光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

ガイド撮影で注意すべき点

ガイド撮影は、赤道儀+オートガイダーが星を追尾してくれるため、一見失敗など起こりえないように感じます。しかし、抑えるべきポイントを抑えていないと失敗写真を量産する羽目になります。他の天体写真と共通する部分もありますが、ここではハードウェアの部分に限り、注意すべきポイントを挙げておきましょう。

三脚

三脚は固いコンクリートなどの上に設置します。土の上など地面が柔らかいところでは、撮影中に機材が徐々に沈み込んでしまい、ガイド失敗の原因となります。どうしても柔らかめの地面にしか置けない場合は、しっかり地面を踏み固めた上で、三脚アジャスターなどを使って三脚が地面にめり込むのを防ぎます。三脚アジャスターがない場合は、最悪、木の板のようなものでもいいでしょう。

望遠鏡の三脚の多くは脚の長さを調節できるようになっていますが、写真撮影を行う場合にはなるべく伸ばさずに使います。伸ばすと脚の細い部分で支えることになる分、振動などに弱くなりますし、システム全体が腰高になって風の影響なども受けやすくなります。

また、ビクセンのSXG-HAL130三脚の場合、三脚を「固くする」工夫として、ビクセンオンラインストアで取り扱いのある「アクセサリートレイ」(三角トレイ)を取り付けるのが有効です。開き止めの「ベロ」がガッチリと固定されるので、特にねじれ方向の力に強くなります

赤道儀

載せる機材に対して、積載能力の余裕が十分あるものを使用しましょう。これについては各メーカーが公表している「搭載可能重量」を参考にするしかないのですが、測定方法に明確な基準がないため、数字を鵜呑みにはできません。

たとえば、高橋製作所の場合は写真撮影を前提にした数字となっているようで、載せる機材の重量が搭載可能重量以下ならおおよそ安定して運用できますが、ビクセンの場合は眼視での観測を前提にしているらしく、写真撮影を目的にするなら搭載可能重量の6~7割程度に抑えておいた方が無難です(これはどちらがいい、悪いという話ではなく、考え方の違いの問題です)。海外製品も数字を単純比較できないのは同じ(むしろ国産品より「盛っている」印象があります)なので、他社の同クラスの赤道儀の搭載可能重量と比較することで、おおよその感覚をつかみましょう。

主な小型~中型赤道儀の搭載可能重量の公称値
メーカー機種名本体重量搭載可能重量
高橋製作所EM-11 Temma3Z7.3kg8.5kg
EM-200 Temma3Z16.5kg17kg
ビクセンSX27kg12kg
SXD29.2kg15kg
SXP213.3kg17kg
CelestronAdvanced-VX7.7kg13.6kg
CGEM19kg18kg
SkyWatcherEQ5 GOTO5.8kg9.1kg
AZ-EQ5GT7.7kg15kg
EQ6R17.3kg20kg
iOptronGEM454.5kg12.7kg
CEM407.2kg18kg
CEM7013.6kg31.8kg

個人的な感触で言えば、載せるものの重量の合計が赤道儀本体の重量を超えてくるとかなり怪しくなってきます。単純に難易度の問題だけから言えば、赤道儀に対して撮影鏡筒+ガイド鏡が小さすぎるように感じるくらいの方が成功率は上がります。

設置についてですが、極軸はなるべく正確に合わせます。もし理想的に設置できれば赤緯方向の修正動作はほとんど必要ないはずで、こうなれば余計な動作が発生しない分、追尾エラーが減るだろうということは容易に想像できます。最低限、極軸望遠鏡は使うべきで、シュミットカセグレンのように撮影鏡筒の焦点距離が長い場合は、さらに「ドリフト法」で極軸を追い込むとよいでしょう。

このほか、最近話題の電子極軸望遠鏡「PoleMaster」を使うと、ドリフト法より簡単な操作で極軸をかなりの精度まで追い込むことができます。そこそこいい値段がするのと、PCが必須なのが欠点ですが、非常に便利なので長焦点鏡を使っている方は検討してみるとよいと思います。

また、ウォームギアのかみ合わせなどを調整可能な赤道儀の場合、これをきっちり調整してギアの遊び(バックラッシュ)を減らすことで、オートガイダーからの修正信号に機敏に反応できるようになります。ただし、これについては下手にいじるとかえって状態が悪化することがあり、また自動導入赤道儀では導入時に高速駆動する関係でわざとバックラッシュを多めにしているので、それを無視して調整すると機器を傷める原因にもなりかねません。無理は禁物です。

撮影鏡筒

焦点距離を欲張りすぎないようにしましょう。一般に、撮影鏡筒の焦点距離が長くなればなるほど、撮影の難易度は加速度的に跳ね上がってきます。拡大率が上がるので、わずかなガイドミスや機材のたわみも「流れ」として現れてしまうのです。また焦点距離の長い鏡筒はF値が暗いことが多く、長時間の露出が必要なこともこれに拍車をかけます。ここは焦点距離を縮めてF値を明るくする「レデューサー」の利用も積極的に考慮に入れたいところです。

ちなみに街なかでの撮影の場合、背景が光害で明るくなるため周辺減光やケラレが目立ちます。これを完璧に修正するのは極めて困難で、妥協案として中央付近のみトリミングしてしまうことがしばしばあるのですが、その余地を残す意味で、あえて目的天体に対してやや短めの焦点距離を選ぶというのも一つの戦略ではあります。

また、撮影鏡筒の固定方法にも注意が必要です。シュミットカセグレン系の鏡筒を中心に、鏡筒バンドを使わずにアリガタ・アリミゾを使って鏡筒を固定するタイプのものがよくありますが、アリガタの強度やアリミゾの作りによっては固定力が足りずに時間とともに固定が緩んだりアリガタがたわんだり……といったケースがしばしばあります。特に問題なく撮影できているのであればいいのですが、そうでない場合はアリガタ・アリミゾを強化する、鏡筒バンドでの固定に切り替えるなどの工夫が必要になってくることがあります。

ガイド鏡

たまに、ガイド精度の向上を狙って長い焦点距離の望遠鏡をガイド鏡に使おうとする人がいますが、過剰に長くしても大気の揺らぎによる星像の乱れを拾ってしまうだけで精度の向上にはつながりません。重量が増す上に風や振動にも弱くなりますし、ガイド鏡の大きさはほどほどにとどめておいた方が賢明です。最近の高解像度のオートガイダーを使うのであれば、焦点距離200~300mm程度のガイド鏡で焦点距離2000mmクラスの撮影鏡筒をガイドするのも不可能ではありません。

また、撮影鏡筒と同様に固定はしっかりと。別項でも書きましたが、ガイドマウントは使わないに越したことはありません。ガイド鏡ガイドでの失敗は、ガイド鏡と撮影鏡筒の相対位置が時間とともにじわじわズレてくることに起因することもしばしばなので、注意が必要です。

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