ボリソフ彗星(2I/Borisov, C/2019 Q4)
撮影日時 | 2019年12月8日 |
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撮影機材 | ビクセン ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセン SXP赤道儀 |
使用カメラ | Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3 |
ガイド鏡 | ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm) |
オートガイダー | ZWO ASI120MM |
感度・露出時間 | ISO100、600秒×8コマ |
備考 | PHD2によるメトカーフガイド IDAS/SEO LPS-P2-FFフィルター使用 |
ボリソフ彗星は2019年8月30日、クリミア天体物理天文台の観測施設MARGO (Mobil Astronomical Robotics Genon Observatory) で、アマチュア天文家ゲナディ・ボリソフ(Gennady Borisov) が自作の0.65m望遠鏡による観測で発見した新天体です。発見直後は一般的な新彗星とみなされてC/2019 Q4という仮符号が与えられましたが、その後の観測で、この天体が離心率3.36という強い双曲線軌道を描いていることが明らかとなりました。双曲線軌道を描くということは、この天体が太陽系外から飛来したことを示しており、2017年10月に発見された「オウムアムア」(1I/2017 U1)に続いて2例目となる恒星間天体、そして恒星間彗星としては史上初の発見ということになりました。
彗星は12月8日に近日点を通過し、この時の彗星-太陽間の距離は約2天文単位、また彗星-地球間の距離も約2天文単位で、光度はおよそ15.5等程度と予想されました、かなり暗いのですが、せっかくの希少な天体ですので、東京都心からも狙ってみました。この場所からは、過去に17等台の系外銀河も捉えたことがあるので、何とかなるだろうと踏んでのことです。
ただ、彗星は系外銀河などと異なり、天空を独自に動いていくので、恒星を追尾するだけでは線上の軌跡となってしまい、おそらくまともに写ってくれません。そこで今回は、PHD2の彗星追尾機能を使ってみました。これは事前に彗星の1時間当たりの移動量を計算しておき、これを入力しておくと、その分だけ恒星時運動から自動的にずらしてガイドしてくれるという便利機能。銀塩フィルムの頃にしばしば行われていた「メトカーフガイド」に相当する方法です。
しかしながら、撮影後の画像を処理しても、彗星の姿はほとんど分かりません。
それでもステラナビゲータでのシミュレーション結果と見比べた結果、冒頭の写真の水色の十字線の交点にごく淡い光のシミが確認でき、おそらくこれがボリソフ彗星だと思われます。高度が30度前後しかなかったので、その分、大気による減光や光害等の影響を強く受けて予想以上に写りづらかったのだろうと思います。
とはいえ、はるかかなたの恒星界からやってきた天体を、わずか口径10cm程度の望遠鏡で(しかも東京都心から)観測できるというのは、なんとも言えないロマンを感じます。