光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

ガイド撮影のトラブルシューティング

ガイド撮影時に発生しがちなトラブルについて、自分が経験したものを中心に、その原因と解決方法についていくつか例を挙げて説明してみます。

ガイド星が見つからない

実はこのパターンで最も多いのは、星が本当に視野内にないのではなく、ガイド鏡のピントが合っていなくて星が像を結んでいないだけ、という場合です(このようなとき、PHD2ではプレビュー画面がグレーアウトしたまま明滅を繰り返すので、オートガイダーが壊れたと勘違いする人も少なくないようです)。

できれば明るいうちに、遠景などを使って事前にピントを大まかにでも合わせておきましょう。どうしてもその場でイチからピントを合わせなければならない場合は、大きめの散開星団や天の川周辺のように星の数が多くて確実に視野内に星が入る領域、あるいは1等星のように明るくて、たとえ露出が不足気味でも確実に写る目標にガイド鏡を向け、ピントを合わせます。

一方、本当に視野内に星がない場合、ガイドソフト側で表示のコントラストを上下させたり、ガイドカメラの露出時間を伸ばしてみましょう。それでも星が見えない場合、より高感度のオートガイダーに交換する、あるいはガイド鏡の焦点距離を縮めたり、撮像素子面積の広いオートガイダーに交換するなどして視野を広げるといった対策が必要になります。

撮影用鏡筒と別の方向にガイド鏡を向けられるように、ガイドマウントを使うのも1つの手段ではありますが、前述したように、機材のたわみなど新たなトラブルを誘発する危険性が高いので、あまりお勧めしません。

キャリブレーションやガイドの実行時にガイド星が全く動かない

ガイド(キャリブレーション)を行う際に監視対象とする星を選択しますが、この時にガイドカメラのホットピクセルを星と誤認して監視対象にしてしまうと、こういうことが起こります。

「ホットピクセル」というのは、撮像素子の欠陥により常時点灯しっぱなしになっているピクセルのことで、どんな撮像素子にも多かれ少なかれ存在しているものです。ホットピクセルは「ピクセルが点灯しているもの」ですから、よく見ればエッジが立っていて星とは容易に区別がつくのですが、キャプチャ画像を縮小表示していたりすると気づきにくいことがあります。この場合、本当の星を選び直してください。

PHD2の場合、これを避けるには「ダークライブラリ」や「不良ピクセルマップ」を用います。ホットピクセルの位置は(気温が大きく異なったり経時劣化で増える分を除き)一定ですから、これを先に登録しておいてキャプチャ画像から除去しておこうというわけです。大体の場合、これで問題は解決します。

なお、本当に星が動かない場合はハードウェアの故障や接続ミスを疑ってください。ケーブルの断線や接触不良、繋ぎ間違い、繋ぎ忘れなどはしばしばあるケースです。特に繋ぎ間違いや繋ぎ忘れは、暗い中で作業していると自分の想像以上にやらかしがち。明るいところでは絶対やらないようなミスが起こるので落ち着いて確認してください。

ガイドは正しく行われているのに星が回転して写る

一見ちゃんとガイドできているのに、撮った写真をよく見ると端の方にある星が写真中央を中心に弧を描いたように写っていることがあります。単にレンズの収差でそのように見える場合もありますが、こうなる原因はほぼ極軸の設置ミスです。経緯台では視野中の天体が日周運動とともに回転していきますが、これを「赤道儀の極軸を天頂方向に設定してしまった特別な例」と考えれば、星が回転したように写るのは理解できるかと思います。

ともあれ、極軸がずれているのが原因ですから、極軸を正しく天の北極の方に向けるのが解決のための唯一の手段となります。極軸望遠鏡を使って合わせるのはもちろんですが、たまに極軸望遠鏡の光軸と赤道儀自身の軸の方向がずれていることがあるので、調整可能な場合はこれを修正します。また、ビクセンの「SX極軸望遠鏡」のように、日付目盛を利用して極軸望遠鏡内のパターンを回転させるタイプの場合、留めネジのゆるみなどによって日付目盛とパターンとの対応がずれると、北極星の位置を正しく割り出せなくなるので、ここも要注意です。

