光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

個人的なおすすめプラン

ここまででおおよそ説明すべきところは説明したかと思いますが「で、結局どれを選べばいいんだ?」となった方も少なくないかと思います。しかし「初心者向け望遠鏡は何がいいか?」は天文愛好家の永遠のテーマみたいなもので、まともに議論しだせば諸説紛々、喧々諤々、紛糾必至の難題なのです。

こうなる原因の1つは「初心者」という区切りがおおざっぱ過ぎる点にあります。ひとくちに初心者といっても、子供から大人まで、星に興味がなかった人からしっかり勉強している人まで、予算に余裕のある人からない人まで、田舎に住んでいる人から都会に住んでいる人まで、とにかくスキルや環境、前提条件がバラバラの人をひとまとめに議論しようとするから話がおかしくなるのです。しかしすべてのケースを網羅するのも無理な話。以下にいくつかの典型的なケースを例示しますので、これを参考に最適なプランを考えてみてください。

小学生の息子が星に興味を持った

まずは双眼鏡を考えてみてください。特に小学校低学年~中学年くらいだと、倍率の高い望遠鏡を操作して目的の方向に向けるというのはなかなか難しい作業です。まずは、無理のない倍率の双眼鏡で様子を見てはどうでしょうか?もし飽きてしまったとしても、家族でレジャーなどに便利に使えるので無駄にはなりません。

そのうえで、どうしても望遠鏡というのであれば、前記の組み立て望遠鏡やスコープテックの望遠鏡を考えるといいでしょう。間違っても「望遠鏡のおもちゃ」を買い与えてはいけません。

一方、小学校高学年の場合、体力もついてきますので、興味の度合いにもよりますがポルタIIを含むもうワンランク上の機材を考えてもいいでしょう。

昔から星が好きだった中学生の息子が望遠鏡を欲しがっている

何を隠そう、実は昔の私がこのパターンでした(^^;

初心者向けの定番であるポルタIIのセットでもいいですが、星への興味が本物なのであれば赤道儀を買わせてもよいと思います。赤道儀は重量がありますが、中学生ともなれば一式丸ごと運べる程度の体力はありますし、設置が面倒といっても、ざっくり北の方向に向けて置くだけでもかなり便利に使えます。実際のところ、星好きなら設置の目安になる北極星がどれかくらいは分かるはずなので、普通の大人が思うほど本人は設置には苦労しないはずです。

予算については、これまでに貯金したお小遣いやお年玉を全額出すくらいのつもりになれば、10~20万円くらいはひねり出せると思うので、その範囲で鏡筒を含めた一式が買える程度のものがいいでしょう。ただし、この価格帯で買える赤道儀は頑丈さもそこそこなので、あまり大きな鏡筒を載せることはお勧めしません(できれば口径10cm程度まで。どんなに大きくても口径15cm程度まで。重量にして5kg以下)。たまに望遠鏡専門店でも、初心者用赤道儀に口径20cmクラスの鏡筒と組み合わせて販売しているのを見かけますが、さすがにやりすぎです。中学生くらいだと文字通り「厨二病」まっさかりで、大口径の望遠鏡や複雑なシステムに憧れがちですがなんとかセーブしてください。

鏡筒は屈折式でも反射式でもカタディオプトリック式でもお好みで。反射系の鏡筒は原則として光軸調整が必須ですが、作業自体は中学生でも十分こなせます。「初心者に反射は向かない」とよく言われますが、どちらかというとこうした手入れや調整を面倒がらないかどうかという気質の問題のように思います。

なお、上では男子中学生を念頭に書きましたが、大人でも同じこと。ある程度天文の知識があって、継続できる自信があるのなら赤道儀を選んでしまっていいと思います。色々な面でつぶしが効くのは確かです。

マンション住まい。星のことはそれほど詳しくないが、ベランダから気軽に月や惑星を見たい

手軽さを取るならポルタIIに代表される経緯台のセットが無難なところです。設置するのに特別な知識も必要ありませんし。使う場所がベランダとなると、場所の狭さが問題になりがちなので、その面ではコンパクトなカタディオプトリック系の鏡筒や横から覗けるニュートン反射が有利です。ただし、どちらも温度順応に気を配る必要があるのが欠点。モノによっては光軸調整も必要です。こうした手間が嫌なのであれば、屈折式の一択になります。コンパクトさを優先するなら、焦点距離が短くとも良像が得られるアポクロマート屈折が向いていますが、あとは予算とスペースとの相談です。

