光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

マルカリアンチェーン(系外銀河、おとめ座)

撮影日時 2022年2月28日
撮影機材 ビクセン ED103S+SDフラットナーHD+レデューサーHD(D103mm, f624mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 -20℃, Gain=100, 600秒×21コマ
備考 IDAS LPS-D1フィルター使用

私たちに最も近い(といっても約6500万光年離れていますが)位置にある系外銀河の大集団「おとめ座銀河団」の中心部付近にある、系外銀河の連なりです。

これらの銀河が共通の固有運動をしていることを指摘したアルメニアの宇宙物理学者ベニヤミン・エギシェビッチ・マルカリアンにちなみ、この集団は「マルカリアンチェーン」と呼ばれています(マルカリアンのことを「アメリカの宇宙物理学者」と紹介している記事をしばしば見かけますが「アメリカの(American)」ではなく「アルメニアの(Armenian)」人です)。

このあたりは天の川が薄くて見通しがきく上、銀河団の中心部近くということもあり、鎖を構成する明るい銀河以外にも無数の銀河が写真に写りこんでいます。以下に注釈を入れた写真を示しますが、写っている星の数よりも系外銀河の数の方が多いくらい。私たちの銀河系と同じような天体が沢山写っているわけで「この中に知的生命体の住んでいる星があるんだろうか」とか「向こうからもこちらを同じように観察していたりするんだろうか」など、想像が膨らみます。

写野内の銀河
写野内の銀河(クリックで大きな写真を表示します)

鎖を構成する銀河は、M84を除く少なくとも7つは共通する固有運動をしているとのこと。つまり、これらは見かけ上近くに見えているわけではなく、実際にそれなりの近距離にあるということです。特にNGC4435とNGC4438はお互いに重力を及ぼしあっていて、その影響でNGC4435では活発な星の形成が起こり、NGC4438に至っては円盤の形が壊れてしまっています。このあたりをアップで捉えてみても面白そうです。

この領域は2017年にも撮影しましたが、この時はもっと広い範囲を撮っていたこともあり、マルカリアンチェーン自体の描写は今ひとつでした。今回は冷却CMOSを使い、かつもう少し大きく撮ることでバランスよい構図になりました。街なかから系外銀河を撮るのは、光害の影響が大きくてなかなか難物ですが、それでも東京都心からこれだけ写ってくれるとなかなか楽しいものです。

オリジナル画像

コンポジット&処理前の画像です。激しい光害の中ですが、M84やM86を筆頭に個々の銀河の存在が意外と分かります。

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