それでもどうしてもずれる場合、「ドリフト法」として知られる極軸合わせの方法を利用するのが一般的です。

  1. 望遠鏡を「天の赤道」付近の南の空に向け、十字線入りアイピースを取り付けます。
  2. 十字線の交点上に適当な星を入れたら、追尾を一度切ります。
  3. 日周運動で星が移動していくので、その移動方向に十字線の1本を合わせます。これで十字線の1本が真の東西方向と一致したことになります。
  4. 星を十字線の交点に戻して追尾を開始し、星の動きを監視します。
  5. もし極軸が完璧にあっていれば星は交点からずれませんが、多くの場合、数分のうちに上か下にずれていくはずです。北にずれていくなら極軸が西に向き過ぎ、南にずれていくなら東に向き過ぎなので、極軸の方位調整ネジを微調整します。視野の中で、上下のどちらが南北にそれぞれ対応するかは十分注意してください。
  6. 4~5を、ズレが小さくなるまで繰り返します。
ドリフト法による方位調整
ドリフト法による方位調整
上の図は極軸が西を向きすぎていた場合です。望遠鏡の視野は極軸を中心に赤い矢印に沿って動く一方、星は天の極を中心に青い矢印に沿って動くため、星は視野の中で北へ北へとずれていきます。
  1. 次に、望遠鏡を「天の赤道」付近の西(または東)の低空に向けます。
  2. 適当な星を十字線の交点上に入れ、星の動きを監視します。
  3. 星が北(東に向けた場合は南)にずれていくなら高度が低すぎ、南(東に向けた場合は北)にずれていくなら高過ぎなので、極軸の高度調整ネジを微調整します。
  4. 8~9を、ズレが小さくなるまで繰り返します。
ドリフト法による高度調整
ドリフト法による高度調整
上の図は極軸が上を向きすぎていた場合です。望遠鏡の視野は極軸を中心に赤い矢印に沿って動く一方、星は天の極を中心に青い矢印に沿って動くため、星は視野の中で南へ南へとずれていきます。
  1. 以下、必要に応じて6と10を交互に繰り返し、南北方向のズレが出なくなれば、極軸合わせ完了です。

なお、PHD2にはこの「ドリフト法」による極軸合わせをサポートする機能が搭載されています。ガイドカメラからの映像を利用して調整するので十字線入りアイピースなどが不要なのが利点です。PHD2を使用しているなら、こちらの方が何かと手軽でしょう。具体的な使い方についてはマニュアルを参照してください。

ガイドは正しく行われているのに星が流れて写る

ガイド自体は正常に行われていて、特に大きなズレもなさそうなのに写真の方では流れている、というパターンです。ガイドがちゃんと行われている以上、本来なら流れるはずはないのですが、これが流れてしまうというのは、ガイドカメラと撮影用カメラのお互いの向きが撮影中にずれてしまっていることを意味します。つまり、オートガイダーは「正しく」星を追尾しているつもりなのに、ガイドカメラまたは撮影用カメラの方向が星の動きとは無関係に変化してしまったため、写真上に「流れ」として写ってしまったという状況です。なにしろカメラのピクセルサイズはμmオーダーですから、極端な話、カメラの方向がμmオーダーでズレただけでも、それは即「流れ」として写ってしまいます。

これには、ガイドカメラ側に原因がある場合と撮影用カメラ側に原因がある場合の二通りがありますが、気を付けるべき部分は共通しています。

鏡筒の固定方法

まず、ガイド鏡については、ガイドマウントを使用しないこと。撮影鏡筒やマルチプレートに直付けするようにします。

次に鏡筒の固定方法ですが、鏡筒バンドを用いている場合、その品質によっては問題が生じる場合があります。特に、安価な鏡筒ではバンドの強度が弱いものがあり要注意です。また、鏡筒に傷をつけない目的でバンドの内側にフェルトが貼ってあるものがありますが、フェルトが分厚いと使用中に沈み込み、鏡筒の向きが変化してしまうことがあります。

フェルトが貼られた鏡筒バンドの例
フェルトが貼られた鏡筒バンドの例
例えば「ユニバーサル鏡筒バンド」の名前でよく売られているこの汎用バンドですが、フェルトが比較的厚い上、この狭い前後幅で鏡筒を固定するので、鏡筒のバランスが取れていないと「お辞儀」してしまう可能性があります。

鏡筒をアリガタ、アリミゾで固定している場合、そのサイズ、構造によっては鏡筒の重量を支えきれず、固定が緩んで鏡筒の向きが変化してしまうことがあります。アリガタが細い場合はさらにアリガタ自身の変形も懸念されるので、特に鏡筒の重量がある場合や撮影鏡の焦点距離が長い場合は、幅広のアリガタ、アリミゾや、より強固なアリミゾ金具の使用、しっかりした鏡筒バンドでの固定などを考慮に入れるべきでしょう。

接眼部の問題

ガイドカメラや撮影用カメラを取り付ける接眼部が弱いと、ここでたわみが発生して「流れ」の原因となることがあります。特に、接眼部がプラスチックで作られているような安価な鏡筒では、ここの強度が不足していることがあります。金属製で一見頑丈そうに見えても、ドローチューブを繰り出すとぐらつくものがあるので要注意です。

