光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

超新星 SN2023ixf

撮影日時 2024年1月13日
撮影機材 ビクセン ED103S+SDフラットナーHD+レデューサーHD(D103mm, f624mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 -20℃, Gain=100, 300秒×11コマ
備考 IDAS LPS-D1フィルター使用
2枚目は中心部をトリミング

おとめ座にある系外銀河NGC 4216に現れた超新星です。

NGC 4216はおとめ座銀河団で最も大きく最も明るい渦巻銀河の1つです。地球からの距離はおよそ17パーセク(約5500万光年)。この銀河に発生した超新星SN2024gyは2024年1月4日、有名な超新星ハンターである板垣公一氏が発見した通算177個目の超新星です。その後の分光観測でIa型超新星であることが明らかになりました。

撮影を行った日は超新星発見から10日ほどたっていて、超新星自体かなり明るくなっていたので、カメラを向けたところ小1時間ほどでその姿を簡単に捉えることができました。超新星のあるNGC 4216の銀河核にも匹敵しそうな明るさで、これがただ1つの星から放たれた光だと考えると、とんでもない明るさです。

そこで、この超新星の明るさを、周辺の星の明るさを目安として見積もってみます。

ストレッチ前の画像からGチャンネルのみを抜き出し、画面中心付近かつ超新星と同程度の明るさの星を見繕って「カウント数-等級」間の関係を求めたのち、超新星に対して等級を逆算してみると……

SN 2024gyの明るさは約13等となりました。各所での報告を見ていると、おおよそ正しい値のようです。

そこで次に、これを元に超新星の絶対等級を求めてみます。絶対等級Mは、見かけの等級m、距離d(パーセク)として以下の式で求められます。

M = m - 5log10d + 5

NGC 4216までの距離は約17メガパーセク=17000000パーセクなので、ここから計算すると絶対光度は約-18等となります。ところが、Ia型超新星のピーク時の絶対光度は一般に-19等~-19.5等程度であることが知られており、それより1等以上も暗いことになります。

AAVSO(アメリカ変光星観測者協会)に集積されているデータを見ると、撮影を行った1月13日には明るさがまだピークに達しておらず、この約1週間後にピークとなっています。しかしながら、このピーク時でも見かけの明るさは12.8等ほど。絶対等級もわずかに上がるだけで典型的なIa型超新星のそれには全く及びません。ia型超新星もすべてが同じ光度というわけではありませんし、星間物質による減光という可能性も考えられますが、何が原因でこれほど暗いのか、興味深いところです。

ちなみに、NGC 4216は「おとめ座銀河団」の中にあるため、周辺には無数の銀河が写りこんでいます。注釈を入れたのが以下の写真です。

<< 前のページに戻る

↑ PAGE TOP