光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

モザイク合成による上弦の月

撮影日時 2015年4月26日
撮影機材 セレストロン EdgeHD800(D203mm, f2032mm)、ビクセンSXP赤道儀
使用カメラ モノクロ:ZWO ASI120MM
カラー:ZWO ASI120MC
露出時間 モノクロ・カラー:約15秒, 約30fps
その他 モノクロ:約450フレームをAviStack2でスタック、ウェーブレット処理後、34枚をImage Composite Editorでモザイク合成
カラー:約450フレームをAviStack2でスタック後、34枚をImage Composite Editorでモザイク合成
得られたモノクロ、カラーの画像をステライメージ7でLRGB合成

これまでに何度も撮っている上弦の月の写真ですが、今回は普段と違う撮り方をしてみました。

今回使ったカメラは、普段惑星撮影に使用しているZWO ASI120MMとASI120MC。これらをEdgeHD800の直焦点位置に取り付けて撮影し、画像処理後に得られた画像をタイル状に繋ぎ合わせて(モザイク合成)月面全体をカバーするようにしてみました。さらに、モノクロの画像を輝度情報として用い、カラー画像の色情報と合成するLRGB合成の手法も併用します。要は、惑星撮影で用いられる技法をそのまま月に適用する形です。

2000mmの焦点距離に1/3インチセンサーの組み合わせなので画角は非常に狭く、月全体をカバーするには手間がかかりますが、うまくいけばデジカメでの「1枚撮り」では得られないような高精細な画像が得られるはずです。

こうして撮れたのが上の写真。ここには、ページレイアウトの問題や盗用を防ぐ意味で縮小したものしか載せていませんが、元画像は4000×6000ピクセルという巨大なもの。PCの画面いっぱいに表示してスクロールさせながら見ていると、それこそ宇宙船の窓から月面を眺めているような気分です。

なお、クレーターの大きさなどから計算すると、元画像の1ピクセルは約650mに相当します。一方、口径203mmの望遠鏡の分解能(ドーズの限界)はおよそ0.57秒で、月面での約1.1kmに相当します。同じ明るさの2つの光点を識別する能力と、月面にモノがあるかどうかを識別する能力は別物だと思いますが、縮小前の画像を見ると確かにそのくらいの大きさのものは識別できそう。存在の有無だけなら、それこそ1ピクセル分の大きさのものが見えています。

以下に、いくつか有名な地形の部分を、縮小前の画像から切り出したものを掲載します。かなり細かいところまで写っているのがよく分かると思います。

アルプス谷周辺

欠け際の北側(上側)付近のクローズアップです。左端にある幅の広い溝は「アルプス谷」。長さ約180km、幅約10km、深さ約700mの月面最大級の谷です。その南にあるクレーター「カッシーニ」は、その内部に「カッシーニA」(15km)と「カッシーニB」(9km)と名付けられた比較的大きなクレーターをもつ、特徴的な姿をしています。一方、中央の「アリストテレス」と「エウドクソス」はオーソドックスな形のクレーターですが、周囲の段丘が目立ちます。

静かの海西部~中央の入り江

欠け際の中央付近のクローズアップです。このあたりは谷や起伏が多く、変化に富んで面白いところです。写真右側に走る谷は「アリアデウス谷」。長さ約250km、幅約4.5km、深さ約500mの巨大な地溝です。中央付近で「くの字」状に曲がっている溝が「ヒギヌス谷」で、クレーター「ヒギヌス」を中心に東西にそれぞれ100kmほど伸びています。クレーターは一般に隕石の衝突でできたといわれていますが、このヒギヌスは衝突クレーターに特徴的な縁の部分の盛り上がりがないことから、ヒギヌス谷ともども、火山活動に関連して地面が陥没したことによりできたと考えられています。西側(左側)にある「トリスネッカー谷」は網目状の複雑な形をしていて、興味深い構造です。

南部の高地

一見して分かるように、月の南側は大小さまざまな無数のクレーターで覆われています。なかでもシュテフラー、マウロリクス、ゲンマ・フリシウスなどは古いクレーターの上に新しいクレーターが重なった複雑な構造をしていて、隕石が次から次へと月面に落下したことを物語っています。

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