光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

クレセント星雲(三日月星雲) NGC6888(散光星雲、はくちょう座)

撮影日時 2018年7月21日
撮影機材 ビクセン ED103S+SDフラットナーHD+レデューサーHD(D103mm, f624mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3
ガイド鏡 ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 ISO100、900秒×8コマ
備考 OPTOLONG CLS-CCD for EOS APS-Cフィルター使用

はくちょう座にある小型の散光星雲です。写真に撮ると三日月のような形に見えることから"Crescent nebula"(三日月星雲)の愛称がついています。分類としては散光星雲なのですが、ばら星雲やオリオン大星雲のような「星が生まれる場所」としての散光星雲とは成り立ちが違います。

「三日月」の中央付近に明るめの星(WR136)が見えますが、これは「ウォルフ・ライエ星」と呼ばれる天体で、質量の大きな星が一生を終える間際の姿です。恒星が核融合反応で中心部の水素を使い果たすと、普通は膨張が始まって表面温度が低下し、赤色巨星となります。ところが、太陽の40倍以上もの質量がある大きな星の場合、中心部の温度が高いために表面のガスが吹き払われ、中心部がむき出しになってしまいます。これがウォルフ・ライエ星で、このクレセント星雲の場合、WR136から吹き出した高速のガスと、同星が赤色巨星だった約40万年前に放出された低速のガスとが衝突して輝きを放っています。

この星雲は主にHα線で輝いているため、今回は光害カットフィルターとしてOPTOLONGの「CLS-CCD」を使用しました。輝線成分以外をかなり積極的にカットするので、カラーバランスを整えるのこそ難しいものの、光害カット効果は大。撮って出しの画像を見ると背景レベルはまだまだ暗く、露出をもっとかけてやることもできそうです。

この星雲をHα線などのナローバンドで撮ると、三日月形というよりはつぶれたカブトガニのような楕円形に見えますが、この写真でも(心眼レベルですが)淡いガスが楕円形に広がっているようにも見えます。また、主に北側の背景がうっすら赤く色づいていますが、これはカブリではなく、はくちょう座γ星(サドル)周辺の散光星雲の最外縁部が見えているものです。これのおかげでフラット補正はそれなりに大変でしたが、なんとかねじ伏せることができたかと思います。

ちなみに、今回がレデューサーHDの事実上のファーストライト。レビューでも書きましたが光のまわり方は優秀で、フラット補正がなんとかなったのは、そのおかげかもしれません。

オリジナル画像

コンポジット&処理前の画像です。「CLS-CCD」フィルターの効果か、激しい光害の中でもすでに星雲が見えている一方で、背景レベルの上がり方はそれほどでもありません。効率を度外視すればまだまだ露出はかけられそうです。

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