光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

月の撮影

追尾 しない/する
撮影機材 コンパクトデジカメ/一眼レフ/動画カメラ
撮影方法 通常撮影/コリメート法/直焦点撮影/拡大撮影法
難易度

月はあらゆる天体の中で最も簡単に撮影できる対象です。明るいので光害も関係なし。しかも、機材によって、また撮影方法によって様々な表情を見せるので、初心者からベテランまで奥深く楽しむことができます。

通常撮影

月を撮るだけであれば、コンパクトデジカメであれ一眼レフであれ、今どきのカメラならシャッターを切るだけで写ります。感度もISO100~200程度で十分。ただ、夜空に比べて月は圧倒的に明るいので、露出を完全にカメラ任せにすると月面が真っ白に飛んでしまいます。マニュアルで露出時間を設定するか、スポット測光が使えるならこれを用いて月面に露出を合わせるといいでしょう。

あとはブレを防ぐために、なるべく三脚とレリーズを使うこと(手ブレ補正機能があれば、シャッタースピードに気を付けさえすれば手持ちでも結構いけますが)。レリーズがなければセルフタイマーでシャッターを切るのも手です。加えて一眼レフで撮影する場合、ミラーが跳ね上がるときのショックでブレることがあるので、先にミラーを上げておき、振動が収まってからシャッターを切る「ミラーアップ撮影」やライブビュー撮影を行うと完璧です。

しかし、実際に撮ってみるとわかりますが、月は意外と小さくしか写りません。具体的には、撮像素子上の月の像の直径はレンズの実焦点距離(mm)の約1/100になります。例えば300mmの望遠レンズを使った場合、センサー上の月の像は直径3mm。カメラの規格がマイクロフォーサーズ(センサーサイズ:17.3mm×13mm)やAPS-C(約24mm×約16mm)ならまずまずの迫力ですが、いわゆるフルサイズ(36mm×24mm)のカメラでは、月を主役にするにはいささか物足りない感じです。月をメインにするつもりなら、トリミング前提で考えるか、なるべく焦点距離の長い望遠レンズを使いましょう。

望遠レンズで捉えた月
地球照の見える三日月を300mmの望遠レンズで狙ってみました。APS-C規格のカメラとの組み合わせで、ようやくこのくらいのサイズに写ります。もしカメラがフルサイズだと、フレームに対する月の大きさはこれの2/3になりますから少々迫力不足です。K-5IIs+DA 55-300mmF4-5.8ED, 300mm, F5.8, ISO1600, 1/4秒

コリメート法

この方法はアイピースをコンパクトデジカメに覗かせ、それをそのまま撮影する方法です。この撮影方法に使うためのデジカメアダプターが市販されているので、これを使うのが簡単で確実ですが、慎重にやれば手に持ったカメラをアイピースに押し当てて撮ることもできます。

露出は、月面が視野いっぱいに広がっているなら基本カメラ任せでOK。夜空も入っている場合は、背景の黒さに引きずられて露出オーバーになりがちなので、上記の通常撮影と同様、マニュアルで設定するか、スポット測光を使います。あとは振動に最大限気を付けることです。

コリメート法で捉えた月
MAK127SPのアイピースにコンパクトデジカメを手で押し当てて撮影しました。正しい位置にカメラレンズをまっすぐ押し当てるのに多少コツがいりますが、注意深くやればこんな安直な方法でもこのくらいは撮れます。SkyWatcher MAK127SP + Vixen NLV20mm + Canon PowerShot S120, 5mm, F1.8, ISO80, 1/30秒

直焦点撮影

望遠レンズが望遠鏡に置き換わっただけですので、注意点含め、基本的には上記の通常撮影とほとんど同じです。違う点があるとすればピント合わせ。オートフォーカスが使えませんので、カメラのファインダーやライブビューモニターでピントを確認することになります。ライブビューでピント合わせをする場合、拡大表示したうえで、月の欠け際を利用すると分かりやすいです。

拡大撮影

月面の地形を切り取って撮影するのに向いた方法です。基本的には直焦点撮影と同様ですが、拡大率が大きくなるため、振動などにはより一層の注意が必要になります。一眼レフの場合、ミラーアップ撮影やライブビュー撮影を積極的に活用しましょう。また、強拡大した場合には日周運動の影響が大きくなる上、像が暗くなってシャッター速度を上げづらいので、赤道儀で追尾できた方が安心ではあります。ただし、これについては感度を上げればある程度の対応は可能です。

動画撮影

月は明るいので、カメラの動画機能やビデオカメラを使って撮影するのも簡単です。最近では、撮影した動画のコマを積算して処理し、大気の揺らぎの影響を極力排した高精細な静止画を得る方法(「スタッキング」といいます)が流行しています。この目的には一般的なカメラの動画機能のほか、PCのUSB端子に直接接続するタイプの動画カメラがよく使われます。これらのカメラを用い、上記の直焦点撮影または拡大撮影と同様にして撮影を行うのです。具体的な方法については惑星撮影の項も参照してください。

動画カメラによるモザイク撮影

ところで、天体撮影用として販売されている動画カメラは一般に撮像素子の大きさが小さく、月を撮影すると一部分しか撮れません。もし月全体の画像を得たい場合は、撮影した部分部分の動画を処理して静止画にしたのち、これを繋ぎ合わせる「モザイク合成」と呼ばれる方法を使います。

まず撮影条件ですが、モザイク合成することを前提に考えると露出は一定にしなければなりません。そこで、月面の最も明るい部分が白飛びしない程度にゲインを抑えます。欠け際は特に暗くなってしまいますが、これは後から画像処理で持ち上げるので心配しなくても大丈夫。逆に、撮影時に白飛びしてしまうと、失った階調をあとから取り戻すことはできません。ただし、この条件で撮影すると欠け際は本当に暗く、PCの画面上で確認が困難になるので、構図決定時に一時的にゲインを上げるなどして撮り損ないのないように気を付けてください。

次に撮影方法ですが、下図左のように欠け際のラインを基準に望遠鏡を動かそうとすると、赤経・赤緯の二軸を同時に動かさなければならず煩雑です。そこで、ここでは月の傾きを気にせずに赤経方向に望遠鏡を振り、一列撮り終わったら赤緯方向にずらしてまた赤経方向に……という具合にすると効率が良いです(下図右)。このとき、モザイク合成時の「のりしろ」に相当する分だけ、撮影範囲同士を重ねるのを忘れずに。

モザイク撮影時のカメラの動かし方
モザイク撮影時のカメラの動かし方
カメラは月の欠け際の向きを気にせず、右のように望遠鏡の軸に沿って動かした方が効率的で、撮り洩らしも防げます。

動画カメラの画角は一般に狭く、月面全体をカバーするのにかなりの撮影枚数が必要になるので、撮影時間は1枚当たり10~15秒程度に抑えておくのが賢明です。このくらいなら後処理も楽です。一般に、撮影時間を延ばして多数枚をスタッキングするとノイズ面で有利ですが、月面は明るくカメラのゲインを大きく落とせるので、ノイズ面でのメリットはほとんどありません。

こうして一連の撮影が終わったら、動画の処理に移ります。以降の手順についてはこちらをご覧ください。

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