光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

M81, M82(系外銀河、おおぐま座)

撮影日時 2024年2月12日
撮影機材 ビクセン ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 -20℃, Gain=100, 露出300秒×60コマ(カラー)+Gain=350, 300秒×32コマ(ナロー)
備考 IDAS LPS-D1 & Optolong L-Ultimate使用

おおぐま座の頭付近にある系外銀河のペアで、下(南側)がM81、上(北側)がM82です。地球からの距離は約1200万光年で、私たちの銀河系が属している「局所銀河群」の外にある天体としては最も近くにある天体です。

両者は0.6度しか離れていませんが、見かけだけでなく実際の距離も15万光年ほどしか離れておらず、数千万年前にはM81とM82は衝突寸前のニアミスを起こしたと考えられています。この影響で、M82は現在も秒速1000kmもの速度で銀河の中心からガスを噴き出し、その内部では星形成と超新星爆発が盛んに起こっています。実際、2014年1月にはM82内で超新星が観察されています。


M81は、太陽系の惑星の軌道半径が簡単な数式で表せるとした「ティティウス・ボーデの法則」を広めたドイツの天文学者ヨハン・ボーデが1774年に発見した系外銀河で、このエピソードから「ボーデの銀河」としても知られています。

この銀河を含む銀河群「M81銀河群」において最大の銀河で、その直径は約96000光年と、私たちの銀河系と同じくらいです。見かけの等級は6.94等で、肉眼ではまず見えないのですが、空の極めて暗い場所で肉眼で捉えられたという報告がいくつかあります。これが本当だとすれば、肉眼で捉えられた最も遠方の天体ということになります。

M81の腕の部分には、赤く輝く散光星雲が多数見られます。新しい星がこうした場所から生まれてくるのですが、この数の多さはM82と接近した影響かもしれません。

なお、M81本体のの左側(東側)にごく淡い光のシミが見えますが、これはHolmberg IX(UGC 5336)という不規則矮小銀河で、M81の衛星銀河です(明るさ14.1等)。この銀河にある星の質量の20%は過去2億年以内に形成されたもので、かなり若い星の集団です。おそらく、M81とM82との接近によりガスや恒星がはぎとられ、形成された銀河だろうと考えられています。

一方のM82の方は、その特徴的な形から「葉巻銀河」という愛称があります。渦構造がハッキリ見えないことから不規則銀河に分類されてきましたが、近年の近赤外線による観測で2本の腕が確認され、渦巻星雲をほぼ真横から見ている姿(いわゆる「エッジオン」)であることが明らかになりました。

腕の存在を隠していたのは、銀河表面の著しい明るさと大量のチリによる遮蔽です。この原因となったのがM81との接近で、上でも少し触れたように、この接近によってM82の中では爆発的な星の誕生と消滅が猛烈に進行しています(スターバースト銀河)。また、ここで発生する強烈な恒星風と超新星が原因となり、銀河中心から猛烈な勢いでガスを噴き出しています(スーパーウインド)。写真では、銀河の円盤面と垂直な方向に噴き出す赤く輝くガスとして写っています。


このペアは2013年、2019年と撮影していますが、2013年は単純に露出不足&技量不足、2019年はHα画像をブレンドしたもののデジカメの表現力の限界もあり、写りはもう一息といった感じでした。今回は、ほぼ丸一晩かけて通常光での撮影、およびL-Ultimateによるナローバンド撮影を行い、これをブレンドしてM81内の散光星雲やM82のスーパーウインドの描写を狙いました。東京都心からの撮影とはにわかに思えない程度には写ったのではないかと思いますが、どうでしょうか?

オリジナル画像

LPS-D1フィルターを用いて撮影した、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。系外銀河としては明るい部類の銀河だけに、写りはかなり良好です。。

こちらはL-Ultimateフィルターを用いて撮影した、コンポジット&処理前の画像およびレベル調整のみ行った画像です。電離水素ガスに富んだM82中心部の明るさに比べ、連続光で輝く銀河の他の部分の写りが悪いのに注目です。

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