また、撮影用カメラが重い場合、撮影しているうちに接続部のねじ込みが緩んだりしてガタツキが発生することがあります。カメラ装着時に接続部のネジなどをしっかり締めこむのはもちろんですが、もしあまりに頻発するようなら接続方法の変更も考えるべきかもしれません。

ミラーシフト

シュミットカセグレンなど、主鏡を移動させてピントを合わせる構造の鏡筒では、主鏡を移動させる関係上、光学系に機械的な「遊び」がある程度設けられています。しかしこれが災いし、追尾に伴って鏡筒にかかる重力の向きが変化すると主鏡の向きも変化し、これが星像の流れとして現れることがあります。これを防ぐには、主鏡の移動メカニズムにテンションをかけて主鏡の動きを抑制する「富田式ミラーロック」のような装置を用います。また、最近の鏡筒では最初から主鏡の移動を防ぐため、主鏡を支えるロッドを固定するためのクラッチを装備しているものもあります。

EdgeHD800の「ミラークラッチ」(手前の2つのノブ)

さらに根本的に解決するために、主鏡を何らかの方法で完全に固定してしまった上で外付けの合焦装置を取り付けることもあります。しかしこの場合、しっかりした製品を使わないと、これが原因で新たなトラブルが発生しかねないので要注意です(そしてそういう製品は往々にして高価なのが難点)。

ガイドグラフがやたらと暴れる/一見きれいに撮れているがなんとなく像が甘い

原因として一番考えられるのは、シーイングによる星像のゆらぎを拾ってしまっている場合です。

地上から見る星は分厚い大気の層を通ってくるわけですが、大気中には温度や気圧の異なる空気の塊がいたるところにあり、ランダムに動き回っています。そして、星からの光はこの空気の塊の境目で屈折するため、光はさまざまな方向に不規則に曲げられ、星がユラユラと揺れたり、チカチカと瞬いているように見えます。これが「シーイング」の正体です。

シーイングによる星の見かけの位置の変化は非常に速く、アマチュアレベルの装置では対応することはできません。これを無理に追いかけようとするとかえって架台の動きが乱れ、星像がゆがんだり、ぼってりと膨らんだようになったりします。

シーイング自体、人間にはどうすることもできませんが、ガイドカメラの露出時間を長め(2~4秒程度)にして星の動きを平均化する、ガイドソフト側で積極性(Agressiveness)の数値を下げて位置変化に対して鈍感にする、最小移動検知量(Min-move)を上げて微小な動きに反応しないようにする、といった手を打つことで、余計な動作はある程度軽減できます。

なお、焦点距離の長い望遠鏡で撮影した場合、シーイングが悪いと、たとえ追尾が完璧でもシャープさに欠けた写りになりがちですが、こればかりは本当にどうしようもありません。

もちろん、地上の風が強い場合もガイドグラフは暴れるので、こうしたときはいくら晴れていたとしても、撮影はあきらめざるを得ません。

機材の固定不足

ガイド撮影にあたって、鏡筒の固定などについては散々気を付けているはずですが、思わぬところが固定不足になっている場合があります。

例えば三脚と赤道儀の間。以前、私が実際にやらかしたことですが、撮影に逸るあまり、三脚上に機材を文字通り「載せた」だけで架台固定用のセンターボルトを締め忘れていたことがありました。このときは幸い大事には至りませんでしたが、自重と赤道儀の方位調整ネジの締め付けだけで機材が収まってたわけで、ガイドの失敗どころか機材が倒れるなどして骨折などの大事故にもつながりかねない事態でした(もちろんこの時の撮影は失敗でした)。

考えてみれば、望遠鏡というのは「数十kgの鉄の塊が微妙なバランスを保ちながら動いている」という、物理的に不安定で危険なシロモノです。機材設置時は指差し点呼をするくらいの慎重さがあった方がいいと思います。私も上記の一件以来、必ず指差し点呼をするようにしました。

また、機材の思わぬところにゆるみが発生していることもあります。

例えばビクセンの赤道儀に付属のSXG-HAL130三脚。使いやすくて実用的な強度もある三脚ですが、長い間使っているうちに足がグラグラになってくることがあります。この三脚の足は、短めの心材に足を構成する中空のアルミ材がかぶせられ、これがネジ留めされる形になっているのですが、このネジが緩むと三脚がぐらつくようになってきます。足元がフニャフニャで怪しいのですから、ガイドがうまくいくはずもありません。

SXG-HAL130三脚の足のゆるみ
SXG-HAL130三脚の足のゆるみ
SXG-HAL130三脚の足は、実質的に緑の円で囲んだ3つのネジで心材に留められているだけです。これらのネジが緩むと三脚はグラグラになります。

三脚など、単純なものだけにトラブルなど起こりそうもないように思えますが、こうした機材もたまには見直してやる必要があるかもしれません。

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