太陽を観察したい

私もそうでしたが、日食のようなイベントを機に、天体望遠鏡を買おうと考える方も少なくないと思います。太陽を見るのであれば、屈折望遠鏡の一択です。というのも、太陽の観察では鏡筒が温められるため、反射望遠鏡やカタディオプトリック式では筒内気流の影響が大きく、良い像が得られないからです。

もっとも、屈折望遠鏡の場合でも、日中は地面や空気が温められるために気流の状態が悪いことが多く、あまり大きな口径のものを使っても額面通りの性能はなかなか得られません。日食などでひととおり太陽を見るだけであれば、口径6cmもあれば十分です。架台は経緯台でも赤道儀でもお好みで。

ただ、本当に「太陽しか見ない」という人は少ないと思うので、汎用性を考えて口径8~10cm程度の屈折望遠鏡を選ぶのが無難なところかと思います。このくらいの口径があると、黒点の細部の観察や、動画カメラによる拡大撮影も容易になってきます。

あるいは、本命の望遠鏡とは別に、太陽観望用として安価な小口径屈折を入手する手もあるでしょう。

番外編としては、太陽の水素ガスが発するHα線のみを通すフィルターを備えた、太陽観測専用の望遠鏡というのもあります。プロミネンスが噴き上がっているところなど、普通の望遠鏡では見られないダイナミックな太陽の姿を見ることができて魅力的なものです。ただ、本当に太陽しか見られない上、口径4cm程度の入門機でも10万円以上、口径6cmで20~30万円はする高価なものなので、本気で太陽に興味を持ったときの「次の一歩」として考えるとよいのではないかと思います。

ネットで見かけるような天体写真を撮ってみたい。社会人でカネはあるが、最近星に興味を持ったばかり

一番悩ましいのがこのパターンです。しかも最近は、ネットで断片的な知識が容易に手に入る&情報発信が容易なせいか、昔より数が増えているような気がします。

正直なことを言えば「まったくの初心者」に天体写真はあまりお勧めしません。銀塩写真の昔に比べて簡単になったとはいえ、天体写真はかなり特殊なジャンルで、必要な知識やノウハウは多く、初期投資も馬鹿にならないからです。本当なら機材や知識、経験など、初歩からステップアップしていくべきなのですが……なまじ資金力で機材の部分をショートカットできてしまうために話がややこしくなります。しかも大人としての「見栄」があるため、えてして初心者向けの簡単な機材には手を出したがらないものです。

とはいえ、カネにモノを言わせて高価な機材を買いあさっても、使いこなせなくて挫折するのがオチ。そんな例は山ほど目にしてきました。遠回りなようでも、やはりまずは成書を読んで、ある程度系統だった知識を身につけるのが先です(ネットの情報だけではダメです)。架台のセッティングやガイド撮影の方法に至るまで、およその手順がイメージできるようになるのが理想。その上で、やはりどうしても天体写真をやってみたいということであれば、無理のない範囲で機材をそろえていくことになります。くれぐれも、いきなり百万、二百万をポンッと出すようなことはしないように。

以前なら、使いやすさやサポート面、価格も含め、初心者にはビクセンの製品をまずは推すところでしたが、最近値上がりが激しい上に仕様に疑問を感じる製品もしばしばあり、無条件にはお勧めしづらい感じになっています。価格面や機能でいえばスカイウォッチャーやセレストロンの赤道儀が魅力的ですが、先の章で書いたように、これはこれで不安が残ります。このあたりは個人の好みにも大きく左右されるところなので、できれば望遠鏡専門店で実物を見ながら、店員と相談して決めるのがいいかもしれません。

なお、もし街なかで使うのであれば、自動導入機能はぜひとも欲しいところです。

鏡筒については、写真撮影を見据えた上での最初の1本ということであれば、オーソドックスなアポクロマート屈折が使いやすいかと思います。写真向けに特化した望遠鏡もありますが、価格に見合った真の性能を引き出すのは結構大変で、初心者には手に余るでしょう。あと、最初のうちは焦点距離は1000mm以下に抑えておきましょう。これより焦点距離が長くなると、星を点に写すだけでも大変な苦労が必要になります。

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