光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

太陽の撮影

追尾 しない/する
撮影機材 コンパクトデジカメ/一眼レフ/動画カメラ
撮影方法 通常撮影/コリメート法/直焦点撮影/拡大撮影法
難易度

太陽も月と同じく、光害の影響を受けない被写体ですが、こちらは逆に明るすぎるため、「いかにして光を減らすか」という、他の天体写真では絶対に使わない手段を考える必要が出てきます。しかし、ひとたび減光手段を確立してしまえば、あとは月とほとんど同じ感覚、方法で撮影できます。

ただ、昼間は太陽熱で地上が温められ、気流が乱れやすいのが難点です。季節にもよりますが、午前10時くらいまでなら気流の乱れも比較的マシなようです。また、筒内気流の関係で、反射系の望遠鏡(含 カタディオプトリック)は太陽撮影には向きません。

減光方法

カメラレンズや望遠鏡は、光学系全体として見れば凸レンズそのものですから、太陽に向ければ焦点に熱と光が集中して大変なことになります。これをいかに防ぎ、目と機材を守るかが重要です。

現在最も一般的なのは、カメラレンズや望遠鏡の先端に減光用のフィルターを装着する方法です。光学系に入る前に光が弱められるので、機材を傷める心配もほとんどありません。

減光用のフィルターは大きく以下の3種類に分けられます。

  1. NDフィルター
  2. 金属蒸着薄膜フィルター
  3. 金属蒸着ガラスフィルター

NDフィルター

これは一般の撮影でも時々つかわれるグレーのフィルターで、グレーの色の濃さにより減光され具合が変わってきます。広く市場に出回っているのはND4(光量1/4)、ND8(光量1/8)、ND16(光量1/16)、ND400(光量1/400)といったあたりです。

しかし、太陽の撮影に関していえば減光量がまったく足りません。ND16とND400、あるいはND400同士を2枚重ねで使えばなんとか……というレベルです。フィルターを2枚重ねで使うとゴーストやフレアが発生しやすくなるので、あまりお勧めはできません。ケンコー・トキナーからはND100000(光量1/10万)という高濃度のNDフィルターが販売されていますので、使うのならこちらの方がよいでしょう。

ただし、これらのフィルターはあくまでも「撮影専用」で、目に有害な赤外線などはカットしません。そのためこのフィルターを通して太陽を覗くと目を傷める恐れがあります。ピント合わせなどを行う時は絶対に光学ファインダーは使わず、ライブビューやEVFを使うようにしましょう。

カメラレンズ用のフィルターなので口径のラインナップは限られており、望遠鏡で使うのは(一部機種を除き)少々難しいでしょう。あと、念のためですが、筒先への固定が難しいからといって光路の途中にフィルターを入れるようなことは絶対にしないでください。熱でフィルターが割れ、機材の破損や事故につながります。

金属蒸着薄膜フィルター

薄いポリマーフィルムに金属を蒸着させたもので、遠目にはアルミホイルのような見かけです(はるかに柔軟な素材ですが)。有名なのはBaader PlanetariumのAstro Solar Safty Filmで、これ1枚で1/1万~1/10万まで減光できます。おそらく、現在最も手軽で確実な減光方法だと思います。

このフィルターはただの極薄のフィルムなので、取り付け方法などは自分で考える必要があります。先の金環日食の際には、私を含め、紙でセルを自作した人が多かったようです。探せば市販の立派なセルもありますが、わざわざ買うほどのこともないでしょう。

アストロソーラーフィルムの使用例
アストロソーラーフィルムの使用例
丸い穴をあけた2枚の厚紙でアストロソーラーフィルムを挟み込み、これを望遠鏡の筒先にかぶせています。安全のために、望遠鏡のファインダーを取り外していることにも注目。

ただし、フィルム自体は非常に薄く、決して強度も高くないので耐久性には難があります。せいぜい数回の使用にとどめておいた方が安心でしょう。一見なんともないように見えても、蒸着膜にピンホールが空いていたりするので、油断は禁物です。

金属蒸着ガラスフィルター

上記薄膜フィルターの強度面での不安を払しょくするのが、ガラスフィルターです。Thousand Oaks OpticalやOrion Telescopes & Binocularsの製品が輸入され、販売されています(こちらこちら)。減光の原理は薄膜フィルターと同様ですが、蒸着のベースがポリマーフィルムではなくガラスなので、強度や精度の面で安心です。ただ、薄膜フィルターに比べるとずいぶん高価なので、継続的に太陽を観測・撮影したい人向けでしょう。

太陽の導入方法

上記のいずれの減光方法を取った場合でも、太陽が入っていない限り、視野の中は真っ暗になります。この状態からどうやって太陽を視野の中に導入するかは、特に焦点距離が長い場合、意外と面倒な問題です。たとえ自動導入可能な架台を使用していたとしても、昼間は正確な極軸設定やアライメントができないので精度が出ず、一発で太陽が視野内に入ることはなかなかありません。

望遠鏡を使用している場合は、ファインダーにも減光フィルターをかぶせ、これで導入するのが確実ですが……たかが導入のためだけにフィルターを使うのはいささかもったいない気もします。簡単な方法としては、地上に落ちる影を利用する方法があります。望遠鏡(カメラ)が正しく太陽の方向を向いていれば、地面に落ちる影は最小になるはずなので、これを見て望遠鏡の向きを合わせるのです。

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