光害になんて負けたりしない!東京都心でもできる天体観測

M52とバブル星雲 NGC7635(M52: 散開星団、NGC7635: 散光星雲、カシオペヤ座)

撮影日時 2016年11月3日
撮影機材 ビクセン ED103S(D103mm, f795mm)、ビクセン SXP赤道儀
使用カメラ Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3
ガイド鏡 ミニボーグ60ED(D60mm, f350mm)
オートガイダー ZWO ASI120MM
感度・露出時間 ISO400、480秒×16コマ
備考 IDAS/SEO LPS-P2-FFフィルター使用

カシオペヤ座にある散開星団M52と、「バブル星雲」または「しゃぼん玉星雲」の愛称で知られる散光星雲NGC7635を同時に捉えてみました。

カシオペヤ座には天の川が通っていることもあり、数多くの散開星団が存在しますが、M52はその中でも最大のものです。メシエ天体としては、おおぐま座の系外銀河M81&M82についで天の北極に近い位置にあります。

一方、写真右下に見えるのが「バブル星雲」です。その名の通り、中心部に泡のような構造があります。主にHα線で輝いているため眼視での確認は困難ですが、写真ではその特徴的な構造がよくわかります。この「泡」を形作っているのは、泡の中に見える8.7等の星です。その正体は高温の大質量星で、質量は太陽の約40倍、温度は37500度、明るさに至っては太陽の約40万倍もあります。この星が引き起こす激しい恒星風が星間ガスにぶつかり、泡構造を形成したものと考えられています。

撮影地―自宅近くの公園ですが―は、北側に隣接して幹線道路が走っている上、北側10km圏内に渋谷や新宿を控えていて、北天の光害は最悪レベルです。この日も、撮影時間が比較的早い時間だったこともあってか、カシオペヤ座ですら視認しづらいような悪条件でしたが、設定感度を下げて露出時間を稼ぐことで淡い星雲を捉えることができました。しかしその反面、星の色は白く飛び気味になってしまいました。淡い星雲と星の色を両立させるためには、短い露出時間で撮った写真と合成してHDR的表現をしたり、ソフトフィルターをかぶせて撮った写真と合成するなどの工夫が必要かもしれません。

また、北天の酷い光害はフラット補正を非常に難しいものにします。一般的な手順ではどうしても追い込めなかったため、ライトフレーム、フラットフレームともに現像後に三色分解し、ステライメージでR, G, Bの各プレーンに対してガンマを調整しつつフラット補正を実行。補正後のプレーンをRGB合成して戻し、各コマをコンポジット後、残った光害カブリを補正するという、かなりの手間が必要になりました。

さらに、M52周辺は至る所に淡い散光星雲が広がっていて、背景色の偏りがカブリのせいなのか、本当に星雲でそういう色になっているのか判断がつきません。とりあえずB, Gプレーンは可能な限り均し、Rプレーンは「そういうもの」として受け入れる方向で処理を行いました。他の人が同領域を撮影したものと見比べる限り、大きな間違いはなさそうな気がします。

オリジナル画像

コンポジット&処理前の画像です。M52の星々はもちろん、バブル星雲の最も明るい部分も見えています。それでも光害に邪魔されて、シャボン玉のような構造までは分かりません。

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