

皆既中の月の色や明るさは地球の大気の状態などに左右され、月食ごとに異なります。これを表すものとして、フランスの天文学者ダンジョンが提唱した「ダンジョン・スケール」があります。

尺度月面の様子
0非情に暗い食。月のとりわけ中心部は、ほぼ見えない。
1灰色か褐色がかった暗い食。月の細部を判別するのは難しい。
2赤もしくは赤茶けた暗い食。たいていの場合、影の中心に一つの非常に暗い斑点を伴う。外縁部は非常に明るい。
3赤いレンガ色の食。影は、多くの場合、非常に明るいグレーもしくは黄色の部位によって縁取りされている。
4赤銅色かオレンジ色の非常に明るい食。外縁部は青みがかって大変明るい。

この基準からすると、今回は1くらいだったように思います。

【左写真】2018年1月30日22時30分12秒 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5, ISO200, 露出4秒
【中央写真】2022年11月8日20時00分4秒 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5, ISO1600, 露出0.5秒
【右写真】2025年9月8日3時10分14秒 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5, ISO200, 露出4秒

実際、過去の月食と同一機材、同一露光量で比較してみると、今回の月食が明らかに暗いのが一目瞭然です。今回は月の高度が低く(食の最大時に約24度)、夏場で大気中の水蒸気が多く大気の透明度が低いため月の明るさが下がりやすいです。さらに、今年は8月にインドネシアのレウォトビ山で噴煙高さ19000mに達する大噴火があり、カムチャツカ半島でも複数の火山が噴火しているので、これらによるエアロゾルが大気の透明度を落とし、月に届く太陽の光を減らした可能性があります。

本影食の終わり

撮影日時 2025年9月8日5時00分
撮影機材 ビクセンED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセンSXD赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5
感度・露出時間 ISO200、1/125秒

4時56分に本影食が終わった直後の写真です。まだ大きく欠けているように見えますが、これは最初の方で書いた通り、本影に近い部分の半影がかかっているだけです。

ちなみにこの写真では月がずいぶん黄色っぽく写っていますが、これは月の高度が下がったことによるもの(このときの高度は5度以下しかありません)。厚い大気の層を光が通過する間に青い光が散乱されてしまうのが原因で、夕日が赤く見えるのと同じ理屈です。また、同じく大気による光の屈折のため、月がやや上下に潰れたように見えています。

月食の全経過

撮影日時 2025年9月8日1時214時55分分
撮影機材 smc PENTAX-DA 17-70mmF4AL[IF] SDM, 17mm, F4.0
使用カメラ Pentax K-5IIs
感度・露出時間 ISO200、2秒

こちらは、月食の過程を固定カメラで3分おきに撮影し、合成したもの。

レンズの焦点距離が17mmと短い上、シャッター速度を皆既に合わせているので月の形は分からないかと思いましたが、案外雰囲気は出るものです。ちなみに、最後の方は空が明るくなってきてしまっているため、単純な比較明合成では上手く重ねられません。今回はマスクを使って、明るい空の影響が全体に及ばないようコントロールしています。

普段の天体撮影では邪魔な照明も、今回は芝を適度に照らしてくれて、かえって雰囲気が出たように思います。

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