光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

回転花火銀河 M101(系外銀河、おおぐま座)

撮影日時 2022年4月9日
撮影機材 ビクセン ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ ZWO ASI2600MC Pro
ガイド鏡 ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 -10℃, Gain=200, 露出300秒×24コマ
備考 IDAS LPS-D1フィルター使用

おおぐま座のしっぽの先付近にある立派な渦巻銀河です。渦巻星雲を真上から見た姿をしていて、「回転花火銀河」という愛称は腕を火花に見立てたものです。地球からの距離は2300~2700万光年程度と言われています。これほど遠くの距離にありながら、見かけの大きさが満月の2/3ほどもあることから相当大きな天体であることが分かります。実際、円盤の直径は17万光年ほどもあると考えられ、メシエ天体中で最大級の大きさを誇ります。カタログ上の明るさも7等台と、有名な「子持ち銀河」M51(8.4等)を上回るほどの明るさです。

ところが、さぞや立派な姿……と期待して望遠鏡を向けると、もれなく肩透かしを食らうでしょう。銀河の渦巻きが正面を向いている「フェイスオン」の銀河の常として大変に淡く、見るのも撮るのもかなりの難物なのです。これは普通に言われる「天体の明るさ」が、「その天体の光を1点に集めた場合の明るさ」であることに原因があります。つまり、M101のように見かけのサイズが大きい天体は明るさが薄まってしまい、見づらく/捉えづらくなるのです。

実際、M101については過去2回撮影していますが、1回目はデジカメの特性をまだ理解していなかったこともあり、高感度設定・短時間露出のフレームを積み重ねたもののボロボロの結果に。2回目は低感度設定・長時間露出によって銀河の姿をそれらしく捉えることはできたものの、処理にかなり無理があって不自然さが拭えませんでしたし、腕の中のHα領域も白く飛んでしまいました。

そこで今回は、天体用冷却CMOSカメラを用い、露出時間短め、感度やや高めで撮影を行うことにしました。デジカメの場合、RAWで撮ったとしても画像処理エンジンでの各種処理(ノイズリダクション処理、レベル調整、トーンカーブ調整など)を受けてしまうため、暗く淡い対象を撮ると、特に高感度ではシグナルが除去されてしまいがち(1回目)。これを避けるために低感度設定・長時間露出を使うわけですが、今度は輝度の高い部分が飽和しやすくなり、Hα領域が白飛びしてしまう……ということになるわけです。一方、冷却CMOSカメラの場合、画像処理エンジンがないので、淡い光もデータとして余さず捉えられますし、高感度・短時間&多数枚露出でも画質がほとんど落ちないのは過去に検証済み。露出時間を短めにすれば飽和することもないというわけです。

結果として、銀河の腕に潜むHα領域の赤みを含め、思った以上にカラフルに仕上げることができました。撮影場所の北側10km圏内に新宿・渋谷が控えていることを思えば、この淡い銀河をここまで捉えられれば上出来と言えるでしょう。

なお、M101があるおおぐま座方面は、おとめ座方面ほどではないものの系外銀河が多くみられる領域で、写真にも多くの系外銀河が写っています。これらのうち、NGC5474とNGC5477はM101とともに「M101銀河群」と呼ばれる小規模銀河群の一員です。NGC5474は「矮小渦巻銀河」という珍しいタイプの天体で、M101との相互作用によって形が大きく崩れてしまっています。

これらの他にも、背景には遥か遠方の銀河が無数に写りこんでいます。こうした暗い銀河を、星図と突き合わせて探していくのも春の銀河の楽しみの一つです。

オリジナル画像

コンポジット&処理前の画像です。等級の数字の割に見づらいことで有名なだけに、処理前の段階では、最も明るい銀河の中心すらどこにあるのか判然としません。

<< 前のページに戻る

↑ PAGE TOP